私は、子供たちを連れてアメリカに行くことになったとき、日本の英語学習者に有益な情報を持って帰って英語学習の役に立てていただこうと決心し、2人の子供の英語習得過程をつぶさに観察しました。
その結果わかったことに基づいて、見てみると、日本の英語学習には様々な誤解があります。
英語習得に日本語を介在させると、英語力が阻害されて、
英語を英語で理解すれば英語力が伸びる、
これも根拠のない誤解の一つです。
英語を理解するのに、母国語を使ったからと言って、英語力の進歩を阻害することはありません。 そんなことを言ったら、通訳の勉強をする方々の英語力は阻害されていますか? 通訳をする方々の英語力が非常に高いことはみんな知っています。
英語理解に日本語を介在させると英語力が伸びないなど、何の根拠もないどころか、私の見た事実とは、正反対でした。
バイリンガルになるための正確で、緻密な英語は、子供たちが日本語に訳して、正確に英語を理解したからこそ出来上がったもので、勇之介君(1月25日のブログを参照してください)のような誤解をしていたら、正確な英語はとても習得できません。 子供たちは、英語がわからない頃、ただの一度も「英語を英語で理解する」ことは、しませんでした。
なぜか?
英語を英語で理解する。 は子供たちにとって、
英語(わからない言葉)を英語(わからない言葉)で理解する。
ということだったからです。
(わからない言葉)を(わからない言葉)で理解することは出来ません。
だから子供たちはただの一度も「英語を英語で理解すること」はしなかったのです。
私はニュアンスというのは英語を日本語に訳さないで、英語のまま言っていればわかるものではなく、たくさんの英語を勉強しながら、その社会で暮らす人の生活や歴史を知って行くことによってわかってくるものだ、と1月25日のブログで述べました。 Cat を猫と訳さないで、 Cat Cat と言っていれば、「こたつで丸くなっている猫」のイメージが「暖炉のそばでお皿からミルクを飲んでいるCat」のイメージに変わってくるわけではない。と述べました。
英語を日本語に訳さず、英語のまま言っていれば、英語のイメージで、わかってくるのは、指導している上級者だけです。 上級者はすでにたくさんの英語を学んでいますから、頭の中にたくさん英語の蓄積があります。 例えて言えば、上級者の頭の中の英語のコップはいっぱいですから、英語で言っていれば、そこから英語のイメージはあふれてきます。 ところが、これから英語を学ぶ初心者のコップはまだ、空(から)なのです。 空のコップから英語のイメージはでてきません。 初心者はこれから英語学習をして、その空(から)のコップをいっぱいにしていくのです。
教えている上級者は、
自分の英語のコップは満杯。
初心者の英語のコップはまだ空(から)の状態。
これが見えていないのです。
初心者に必要なのはまず、「英語のコップ」をいっぱいにすることです。 わからない英語を母国語を使ってわかるようにして、たくさん英語を蓄積させていくことです。 それがとりもなおさず、「英語学習」です。
私は大学時代、英語の教師になるための勉強をしました。 教育原理の伊勢田耀子先生も、教育心理の仁科弥生先生も、英語教育法を教えてくださった、後に津田塾大学の学長になられた大束百合子先生も、「教師は生徒の現在の状態を正確に把握することが非常に大事です」とおっしゃいました。
「英語を英語で理解する」という指導を初心者に行っている指導者は生徒の英語のコップが空だという「生徒の現在の状態」を見ていません。 だから初心者に、英語(わからない言葉)を英語(わからない言葉)で理解する、という指導ができると、錯覚するのです。 この方法で初心者の英語力は上がりません。 「英語を英語で理解する」という指導法は生徒にとっては何も教えてもらっていないことと同じです。 良心的な指導法ではありません。
私の子供たちは「英語を英語で理解する」ことなど、一度もしませんでした。
高校生の息子も、中学生の娘も、最初は全部教科書を和訳して、細部まで、正確に理解しました。 彼らがその時、理解できる言語は唯一日本語だけですから、当たり前のことです。
私は、大学生のころ、「英語を英語で理解する」「英語で考える」ということについて書いてある本を読みました。 読んで、「今の私は、まだあまり単語も知らないし、こういうことは出来ない」と思いました。
また、今の状態で私が、そういう勉強をしても、自分の英語力が上がるとも思えませんでした。 そんなことをするより、私にはもっとしなければいけないことがある、と思いました。 直感的に、「こういう勉強を今の私がしても、役には立たない」と思いました。 まだ、意味の分かる単語を増やす方が役に立つと思いました。
それから25年たって、私は夫の仕事のために、子供を連れて、アメリカに行きました。 そこで、彼らが、教科書を全部和訳して理解してバイリンガルになって行く様子を目の前で見ながら、やはり「学生時代に自分が感じたことは正しかったのだ」と思いました。
初心者は「英語で考える」「英語を英語で理解する」などということをやっていたら、高い英語力は持てないのだ。と確信しました。
私は2冊目の本、「続・英語発音、日本人でもここまでできます。」に次のように書きました。 子供たちに
Horseを説明するのに、a solid-bodied plant-eating domesticated mammal with a flowing mane and tail, used for riding racing and to carry and pull loads などと言っていてはだめなんです。
Erupt を説明するのに when a volcano erupts or burning rocks, smoke, etc. erupt or are erupted, the burning rocks are thrown out from the volcano
などといっていたら、子供たちは理解も出来ないし、第一時間がかかってしょうがありません。
horse は馬、eruptは噴火する、develop は発達する、evaporate は蒸発する、こうやって教えれば、彼らは一瞬で正確に理解します。 一瞬でわかって後の時間は文章の理解、つまり、授業でやったことの理解に使えたのです。 彼らの英語のコップを超高速でいっぱいにできたのは、彼らが一瞬で意味を理解できる日本語訳を使ったからです。
