川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

わが子の英語力を上げたかったら、文部科学省がどのような方針を打ち出そうと、中学、高校の英語は日本語で学習させる。(2)

13日の続きです。 
 
では、意味が分かるようになった英語を体になじませていく作業は何で行うかというと、これは、発音練習によって行います。  意味や構造をよく理解した後の英文を何十回と発音していく、発音練習によって行います。  

この時、発音だけでなく、単語の意味、文の構造など重要事項も全部、子供に定着します。  よく理解できない英語で授業を行うより、よくわかるようになった英語を何回も繰り返し口で言う発音練習の方が、よっぽど英語は定着します。  同時に通じる発音も身に付きます。

文部科学省は今回の方針で、「コミュニケーション」に重点を置いた指導をする。と述べています。  コミュニケーションにおいて一番大事なことは何か。

それは、まず「通じる英語で話す」ということです。  日本人の英語は日本人の発音に慣れた外国人には理解できますが、一歩日本の外に出て、日本人の英語を聞いたことのない人には非常にわかりにくい英語です。  全然理解できない人もいます。 

コミュニケーションと言うと、「とにかく生徒に英語を話させればいい」と思っている方が多いのですが、そういうことを言うのは、日本人の発音がどれほど、本来の英語の発音と違っているか、聞きわける能力のない人です。

2015年2月23日のブログ「空(から)のコップを見ることができない(2) 発音のコップ」、こちらは発音について解説していますが、これを読めば、生徒に勝手に英語で話させると、日本語英語、つまり通じない発音が定着することがわかります。

日本人は、発音練習をしなければ正しい発音は身に付けられません。  イタリア人が勝手に英語をしゃべっても子音は聞こえますが、日本人が発音練習をしないで英語をしゃべると、子音が聞こえない発音になります。  ですから、「とにかく生徒にたくさん英語をしゃべらせればいい」という指導をすると、子供たちは今の日本人の通じない英語を受け継ぐことになります。

これでは、コミュニケーションは成立しません。

中学一年生の発音習得能力はとても優れています。  「母国語習得」のように大量の英語を聞く場合は小学生は上手に発音するかもしれませんが、「外国語習得」のように聞く量が少ない場合は、小学生は文章全体に長く続いた音を把握しきれないようです。

私が、聞く限り、「発音を習っている小学生」がしゃべる英語のリズムは等間隔の日本語のリズムです。  音そのものも違う場合が多いです。  小学生は自分で聞いた通りでなく、先生に言われた通りの「口の形」でしゃべることに一生懸命です。 「英語が通じる」「通じない」を決定するのは口の形ではありません。  聞こえた音です。 (これについては3月13日のブログ「キーワードと耳の力(一つのことが出来るように練習していくと、なぜ全体が出来るようになるのか)」を参照してください)

私が聞いた小学生の発音で上手な子は、現在の中学1年生が学ぶ程度のやさしい文なら、ネイティブに近い発音で言える子も少数いましたが、関係代名詞が入ったり、従属節があるような長い文になると無理なようです。  そういう長くて複雑な英文を発音を習っている小学生が、ネイティブに近い発音でしゃべるのは聞いたことがありません。

それに対して中学生は、大量に聞けなくても、小学生より緻密に文章全体を真似します。  特に文章全体を英語のリズムでいうのは、小学生よりはるかに上手です。  小学生に単語をしゃべらせて「ネイティブ発音だ」とおっしゃる方もいますが、文章でしゃべらせたときの発音の違いが聞けないから、そのようにおっしゃるのでしょう。  (これについては2013年11月6日のブログ、「私と同じことを聞き分ける生徒さん」をお読みください。)

前にも書きましたが、教育実習に行った、帰国子女の大学生が、「中学一年生はすごくよく音が聞ける」と驚いていました。  日本人の発音習得は、この中学一年生の、耳の良さを活用します。  

「コミュニケーション能力」に関して言えば、発音練習によって、何十回と教科書の文章を繰り返しますので、基本的な英語表現はすべて身に付きます。  中学3年間に習う文章を正しい発音ですらすらしゃべれたら、基本的なコミュニケーションは、十分できます。  英語で授業などやらなくても、学習を終えたレッスンをすべて発音練習していくと、中学卒業時には生徒たちは正しい発音でコミュニケーションを行う力を十分身に付けます。 

