川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

Honey(蜂蜜)と「歯に〜」

シカゴにいた頃、お昼に、スーパーで、2歳の息子をカートに乗せて買い物をしていたら、知り合いのお母さんに会いました。  息子より1歳くらい年上の勇之介君(仮名)のお母さんでした。  勇之介君はもうプリスクールに行っていました。

勇之介君のお母さんと立ち話をしていた時、こんな話を聞きました。  「きのう、幼稚園にお迎えに行った時、カバーリー先生が“今日は、子供たちにクマさんと蜂蜜のお話の絵本を読んであげました”と言っていたの。  家に帰ってきたら、勇之介が、ニッと自分の歯を見せて、それを指さしながら、“歯に〜、歯に〜”っていうのよ。  何を言っているのかと思ったら、カバーリー先生がクマさんと蜂蜜のお話を読んでくれた時、honey, honey って言っていたのを、歯にくっつくから“歯に〜”だと思ってしまったみたいなの」と笑いながら話してくれました。  私も思わず、一緒に笑ってしまいました。  子供はかわいいですね。

私は3冊目の本の中で、小学校1年生の息子がバイリンガルになる過程を観察して、

小さい子は母国語でこそ説明されませんが、わかるようにするものがあって、理解しています。 ぴょんぴょん飛び跳ねながら、I’m jumping. と言われればぴょんぴょん飛び跳ねるのがjumping だとわかります。 

と書きました。

ところがこの「英語をわかるようにするもの」が不十分だった場合、勇之介君の「歯に〜」のような誤解が起こるわけです。  

私たち家族が2度目にアメリカに赴任した時、5年生の娘も高校1年生の息子も教科書を全部和訳して授業内容を理解していました。  そうしないと勇之介君の「歯に〜」のような誤解が起こるからです。  Honey を歯にくっつく「歯に〜」だと思っていたら、英語の授業は理解できませんし、テストにもこたえられません。   幼稚園児ならそれでもどこにも問題は生じませんが、学業や仕事で英語を使う場合、正確に理解しなければ、大きな問題が起こります。  子供たちの場合は、次の学年に進級できません。  それで、教科書のわからない単語や文章を、英和辞典で調べて、自分たちが理解できる日本語に訳して正確に理解していたわけです。  

日本では英語を日本語に訳すことは英語力を阻害する害悪があるように言う人がいますが、子供たちがバイリンガルになる過程を見た私は、むしろ日本語に訳して正確に理解しない方が英語力を阻害するのではないか、という疑問を持ちました。  

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(ヨーロッパで行われている指導法はどうなのか。という疑問がある方は   2014年11月18日のブログ、「ヨーロッパの英語教育に対する誤解」と 2015年8月17日のブログ「なぜ日本人はヨーロッパの人々と同じ英語指導をしても効果がないのか」をご覧ください。  日本語は文字、発音、語源、語順、文化など、英語と共有するものはありません。  英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語などは言語をグループ分けしたときは同じグループに入る、いわば“親戚”です。  日本語は、“親戚”ではありません。

私は大学生の時、英語教育に関する雑誌で、ある先生が次のように書いている記事を読みました。  

ヨーロッパの人々は日本人よりはるかにたやすく英語を習得している。  日本人は「日本語は特殊だ」などと言っていないで、もっと簡単に習得すればよいのだ。

私はその時、これを書いた先生は、日本人にとって、何が英語習得の障害になっているのか、把握しているのだろうかと思いました。  非常に驚きました。  だから40年近くたった今でも、この記事を覚えています。)
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学習というのはわからないことをわかるようにすることです。  わからない英単語や英文をわかる母国語で理解するのは辞書を引いたり、文の構造を勉強したり、手間暇がかかります。  でも、子供たちはそれを丹念に一つ一つ辛抱強く行いました。  だから2年という長いトンネルを抜けた時、バイリンガルになって行ったのです。

日本語に訳して、英単語や英文をわかるようにする努力をしなかったら、どうやって授業を理解するのでしょうか?  Honey を「歯に〜」のままにしておくのがいいとはだれも思いません。  きっと勇之介君のお母さんも、おうちにある蜂蜜のびんを見せて、「これがHoneyよ」とあとで、教えてあげたことでしょう。

「習うより慣れろ」という言葉がありますが、英語学習の場合は「習ってから慣れろ」が正解です。  子供たちの英語習得を見る限り、母国語でわからないことをわかるようにする、緻密で丹念な学習が、高い英語力を作ります。  自分のわかる日本語に訳して理解することなしに、初心者が高い英語力を持つようにはならないと私は思っています。

初級者に「英語を英語で理解する」という指導法を聞くと、私は勇之介君の「歯に〜」を思い出します。  皆さんは、そうではなく、地道に丹念にわからない英単語や英文をわかるように学習してください。  それが高い英語力を身に付ける近道です。  

子供たちがバイリンガルになる過程を小学校、中学校、高校の各段階で、3回観察した私は、英語を「日本語に訳して理解すること」は英語習得においてなんら害悪を及ぼさない、という事実を見ました。  和訳は子供達の英語習得に何の害悪も与えませんでした。  むしろ、日本語に訳さないで、あいまいな理解のままにしておく方が問題だと思います。  

「英語を日本語に訳すとニュアンスがわからない」というのは根拠のない誤解です。  2013年5月12日のブログ、「だんだん、わかってくること」をご覧ください。  この場合、Cat という言葉を習って、「猫」と訳さずにCat, Cat と言っていれば、「こたつで、丸くなっている猫」のイメージが、「暖炉のそばで、ミルクを飲んでいるCat」 のイメージに変わってくるか、と言えばそういうことはありません。

ニュアンスというのは、日本語に訳さないで、英語で言っていればわかるようになるものではありません。  たくさん英語の本を読んだり、聞いたり、勉強していくことによってわかってくるものです。  読みながら、言葉だけではなく、その社会の人々の生活や歴史についても同時に学んでいくとわかってくることです。

英語を最初は日本語に訳して理解しても、たくさん勉強していくことによって、ニュアンスはわかってきます。

私は上にのべたような事実に基づいて初級の方はきちんと母国語を使って英語を理解されることをお勧めします。  バイリンガルの土台も和訳によって出来ました。  わからないことは母国語を使ってしっかり理解してください。  それが高い英語力を身に付ける近道です。

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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)



高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。

現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。

文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。  導入されれば教育現場は大変迷惑します。  中止する必要があります。  なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。

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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 

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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。