あの時の彼らが、英語で英語を理解などしていたら、日が暮れてしまいます。 バイリンガルは大量の英語を処理しなければなれません。 大量の英語を処理するのに、英語を英語で理解していたら、何十年もかかってしまいます。 彼らが短期間に大量の英語を処理できたのは一瞬で英語を理解できる日本語訳を使ったからです。 日本語訳によって、彼らの英語のコップ(意味の分かる単語や文章)はみるみるいっぱいになって行きました。 日本語訳は非常に効率的に単語や文章の意味を彼らに理解させました。
その結果、ニュアンスは身につかなかったか、と問われれば、全然そんなことはありませんでした。 大量に読みますから、英語と日本語で、ニュアンスが違うことも、わかってきます。 おそらく、英英辞典のように語彙を覚えてきた人より、彼らは英語のニュアンスはわかっていると思います。
私は、初心者が英語を英語で理解する、という勉強をしていると、いつまでたっても、今の英語レベルから上がれない、と感じています。 なぜなら初心者は使える語彙が非常に限られているからです。 そんな限られた語彙の中で、「英語を英語で理解する」などと言っていると、英語のコップはなかなか一杯にならないのです。 そんなことに時間を割かずに、語彙は日本語で一瞬で理解してどんどん文章を読んで行ってください。 蓄積させていってください。 ニュアンスは、意味を英語で言うことでなくその言葉が使われた文章をたくさん読んで行くことによって、わかってきます。 子供たちはそうでした。 そちらの方が英語力ははるかに上がります。 コップもどんどんいっぱいになります。 効率的です。
この、初級者に対する「英語を英語で理解する」という指導法は、もう一つ、重大な欠陥があります。
次回は、それについて説明します。
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私の2冊目の本「続・英語発音、日本人でもここまでできます。」を購入された方で、付属のCD、トラック6に録音されております、Where’s my bag? の「W」の音の比較が聞き分けられない方は2月1日のブログ、「生徒のWの音は川合典子にはどのように聞こえたか?」をお聞きください。
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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。
高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)
高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。 しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています) これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。 学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。
これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)
皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。 (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。
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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。 日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)
高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。
現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。
文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。 導入されれば教育現場は大変迷惑します。 中止する必要があります。 なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。
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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。
「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。 他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。
私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。
「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。 他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。 ベストセラーの著者という名声ですか。 それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。 この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか? もう英語教育とは関係ないことですか。
私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。 日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。 ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。 私の仕事の妨害をしないでください。
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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。