川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

シャドウイング その2

きのうの続きです。

自分の録音をお聞きになって、母音が短いと感じられませんでしたでしょうか?
単語の子音がはっきり聞こえないところがありませんでしたでしょうか?

夢中で速度についていこうとして発音する場合、日本語の癖が、顕著に出ます。日本語の癖をそのまま出した英語は、相手にとって非常にわかりにくいです。(日本語にどのような癖があるかは、本の中で述べました。)

私は最近テレビで、ナショナルジオグラフィックチャネルやディスカバリーチャネルなどを見ますが、時々その事柄について日本の研究者が英語でインタビューに答えている場面があります。日本人だとすぐわかる英語ですが、どなたも、すらすらとよどみなく話していますので、多分、海外で何年か研究した経験のある人たちだと思います。

私は、その研究者の英語を聞いてもちゃんと理解できます。けれども、日本人が話すときは、たいてい英語字幕がでるのです。英語で話しているのに、英語字幕がでるのです。

何度かそういう場面を見るうちに、もしかしたら、日本語の癖がでた英語は一般の英語を話す人には、よく理解できないのではないか、と思うようになりました。たとえば同じ研究をしている人、その日本人の意見に非常に興味を持っていてなんとしても聞きたいと思っている人たちなら、多少聞きにくくても一生懸命聞こうとしてくれると思います。

でも、そういう必要を感じていない人たち(一般のテレビの視聴者)には、日本語の癖が出た英語は、よく理解できないのではないかと思うようになりました。イントネーションやリズムが違うと、わかりにくいのは当然ですが、単語の子音が聞こえなかった場合はほとんど何を言っているのかわからなくなります。

だとしたら、日本語の癖が、全面に出てしまうシャドウイングの練習は聞き取ってもらえない英語を量産しているだけではないかと私は思うようになりました。(たとえ、理解できない英語を話していても「あなたの英語は理解できません。」とは誰も言いません。失礼ですから。)

また、シャドウイングでイントネーションやリズムを身につけるといいますが、自分ひとりで、今シャドウイングした英文を読んでもらうと、イントネーションもリズムもぜんぜん違って読んでいます。とてもシャドウイングでリズムやイントネーションが身につくとは思えません。

(ちなみに、若いころ読んだ、英語の雑誌にイントネーションは最後まで一番母国語の特徴が残りやすいと書いてありました。流暢に日本語をしゃべる外国の方々でも、イントネーションは母国語に似ている方がたくさんいらっしゃるのはそういうことなのだなと思いました。)

自分ひとりで言った場合でも、今聞いた文と同じに言えるように練習をするほうが、ずっとリズムやイントネーションは身につきます。そして、こちらの練習のほうがシャドウイングよりずっと努力が要ります。


発音の練習は、速さに夢中でついていくのではなく、文ひとつを最初から最後まで聞いて、それと同じように発音する練習をして録音してみる。そうしたら、お手本の発音と自分の発音を比べて直していく。そういう練習を丁寧に行ってください。そうすると、子音の弱さはだいぶ直ってきます。

イントネーションやリズムは一文全体を言ってみて初めて感覚がつかめるものです。一瞬一瞬を追っていくシャドウイングでは、自分がリズムやイントネーションを身につけていなくても、簡単に同じようにいえます。

特に初級者は、最初は面倒くさくても、丁寧に正確に文全体を自分ひとりで発音する練習をしてください。そうすると、イントネーション、リズムを自分で掴むことができます。また、子音も気をつけるようになりますので、相手によく理解してもらえる英語が話せるようになります。

初級で、丁寧に発音練習しなかった場合は、上級になっても、子音の強さや、母音の特徴をなかなかお手本どおりに発音できなくて、苦労します。

私は、38歳のとき、シカゴで、通訳の講座を受けるまで、シャドウイングをしたことがありませんでした。

帰国の辞令が出て、あと3週間でシカゴを出るというときになって3日間だけ、(まだ、帰国の辞令が出ていなかったとき申し込んでおいた)通訳のトレーニングに行きました。そこで、練習が始まったとき、担当の講師の先生から、「帰国子女ですか?」と聞かれました。「違います。」と答えました。

講座の中盤でシャドウイングの練習が始まったとき、それまで、いつも何回も英文を聞いて、自分なりに正確に発音できるように練習してから、テープに吹き込んで、モデルと比べて直すという練習をしてきた私には、練習もしないで、いきなり初めての英文を聞いて口を動かしても、とても今聞いた文章とそっくり同じにはいえませんでした。

それで、先生に「自分は今まで〜〜〜という方法で発音練習してきましたが、今日のように、いきなり、初めて聞く英文を追って発音しても、正しく発音できません。これは何の練習なのでしょうか?」と、お聞きしてみました。

そうしたら、講師の先生は、「それでわかりました。帰国子女でもないあなたがどうしてそういう発音をしているのかずっと不思議に思っていました。あなたは相当一生懸命その方法で勉強されたんですね。」とおっしゃいました。先生は、そのあと、少し、何か考えるように無言でいらっしゃいました。

そして、「初めての英文をシャドウイングしてみて、つっかえるところがあればそこが、自分が苦手な場所だとわかるので、そこを重点的に練習します。」とお答えになりました。でも、それにあまり意味があるとは先生ご自身ももはや思っていらっしゃらないように見えるほど、さらっとおっしゃいました。

自分が言いにくいところはシャドウイングしなくても、スクリプトを一回音読すればすぐにわかるからでしょう。でも、とても正直な先生だと思いました。

中学一年のときから、英文を聞いて、音はもちろん息を吸うタイミングも単語のつなぎ目も息が詰まるところもそっくりに言えるように何度も録音して練習してきた私には、聞こえたとおりしゃべればいい(それが本当に同じに発音できているか誰もチェックしない。)シャドウイングの練習は頭のどこにも負荷がかからない、いったいこれで、自分のどこを鍛えているのだろうと思うほど、楽な練習でした。

というより、発音を練習しているとも思えませんでした。なぜなら、しゃべりながら聞くので、音に集中することもなく(思い込んでいた音と本当の音はここが違うと気づくことがない。)、急いで、発音して(ぞんざいな発音になる。)、それが正しい発音かどうかもチェックしない(自分の間違いに気づくことなく終わる。)。このプロセスのどこで、発音のレベルが上がるのだろうと思いました。

シャドウイングしているときの自分の発音を録音して聞いてみて、「正しい発音で英語をしゃべっている」と自信を持って言える人以外は、発音練習のためにシャドウイングをするのはやめたほうがいいと思います。

シャドウイングをやればやるほど、日本語の癖が前面に出た英語を話すことになります。その結果、相手にとって非常にわかりづらい発音が身につくことになります。

私はシャドウイングで発音練習しました。」という人にお会いすると、聞かなくてもその方がどういう英語を話す人か大体わかります。母音が短い方が多いです。

バブルのころのように日本がお金持ちだったら、「日本人は日本人の英語でいいんだ。」と、わかりにくい英語で話しても、一生懸命理解しようと努力してくれる人がたくさんいたと思います。でも、もはやそういう時代は終わったと私は思っています。




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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)





高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。

現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。

文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。  導入されれば教育現場は大変迷惑します。  中止する必要があります。  なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。

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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。 私は、とても困っています。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 

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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。