川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

発音習得をつかさどるのは耳の力

英語の早期教育に対する誤解については3回で完結させる予定でしたが、最後が少し長くなってしまいましたので、今日と明日の2回に分けてお話ししようと思います。

11月13日のブログで私は、「英語を習っている小学生の文章の発音を聞くとネイティブの子供が文章をしゃべるときの発音とは全然違う」と書きました。  なぜ、大量のインプットがあるアメリカやカナダの子供はネイティブ並みの発音になり、発音を習っている日本人の子供はネイティブ並みの発音にならないかというと、アメリカやカナダの子供は、「自分の耳で」大量の英語を聞いているからです。  

「自分の耳で聞いたように話す」 

大量のインプットがあるとこれができるから、ネイティブ並みの発音になるのです。

「本当?」と思う方はちょっとした、実験をしてみてください。  外国の方に、日本語の文章をひとつお教えして、「ここはこう発音する」「そこはこう発音する」と言葉で説明して、日本人と同じように日本語をしゃべってもらってください。  おそらくどんなに言葉を尽くして説明しても、他人から教わるだけでは、日本人と同じように文章を言うことは出来ないと思います。(単語でなく文章です。)  文章をしゃべる場合は、どんなに言葉を尽くして説明しても、説明だけでは日本人と同じにはしゃべれないのです。  「自分で聞いて同じように言う」練習をしないと、文章の発音はそっくりには言えないのです。  発音練習には「自分の耳で聞くこと」がとても重要な役割を果たすのです。  

なぜか?  それを私は2冊目の本「続・英語発音、日本人でもここまで出来ます。」の第2章耳の力、第一節「耳のすごさ」で次のように書きました。

* * *

今まで発音練習から除外されてきた耳の力とはどういうものなのか。  ここではそれについて解説する。

私は小さいころ、誰からも「日本語は口の開け方があまり大きくないの。(英語と比較した場合です。)舌の位置は高く固定されているのよ。  母音はあまり引き伸ばさずに発音するのよ」などとは教えてもらわなかった。しかし、私は、日本語の音質で母音を引き延ばさない完璧な日本語の特徴で日本語を話す。  周りの日本人の日本語を聞き取ることで、耳は脳を通してそういうことを私に教えてくれたのである。

同様に、アメリカ人の子供は、誰からも「口は縦に大きく開けて、のどをあけて、鼻腔に共鳴させて、英語を話すんだよ」などとは教わらないのに、完璧な英語の音質で、文の最初から最後まで強い声で話す。  これは周りの人の英語を聞いて、それと同じように話すには口の形はこうする、息はこうやって送るということを耳が脳を通してその子の体に教えたからである。

耳は、言語を発するときに必要な音に関する情報を、聞いた音からすべて取り込む。  驚くべきは、それが唇や舌の情報だけにとどまらず、息の強さ、つまり肺の運動まで含み、声がどこに共鳴しているかなど、鼻腔の中の動きまで含んでいることである。

発音するときには、おそらくそのほかにも、腹筋や背筋だけでなく、私が気付いていない多くの体の部分を動員していることは間違いない。

このように耳は、言語を話す時の音の情報をすべて感じ取ることができ、かつ、それと同じように音を出すには、口やその他の発声に関する器官をどう動かせばよいかまで、脳を通じて体に教えている。

これほどの働きをしている耳を、これまでの発音練習では除外してきたのであるから、日本人の発音が少しもよくならなかったのは、当然である。

発音は遺伝的に習得するものではない。  帰国子女を見ればわかる。  発音は耳が聞いて脳を通して体に教えたのである。  これは耳が私たちの発声器官と直接つながった、体の一部であることから可能になるのである。

* * * 

夫の最初の赴任でシカゴにいた頃、息子は自分の耳で、大量の英語を聞いていました。  そして、聞いたように発音したから、ネイティブの子供とそっくりな英語で話すようになったのです。  私は息子には何も教えませんでした。

日本では大量の英語のインプットがありませんから、英語を習っているお子さんの発音は「耳で聞いた通り」というよりは、「先生に言われた通り」口を動かすことに一生懸命なように私には聞こえます。  先生が、英語の音の発音の仕方を教えて、子供達はその先生の言うとおりにしゃべる。  そこには子供たちのよい耳の力が活用される場所がないですね。  あるいは、文のように音が長くつながると、大量のインプットがない子供は音を把握できないのかもしれません。

ですからその子たちの話す英語は、強弱のリズムというよりは、ほとんど音の強さが文の最初から最後まで同じで、等間隔で切れるリズムになっています。  私がアメリカで聞いた子供たちの英語とは違います。

ここまでお読みになった方々は、「少ししかインプットのない日本では子供でさえ、ネイティブと同じように言えないのだから、自分の耳で聞いた通りに文章を言うことは誰も出来ないのではないか?」と思われるかもしれません。  けれども、そういうことはありません。  子音が少し日本語化しますが、聞いた通り言っている子供たちを私は見ました。  

熱心に発音練習している中学1年生です。

中学1年生は数か月前まで小学生だったのですから、音はよく聞けます。  耳がいいです。  英語は日本にいると、実際に言葉として使われるところを体験することはありませんので、純粋に知的レベルで理解する言葉となります。  実体験とは結びついていない言語です。  発達段階から言って中学生は抽象的なことも考える年代に入りますので、実体験を伴わない言葉も理解できます。

中学1年生に自分の耳を使って聞いた通りに文章を発音する練習をさせると、小学生より器用に真似してきます。  音を真似するときの”緻密さ”が、「先生から教わった通りの口の形をすることに一生懸命な小学生」とは全然違います。  また、中学1年生は文章全体を”流れるように”発音することができます。  等間隔に切れる小学生の英語とは違います。  全体として、非常にネイティブによく似た発音で話すようになります。  これは、少ない回数しか聞くことが出来なくても、自分の耳で聞いた通りに発音するという学習能力が小学生より高いためでしょう。

明日に続きます。

極端な英語早期教育を行った際に子供が受けるダメージについては、2011年10月17日のブログ「帰国子女の英語 帰国後の英語維持について」の一番最後に書きました「* * * 言語と文化 * * *」のところをお読みください。  それがいかに危険をはらんだものかご理解いただけると思います。 

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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)



高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。

現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。

文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。  導入されれば教育現場は大変迷惑します。  中止する必要があります。  なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。

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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。  私はとても困っています。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 

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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。