Fの仲間である摩擦音を相手に聞こえるように発音するには、一定の強さの息を保持して出せるようにすることが必要になります。
Fが文章の中に入ったとき、口の形は正しくしても、摩擦音ではなく、破裂音のように発音してしまうと、通じなくなります。 津田塾大学で、英語教育法を教えてくださった大束百合子先生が話してくださった例と同じですね。 詳しくは、こちらのブログをご覧ください。2011年8月22日「英語教育法の授業」
今回の練習(2)は、Fの発音が非常に長かったので、安定して出す練習が、ずいぶんできたと思います。
今回の練習で、一定の強さで息を出せるようになったら、ほかの摩擦音を発音するときにも、その息の出し方を使ってください。 安定して、よく聞こえる摩擦音で話せます。
THは難しいですから最初からうまくできなくても構いません。 ほかの摩擦音でコツをつかんで、少しずつ練習して行けば大丈夫です。 発音の仕方が、外からよく見えない子音は、生徒さんにとって難しいようです。私の生徒さんで最初の間、THが出てくるといつも準備に5秒くらいかかっていた生徒さんがいた、と本に書きました。 ですから、THの練習から入るような発音練習は避けたほうがいいです。 自分のやりやすい摩擦音から練習して、摩擦を持続させるコツを体得し、そのあと、THを練習していかれたほうがよいと思います。出来ないことに悪戦苦闘するより、出来ることから練習して、発音の筋肉を鍛えていくほうが、練習がスムーズに進みます。
Rについては、まだ、難しいと感じていらっしゃる方が多いと思います。 特に文章の中で、相手に聞こえるようにRを発音するのは難しいです。 この後も練習は継続していきますので、少しずつ慣れていってください。
上手になるコツは丁寧に練習することです。 あらい練習をしているといつまでたっても上手になりませんが、丁寧に練習していると必ず上手になって行きます。 発音に関しては、一つの目標に向かって、毎日丁寧に練習を積み重ねていけば、大抵のことは出来るようになります。
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私は40年間、発音練習をしていますので、私にとって当たり前のことが、必ずしも読者の皆さんにとって、当たり前でないことがありますし、私の言っていることが皆さんにわかりにくい場合もあると思います。
そこで、私は、ブログを書く前に、知人にその内容を話して、感想を聞かせてもらう場合があります。 今回聞いてくれた人の名前を仮に藤田さんとして今日はお話を致します。
先週こういう事がありました。
娘は今、リトルマーメイドの歌をお手本と一緒に歌う練習をしていますが、同時にマライア・キャリーのHeroをカラオケで歌う練習もしています。 旋律のない伴奏だけのカラオケで、歌うのはとても難しいと感じているようです。
私も、教えるのですから、Hero を歌う練習をしています。 歌いながら時々、「ここのところはマライア・キャリーさんはどういう風に歌っているのかしら?」と思うことがあり、彼女のCDを聞くととても勉強になります。
そうやって練習しているうちに「これは子音の長さの参考になることだな」と思うところを見つけましたので、藤田さんにメールを送って感想を聞いてみました。
藤田さんに送ったYoutubeの映像はこちらです。
https://www.youtube.com/watch?v=0IA3ZvCkRkQ
この2分38秒からの「Lord Knows」という歌詞のところを聞いてもらいました。 (皆さんがお聞きになるのは、このブログを全部読まれた後の方がいいと思います。 後半で全画面表示のことが出てきますので)
川合 「このYoutube の映像で、マライア・キャリーさんが、Hero を歌うところを聞いてください。 時間のカウンターが、2分38秒から2分39秒に変わるところで、「ウ」という音が聞こえますか?」
藤田さん「はい、聞こえます」
川合「これはLを発音するときに舌の先が上の歯茎に着く音ですが、わかりますか?」
藤田さん「ウという音は聞こえますけれど、私には、これが舌先を歯茎に付ける音には聞こえません」
藤田さんからこのメールを受け取った時、私は「Youtubeのこの映像はブログには書けない」と思いました。 藤田さんがこの「ウ」という音を「舌先を歯茎に付ける音には聞こえない」とおっしゃるなら、読者の方々も、そう思われる可能性が高いと思いました。
けれども、私は、「もし、藤田さんにマライアさんの口元を見ていただければ、ここで、彼女が舌を上げて上の歯茎に着けているのがわかるのになあ。。。」と少し残念に思いました。 「もう少し映像が大きければ。。。」そう思った瞬間、だったら、「全画面表示」にしてもう一度見ていただいたらいいのではないかと思いました。
皆さんはご存じだと思いますが、「全画面表示」というのは、Youtubeの映像をパソコンの画面いっぱいに大きくして、テレビのように、映してみることです。
Youtube の映像の右下の角にある四角い印をクリックすると、全画面表示になります。
それで、私はもう一度、藤田さんにメールを送りました。
川合 「何度もお願いして申し訳ありませんが、今度は、全画面表示にして2分38秒のところを見ていただけますか? マライアさんの舌がパッと上に上がるのが見られると思うのですが。」
すると、全画面表示を見た藤田さんから次のような返事がきました。
藤田さん「今度はわかりました。 このウという音はLで舌が歯茎に着いた音なのですね」
川合「読者の皆さんにもお分かりになると思いますか?」
藤田さん 「大きい画面ならわかると思います。」
彼女からそういうお返事をもらい、私はこの映像のことをブログに書くことにしました。