「正しい発音で、通じる英語が話せる」私は、これは日本人にとって、長い間の悲願だったと思います。  通じない、通じない、と言われ続けてきた日本人の英語。  中学卒業時に、「正しい発音で、中学3年間に習った文章が話せる」ということは、この悲願が達成される、ということです。

授業でたくさん英語をしゃべらせても「コミュニケーション能力」の育成はできません。  発音練習をしない限り、日本人は通じない発音から抜け出すことは出来ないのです。

日本語は、子音と母音がいつもセットになって話されます。  子音と母音2つで一つの音を構成するので、日本語の子音は非常に短くなります。  こういう子音の言い方は英語にはありません。  この独特な子音のしゃべり方を英語に持ち込むと非常にわかりづらい英語になります。 詳しくは私のホームページ「通じない日本人の発音」をご覧ください。

この、コミュニケーション能力の土台となる、中学生の発音練習のやり方については次回、17日(金曜日)のブログでご説明いたします。


「英語を英語で理解する」は、英語学習を続けた末になる「結果」であって、最初からすることではありません。  指導している人でさえ、「イタリア語をイタリア語で理解してください。」と言われたら、出来ないのですから、指導者自身もこれから習う言語では出来ない、非常に無責任な指導法です。  

一見、上級者と同じことが初級者にも出来るように見せかけて、実は初級者は、それをやっても英語のニュアンスはわからない、という良心的でない指導方法です。  (2015年2月14日のブログ「空(から)のコップを見ることができない(1)英語のコップ」をご覧ください)
  
役目が終われば日本語は、自動的に消えていきます。  日本語で学習したThis is a pen. を、訳さないで理解できる日は誰にでも訪れます。  インプットの量が十分になったら日本語は自動的に消えていきます。  

日本語は一過性のサポートをするだけです。  赤ちゃんが使う「おしめ」と同じです。  大人になってもおしめをしている人はいませんので、安心して、日本語で英語を学ばせてください。  お子さんは、確かな英語力を身につけます。  くれぐれも、中学、高校時代を「英語を英語で理解する」などという、大人も初めて学ぶ言語ではできない、無責任な学習法で6年間を無駄にしないようにしてください。 

わが子には、6年間母国語できっちり英語の基礎を学ばせます。  その強固な基礎の上に、大学時代、大量のインプットを行えば、英語力は飛躍的に伸びます。  (大量のインプットのやり方は、前出「帰国子女に見る世界に通用する英語力の作り方」に書いてあります。)

皮膚感覚まで含むほど、深く意識に入る母国語で学ぶからこそ、強固な英語力の基礎が出来上がるのです。  焦らずに、必要なことを一歩一歩確実に習得させてください。  子供に勝手に英語をしゃべらせると、日本の外に出たら、通じない発音になります。  

「聞いた通りに発音する」という訓練を2年間行った人の発音に勝る発音は、どこにもありません。  一つ一つ必要なことを確実に習得していくようにします。  私が目指しているのは、皆さんのお子さんが大学卒業時に学業や仕事で、世界に通用する英語力を身につけることです。
    
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私の本「続・英語発音、日本人でもここまでできます。」を購入された方で、付属CDトラック6に収録されております、Where’s my bag? のWの音の比較が聞き取れない方は、2015年2月1日のブログをお聞きください。  そうすると、生徒さんと私のWの発音の違いが聞き取れるようになります。


私の書いた3冊の本の中で、2冊目の本「続・英語発音、日本人でもここまでできます。」は、最も難しい本です。  これが、読んですぐわかる方は、相当、音をよく聞いて発音練習していらした方だと思います。  むしろ、一回読んだくらいでは理解できない人の方が多いと思います。  けれども、川合メソッドのやり方で練習していくうちに、必ず、わかるようになりますので、心配しないで、練習を続けてください。

子音と母音が常にセットになって発音される日本語は、独特な子音の言い方をします。  英語の音との違いが分かるには、少し辛抱して音を聞いてください。

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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)




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高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。

現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。

文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。  導入されれば教育現場は大変迷惑します。  中止する必要があります。  なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。

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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 

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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。