川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

帰国子女は何の困難もなく、ひとりでに英語ができるようになるのではありません。

娘は5年生の9月からアメリカのミドルスクールに入学しました。  5年生はミドルスクールの1年生でした。  小学校を卒業したばかりの生徒たちが入ってきますので、先生方も最初は学校になれることを重点に、やさしく指導してくださいました。

娘は英語は全くわかりませんでしたが、「先生が好きなんだ、だから、宿題やっていきたいの」というので、どの科目も一緒に宿題をやりました。  言葉のわからない子が一人でもクラスにいれば、先生も大変なのに、よく面倒を見てくださってありがたいと私は思いました。 科目ごとに先生は変わりますが、どの先生もやさしかったようです。  英語のわからない子も公平に受け入れることを当たり前のことと思っていらっしゃるようでした。  移民を受け入れる長い歴史があるのだと思いました。  

私が翌年、クラスの役員を引き受けたのは、娘がお世話になった分、何か学校にお返しをしたいと思ったからでした。  ブックフェアーのお手伝いを申し出たのも、そういう気持ちからでした。

娘は先生がおっしゃることは何も理解できませんでしたが、授業中は先生の口元をじっと見つめていたようです。  娘があまりにもじっと見つめているので、たまに先生が「?」という顔をして(顔に何かついているのかな、と思われたのかもしれません)、娘のほうを見たことがあったそうです。

冬休みが終わって、最初に登校した日に学校のナースから電話がかかってきました。  「娘さんの首が動かなくなりましたので、迎えに来てください」ということでした。  休み明けでいきなりずーと先生の口元を見つめていたためでしょうか、首が右にも左にも動かなくなってしまいました。

その時、現地ではインフルエンザが大流行していましたので、小児科に連れて行くのも心配でした。  それで、日本で整体の先生に教えてもらった方法を3日間連続で行い、月曜日の朝、ようやく首が動くようになったので、登校させました。  ずいぶん緊張して授業を聞いているのだなと思いました。

一年たって6年生になってもまだ授業の英語は理解できませんでした。  けれども、授業内容は難しくなり、先生方も「もう小学生ではない」という気持ちがありますから、宿題の量もかなり増えました。  「校長先生と語る会」という保護者会に毎月出席していたら、「先生方は連絡をとりあって、もう少し宿題の量を調節してください」という要望が多くの保護者から出されました。  アメリカ人の生徒にとっても大変な宿題の量だったようです。  娘も「6年生は大変だ」と思ったようでした。

6年生になって、2か月くらいたったころ(10月の終わり頃だったと思います)、夜10時過ぎにキッチンで片付けものをしていたら、2階から、娘が顔色をかえて飛んできました。  そして、自分の髪の毛を手でつかんで引っ張りながら、「お母さん、由紀子(仮名)の髪の毛、こうやってつかんで引っ張るとバサッと抜けるの。  どうして?」と聞きました。

ばらばらと娘の手に掴み取られた髪の毛を見た瞬間、私は「大変なことになった」と思いました。  勉強のストレスで、娘の髪の毛が抜けている。  その時、同じ会社の人で、海外赴任のストレスから脱毛症になってしまったお子さんがいたことを思い出しました。

勉強のストレスで、娘の髪の毛が抜けている。  でもそれを娘に言ったら、もっと気になって、髪の毛はどんどん抜けてしまうでしょう。  私は「絶対に言ってはだめだ」と思い、とっさにこんな話を娘にしてしまいました。

「この前、鈴木さんの家に遊びに行った時、犬のココちゃんがいたでしょう?  由紀子が、ココちゃんの毛が、この前会った時と違うと言ったら、鈴木さんのおばちゃんが、“犬には冬毛と夏毛があるの。  この前、由紀子ちゃんが来たときは夏毛だったけど、今は冬毛に生え変わったから違って見えるのよ”って言っていたでしょう。  人間もココちゃんみたいに、夏毛と冬毛があるの。  だから由紀子の髪の毛も冬になるから生え変わるために抜けるのよ。」

心の中では大変なことになったと思っていましたが、それを娘に気づかれないように、私は無理して、にっこり笑って、「何も心配いらないのよ」という顔をして言いました。

すると娘は「なーんだ、そうだったの。  由紀子の髪の毛みんな抜けちゃうのかと思ってびっくりしちゃった。  なーんだ、そうだったのか」というと、また元気に「おやすみなさーい」と言って、階段を駆け上がっていきました。

翌日、娘を学校に送った後、私はすぐに学校に電話して、ESLの先生に面談の予約をして、会いに行きました。

「学校の勉強が相当なプレッシャーになっているようですので、あまり成績が芳しくなくても、何も言わないでやってください。  髪の毛が全部抜けてしまったら大変ですから。」とお願いしました。  先生はベテランですから、「わかりました。  勉強は少しずつやっていけばよいので、あまり心配しないように話しましょう」と言ってくださいました。

それから、娘から髪の毛の話は出ませんでしたから、抜け毛は心配するほどではなくなったのだと思います。  先生が、「学校の勉強のことをそんなに心配しなくても大丈夫です。  少しずつ、やっていけばいいのですよ。」とよく話してくださったのだと思います。

帰国子女は英語だけの環境に入れられて「自然に」英語がペラペラになると思っている方が多いですが、それは易しいことしか話さない、小学校低学年までの話です。  年齢が上がって、授業で難しいことを学ぶようになれば、英語だけの環境は相当なストレスになります。  わからない英語をわかる母国語に訳して理解する膨大な努力が必要だからです。

英語だけの環境に入れられても、わからない言葉はひとりでにわかるようにはならないのです。 
英語圏に連れて行かれた子供たちは「わからない言葉を母国語に訳してわかるようにする膨大な努力」を行っているのです。  

その負担は小学校6年生でも髪の毛がばらばら抜けるほど大きいのです。  「子供は小さいから、なんの困難も感じないで英語がわかるようになる」というのは大きな誤解です。  小学校3年生の子でも「わからないことは日本人のお友達に聞いてわかるようになる」ということは2012年12月14日のブログ「駐在員のお父さん、無理なことを子供に言わないで」http://d.hatena.ne.jp/creato-k/20121214 に書いた通りです。  



「英語で考える」「英語を英語で理解する」という指導法は、2つの事実誤認に基づいて提唱された指導法です。(2つの事実誤認については2015年10月19日のブログ「川合式英語学習法」に書いてあります。)  

「英語で考える」という指導法は長く行われてきましたので、「納得しがたい」と思う方は、どうぞ下の2つのブログをお読みください。  

2013年5月22日http://d.hatena.ne.jp/creato-k/20130522
「こんなもの、いくら英語で説明されたってわかんないんだよ」

2013年5月28日http://d.hatena.ne.jp/creato-k/20130528
2つの「英語を英語で理解する」は全然違うこと
(上級者の英語を英語で理解すると初級者の英語を英語で理解するはまったく別のこと)



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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)






高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。

現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。

文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。  導入されれば教育現場は大変迷惑します。  中止する必要があります。  なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。

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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。  私はとても困っています。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 

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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。