川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

「英語の発音を学ぶこと」は、学習者自身が、日本語とは違う音の世界があることを知ることです(1)

5年くらい前、ネイティブ並みの発音、ということについて話をすると、必ず、「日本人は日本人の発音で良いのだ」と主張する人がいました。  「どこの国の人だってお国訛りの英語で、堂々と話しているんだから、日本人だって日本語訛りの英語でいいんだ」と、そういう人は主張するのでした。

残念ながら、これは、日本語の場合は当てはまりません。  イタリア人がイタリア語なまりの英語で話しても、通じるのですが、日本人が日本語訛りの英語で話すと、母国語の特徴から、通じない英語になってしまうのです。

日本語は英語と比べると単語の最初の子音が非常に短いです。  長さを例えて言うとアメリカ人が5ミリメートルの子音で話しているとしたら、日本語は1ミリメートルの子音で話しているような感じですね。  

そうすると、5ミリメートルの子音を日常聞いている人は1ミリメートルの子音を聞いても何の子音か認識できないんですね。  言葉のセンサーはいつも聞いている5ミリメートルまで伸びたSやTHの音は知覚しますが、1ミリだと知覚できないんですね。

イタリア語の子音ははっきり言われます。  上の例えに習えば、イタリア語訛りの英語も子音は5ミリメートルあるわけですからその言い方で話せば、なんと言っているかはわかります。

このように他の国の人が母国語のなまりで話していて通じるからと言って、日本人も日本語なまりの英語でいい、とは言えないのです。  私がこう言ったら、「先生、そんなの不公平です」といった生徒さんがいましたが、たまたま日本語の言い方がほんの少ししか子音を言わない、という特徴をもっていたので  仕方がないんですね。  私たちは、日本語訛りを克服して、英語の発音を身に着けていくような努力をするしかありません。

もし、どこかで、「日本人は日本人の英語でいいんだ」と言っている方がいたら、「それでは通じないからだめなんですよ」と皆さんが教えてあげてください。  通じない言語は、コミュニケーションの手段として、使えません。  これは、日本語訛りが良い、悪いという問題ではなく、日本語の子音の言い方の特徴によるものなのです。 

もうひとつ、発音を教える人の中には「生徒は、自分で聞いても、音があっているか違っているかわからない。  だから、先生が聞いて、正しいと確認してもらった発音で練習しなければ、誤った発音が身につく」という考え方があります。

これも、誤った考え方です。

英語を学び始めた人はまだ母国語の音しか知りません。7月27日のブログに書きましたように、英語と日本語では文を構成している音が違います。  日本語はタッタッタッタと短く切れる音で構成されていますが、英語は日本語より何分の一秒かですが長い音が繋がって構成されています。

上の例を使えば、英語を学び始めたばかりの人は、まだ、1ミリメートル以外の子音の言い方が有ることなど、全く知らないのです。

そこで、自分が発音して、先生に、「もっとSの音を強く発音して」といわれると、日本語と同じようにその瞬間だけSの音を大きく発音します。  その瞬間だけ音を大きくする日本語の発音の仕方しか知らないからです。  そして、先生にそれでいいといわれると、そこだけ破裂音のように瞬間的に強くSを発音するようになります。

日本語の音の出し方しか知らない学習者は、本来ならここで「英語は、日本語とは違う音の出し方をする」ということを、学ばなければなりません。  ここで必要な指導は「生徒が聞けないから、先生が、聞いてあげる」ではなく生徒が聞けなかったら、お手本と生徒の日本語式の発音を並べて2つの音の違いを聞けるように指導してあげる事なのです。

そうすると、映画「プラダを着た悪魔」の23分のところでメリル・ストリープが「this…stuff…」といった時のSのように長さを持った音が英語には有るのだ、 英語のSの発音は、タッタッタと短く切れる日本語とは違うのだ、ということを学習者本人が、わかるようになるのです。 

これが発音学習なのです。 

もう一つLの例をあげれば、  

日本語と同じように発音されたLeadership という言葉は、最初のLが短くて聞きにくいです。  これを英語の「長さを持ったL」(つまり、舌の先が歯茎から離れる時ではなく、舌先が歯茎に付いている時に発音するL)で話すように発音学習者は学ばなければなりません。  こういう何分の一秒かの長さの違いは自分の耳でお手本と自分の発音をくらべて聞いて、初めて分かることなのです。  この違いを自分で聞かなければ、英語の言い方を身に着けていくことは出来ないのです。   

音が聞けなかったら、両者の違いがわかるまで、聞く練習を続けていくのが、発音練習なのです。  今すぐに聞けなくてもいいのです。  聞く練習を続けていくのです。  それをしないで、先生が代わりに聞いて、「大きく発音して」とか「長く発音して」とか言っても、日本語の発音の仕方しか知らない生徒は、Sの発音も、Lの発音も、タッタッタッタと切れる日本語の発音の仕方の枠組みの中でしか思いつかないのです。  それ以外の音の出し方が有るなどと、生徒は思ってもいないのです。  2つの音の違いを聞けた時、生徒は英語という新たな言語の発音の仕方を知るわけです。

8月1日に続きます。




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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)





高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。

現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。

文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。  導入されれば教育現場は大変迷惑します。  中止する必要があります。  なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。

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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。  私はとても困っています。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 

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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。