その後、先週の土曜日、娘と歌のレッスンをしました。 その時、娘には、藤田さんとこういうやり取りをしたことを話したうえで、このYoutube の映像を見ながらヘッドフォンをつけて聞いてもらいました。 2分38秒のところから「Lord Knows」という歌詞を聞いた娘は次のように言いました。
「ここは、Lの音しか聞こえないよ。 ほかに何の音が聞こえるの、お母さん?」
私は、これを聞いて、「そうだね。 由紀子には、これがいつもしているLの発音なんだね」と思いました。 実際その後、娘がカラオケを使ってHero を歌うのを見ていましたら、Lord Knows のところで、マライアさんと同じタイミングで、舌が上がって、歯茎についていました。
マライアさんのように力強くは歌えないので、「ウ」という音はしませんでしたが、娘の口を見ていたら舌が上がるタイミングが同じでした。
私は藤田さんと娘のコメントを比べて、日本人が英語の発音を学ぶときの難しさを改めて感じました。 2分38秒からの同じ「Lord Knows」という歌詞を聞いて
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「このウの音が舌先を歯茎に付けた音には聞こえません」(藤田さん)
「ここはLの音しか聞こえないよ。ほかに何の音が聞こえるの?」(娘)
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藤田さんのコメントは、日本人が長い間、英語の子音の長さを聞き取れなかった理由をよく表しています。
私たちには、「子音は一瞬で終わるもの」という無意識の前提があります。 日本語の子音がそういう言い方をするからです。 今まで日本語しか話していませんから、「子音は一瞬で終わる」と無意識に思い込んでいます。 だから「ウ」という音が聞こえて来ても、そこで、舌を歯茎に付けてLの音を保持しているなどとは全然思わないわけです。
私はこの後、藤田さんに再びメールを送ってお聞きしました。
川合 「藤田さんは、“あの「ウ」という音が、Lで、舌先が上の歯茎に着く音には聞こえない”とおっしゃいましたね。 それでは、藤田さんにはあの「ウ」という音は何の音に聞こえたのでしょうか」
藤田さん 「最初に川合先生から「ウ」という音がするのが聞こえますか? と聞かれたので、「ウ」という音を聞きましたが、それがLの発音の音だなんて、思いませんでした。 川合先生に言われなければ、この「ウ」という音を聞くこともなかったかもしれません」
川合 「つまり、このウという音は、Lの発音とは関係ない音として、耳が取り込まなかっただろう、ということですか?」
藤田さん 「そうです」
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藤田さんのコメントからわかるのは、「私たちはネイティブと同じ音を聞いても、ネイティブと同じように音を認識しているわけではない」ということです。
こうして私たちは、70年もの長い間、英語の子音の長さを聞くことができなかったのだと思います。 原因は日本人の耳が悪いわけではなくて、自分が話している日本語には、こういう音を保持する子音がないからです。 だから「耳は必要な音だとは思わないので、この子音の長さを取り込まない」ということです。
けれども私は、皆さんに、どうしてもこの2つの子音の違いを聞き取っていただきたいと思いました。 そうすれば、日本人の英語は今よりずっと通じやすくなるからです。 それで川合メソッド2の練習方法を考えました。
この日本語と英語の子音の言い方の違いは、両者を自分の耳で聞かなければ、理解できませんので、是非自分で聞き取れるようになってください。 そうすれば英語本来の子音で話せるようになります。
私たちはイタリア人やドイツ人とは全く違う母国語を話しています。 子音と母音がいつもセットになって一つの音として発音される日本語です。 その分私たちは、彼らより努力をしないと英語本来の子音で話すことができません。 大変ではありますが、いったんこのメカニズムがわかれば直すことは出来ます。 そのために、是非この2つの子音の違いを自分の耳で聞いて、認識してください。
日本人が70年、聞き取れなかった音の違いですから難しいとは思いますが、皆さんは川合メソッド2の練習をしてきましたので、十分、聞き取ることができます。
ここで取り上げましたYoutube のHeroを聞くときは、ヘッドフォンをつけてお聞きになってください。 小さな音ですので、へッドフォンをつけた方が明確に聞き取れます。
このHeroの歌唱は素晴らしいですね。 9桁の再生回数というのは初めて見ました。
9月4日から最後の子音「M」に入ります。 是非、最後の子音も一緒に勉強してください。
====英語本来の子音で話すための「川合メソッド2」====
8月7日から9月3日までの練習内容
簡略腹式呼吸(水道管呼吸法) 4秒 x 5回
「オーイー」を5回、唇に力を入れてつなげて言う練習
Lの練習(2) 長いLで例文を言う 3回
Wの練習(2) 長いWで例文を言う 3回
Nの練習(2) 長いNで例文を言う 3回
Rの練習(1) 普通のRで例文を言う 5回
Rの練習(2) 長いRで例文を言う 5回
Fの練習(1) 普通のFで例文を言う 5回
Fの練習(2) 長いFで例文を言う 5回
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なお、この練習「川合メソッド2」を営利目的で使用することはご遠慮ください。(皆様にそのようなお願いをする理由はこちらでご覧いただけます)
(例) 出版、発音セミナー、発音レッスン、発音講座、発音訓練 等々。
学習者どうしの情報交換は歓迎します。 どんどん行ってください。
