川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

英語教育法の授業

大学で学んだ科目の中に「英語教育法」というのがありました。英語の教師になる人には必修科目でした。私のクラスの担当は、後に津田塾大学の学長になられた大束百合子先生でした。授業中、先生は自分が学生時代、イギリスに留学していたころのことを話されました。

「その日は何かの選挙があったんですね。それで、どこで投票するのか聞こうと思って、“Where are we voting?”とイギリス人の友人に聞いたんです。そうしたら、”Go to xxx harbor.” といわれてしまいました。そのとき、私のvotingの発音はboating に、聞こえたのだとわかりました。

私は、Vを発音するときの口の形をしていたのに、そこで、摩擦ではなく、破裂を起こしてしまったので、boating に聞こえたのでしょう。

発音はその口の形を作ることも大切ですが、それ以上に、実際にそこで、摩擦の音が出ていること、それが一番重要です。」とおっしゃいました。

その話を聞いてから、私は音読の練習をするときはいつもF、Vについては自分の耳でその摩擦の音が聞こえるか確認して音読するようにしました。また、下唇に少しくすぐったいような摩擦を感じて発音しているかどうかも注意するようにしました。

あれから、もう30年以上がたちますが今でも毎朝音読練習するときはF,Vに関してはこのことを自分の耳でチェックしながら練習しています。

生徒さんの発音をチェックするときも同じです。「単語でいうときはすぐ出来ますが、文の形で言っても、V,Fの摩擦の音が私に聞こえるように発音してください。」とアドバイスします。最初は少し大げさな発音になりますが、やがて、みんな自然な発音になっていきます。

私の本の28ページに書きましたが、日本語を話しているときは子音はほんの少し発音されて、すぐに次の母音に移ってしまいます。その癖を英語に持ち込むと、子音は口の形を作るだけで、十分息を送らないまま次の母音(または子音)に移行してしまいます。そうすると、その子音が聞こえづらくなってしまいます。

特に単語の最初の子音の口の形をしたら、ちゃんと息を送り込んで、その音がでていることを自分の耳で確認してから、次の母音(あるいは子音)に移るように発音練習していると、子音もきちんと聞き取ってもらえる発音になります。

この「自分の耳で、摩擦の音が出ているかどうか確認してから次の音に移る」ということに気をつけて練習していると、初めて発音を学ぶ生徒さんでも、発音は見違えるほど、相手にわかりやすく変わります。

多くの人は「自分はFの発音をしている(つもり)。」だから相手にも「聞こえている。」と思っていますが、それは、「聞こえているつもり。」なだけです。実際には、聞こえていない場合がほとんどです。

特に、文章が、5,6個つながったパラグラフの音読になると、上級者でも、ほとんど摩擦は聞こえません。また、言い難いRの音があるとその前後に摩擦音があったときは、ほとんど摩擦の音を出さないまま、先に進んでしまいます。Rに一生懸命で、ほかの音を気にしている余裕がないのでしょう。

「自分でしゃべる言葉」を正確にしようとする努力は「自分でしましょう」。「誰かに確認してもらうから自分は気にしなくていい」などと思って発音練習していては、いつまでたっても相手に聞こえる発音は身につきません。

自分の耳で確認して、発音しましょう。「自分の耳で確認するなんて、できるの?」と思うかもしれませんが、出来ます。そういう気があれば、初心者の生徒さんでも出来ます。あなたもやってみてください。「何だ、こんなことだったのか。」というくらい、やってみると簡単なことです。その簡単なことを「いつも自分ですること」そういう当たり前のことを「面倒くさがらずに自分ですること」が、発音を上手にしてくれます。


それぞれ異なる文化的背景を持つ人たちの中でやっていくのは、楽しいことばかりではありません。異文化が出会う世界には、いろいろな価値観を持つ人たちがいます。そういう中でやっていくには時には、強靭な精神力がいることもあります。

自分をサポートしてくれる人が誰もいなくても、自分ひとりで自分のアイデンティティーに自信を持って、やっていかなければ前に進めないこともあります。(留学などで、海外に行く場合は、学校というところは、互いに尊重しあうという理念を生徒たちに徹底する場所ですので、それほど、アイデンティティーの問題で、厳しい経験をすることはないかもしれませんが、仕事(共同で働くのではなく利害が対立する場合)や社会生活に入ると、そういうことを露骨に経験することもあります。)

そういうことを考えると、「自分の話す言葉くらい、自分で身につけるんだ」というくらいの自己を持っていないと、やっていくのは難しいと私は思います。「自分の発音は自分で身につける。」「自分の発音には自分で責任を持つ。」それは、自分の手で自分の人生を切り開いていく第一歩だと思います。




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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)





高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。

現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。

文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。  導入されれば教育現場は大変迷惑します。  中止する必要があります。  なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。

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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。 私は、とても困っています。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 

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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。