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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。
高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)
高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。 しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています) これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。 学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。
これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)
皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。 (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。
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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。 日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)
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「中学、高校の英語の授業を英語で行う」という誤った学校教育(英語教育)の方針から子供達を守る為、当分の間、下記の文を掲載させていただきます。
「英語で考える」という指導法は実際の英語習得の過程に反する指導法です。
実際の英語習得は、まず、わからない英語を分かる母国語で理解し(第一段階)、その後わかるようになった英語を大量にインプットすること(第二段階)によって、英語で考えられるようになって行きます。(2016年8月17日のブログ参照)
母国語は生徒が英語の意味が解らない段階で無理して使わせないようにするものではありません。 わかるようになった英語を大量にインプットしたときに、頭の中から自然に消えていくものです。
「英語で考える」指導法の提唱者は、自分に日本語訳が必要だった時期があったにもかかわらず、生徒には日本語訳を使うのは害があると提唱する非常に無責任な指導法です。 イタリア語やドイツ語を日本語を使わないで習得することは提唱者にも出来ないでしょう。
「英語で考える」という指導法はまた、生徒の発音にも害悪を及ぼします。 正しい発音が定着する前に生徒に言いたいことを英語でしゃべらせると、日本語式発音が定着します。
「英語で考える」などという、日本で育った子供達には全く効果のない方法を学校教育に持ち込んで、全国の中学生、高校生を犠牲にするのはやめてください。
中学、高校の正しい英語教育方法についてはこちらをご覧ください。
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高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。
現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。
文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。 導入されれば教育現場は大変迷惑します。 中止する必要があります。 なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。
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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。
「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。 他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。
私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。
「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。 他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。 ベストセラーの著者という名声ですか。 それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。 この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか? もう英語教育とは関係ないことですか。
私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。 日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。 ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。 私の仕事の妨害をしないでください。
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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。