川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

発音習得をつかさどるのは耳の力(2)

昨日は

中学生は子音が日本語化しますが、「非常に緻密にお手本の発音を真似することができる」と述べました。  先生の教えた通りの口の形をすることだけに一生懸命な小学生の発音とは違うと述べました。  

また、中学生は、「文全体をお手本と同じに流れるように言うことができる」とも述べました。  「文の最初から最後まで、同じ強さで等間隔に切れる小学生の英語とはちがう」と述べました。

中学生の英語が、ネイティブに近いのは、彼らが「自分の耳で」聞いた通りに発音する練習をしているからです。  彼らの発音がネイティブに似ているのは、ネイティブの発音を「自分の発声器官と脳を通してつながっている耳」でとらえているからです。  彼らは、「他人に言われた通り」発音するのではなく基本の発音を習った後は、「自分の耳で、聞いた通り」発音する練習をしているからです。  

彼らの耳こそが彼らの発音をネイティブに近いものにしているのです。  しかも彼らはとても注意深く練習します。  なぜなら、彼らはそれは自分でするべき「学習」だと思っているからです。    

臨界期仮説を誤解して、「早期教育早期教育」と目の色を変える前に、自分の耳で、「英語を習っている小学生の発音」と「熱心に自分で聞いた通り言う練習をしている中学生の発音」を聞いてみてください。  日本人が発音を習得する場合、どちらがより効果的に発音を習得しているか、自分の耳で、両者の発音を聞いてみてください。  そうすれば違いが分かります。  違いの原因は「自分の耳を使っているか、いないか」ここにあります。


教育実習に行った、知り合いの大学生が「中学1年生はすごくよく音が聞ける」と驚いていました。  帰国子女の彼女の話す英語は中学3年生より1年生の方がよく聞けたそうです。  3年生からは「先生の発音、よすぎてよくわかんない」と言われたと苦笑していました。

能力は使えば使うほど発達しますので、中学1年生から「聞いた通り発音する練習」を続ければ3年生になっても耳の力が落ちることはありません。  発音は、2年間練習すれば、定着しますので、中学時代に発音の基礎を習得することは可能です。  この時、正しい発音を文章で言えるようにすればその後は、一生、発音を学びなおす必要はありません。  あとはスピードを上げる練習をするだけです。


大量のインプットがない環境で、中学生は発音練習をスタートしますから、習得を容易にするために基本的な発音の仕方と日本人の発音の問題点(子音の日本語化など)は最初に教えます。

けれどもその後は、大人は余計な指導はしないことです。  彼らのよく聞ける耳の力にまかせましょう。  リズムや文全体を滑らかに発音することなどは大人より、中学生自身でずっと上手に習得します。  

大人が子音の日本語化などを聞き取れる場合はアドバイスをするのも結構ですが、そうでない場合は余計なアドバイスはしないことです。  特にせっかく英語のリズムで流れるように言っている生徒の英語のリズムを変えてしまうような指導はしないことです。  彼らの優れた耳の力に任せましょう。  彼らの方が全体を英語のリズムで滑らかに言うことは大人より上手です。  また、彼らの耳の力を伸ばすことも英語教育ではとても大事なことです。

なぜなら、この耳の力を鍛えないと、ナチュラルスピードの英語をネイティブと同じに言うことは出来ないからです。  発音に関しては自分の耳の力を使うことが最もだいじなことなのです。  ですから中学生の耳の力を活用し、彼らの耳の力を伸ばすことは、日本人の発音の問題を解決することに大きく貢献します。

2つ目の困難「英語の語順ですらすらしゃべること」

次に、日本人が英語を習得するときに経験する、もう一つ困難なこと「英語の語順ですらすらしゃべる」についてですが、これは、発音のように2年で習得、というわけにはいきません。  もう少し、長くかかります。

日本人が英語を習得するのに長くかかるのは、母国語の性質上仕方のないことです。  私の子供たちも、学校で7時間英語を聞き、家に帰って来て最初のころは7,8時間教科書を和訳して宿題をしていました。  その後家庭学習の時間は少し短縮しましたが、そういう状態が2年間続きました。  バイリンガルになるわけではなく、外国語として、英語をすらすらしゃべるにはそこまでの量はいりませんが、それでも、英語習得には長い時間がかかります。

これは母国語である日本語の特徴から来るものですので、理解してください。

英語を習得した上級者が、自分は最初から英語だけの環境に入れられても理解できた。  和訳などしているから時間がかかるのだ、訳さないで、英語のまま理解すればいいのだ、と言っても、それは、本人が、自分の英語学習の過程を忘れてしまっただけですので、惑わされないようにしましょう。  

その人の英語学習履歴を見れば、日本語に訳して理解した時期があったのは、明白です。  そういう言葉に惑わされず、理解できるようになるまでは母国語を使って、しっかり学んでください。

初心者がわからない英語をわからないまま何回聞いても(言っても)時間の無駄です。  わからないことはわかるようにしてから何回も聞く方がずっと実力が付きます。  初心者が英語をわからないまま10分聞いても何の実力も付きません。  けれども、わかるように調べてから10分聞けば語彙や構文も覚えますし、リスニングの効果も上がります。  初心者がわからない英語を英語のまま理解しようとするのは単なる時間の浪費であって、学習ではありません。

詳しくは
2013年5月28日のブログ「2つの英語を英語で理解する、は全然違うこと」をご覧ください。

英語力は地道な学習によって、一歩一歩上げていきます。  それが最も確かな方法です。  

英語をすらすら話すための勉強の仕方については、長くなりますので、私の3冊目の本、「帰国子女に見る世界に通用する英語力の作り方」を参照してください。

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英語の早期教育について書いてきましたが、私は、小学校1年生で帰国してペラペラ英語を話していた息子の英語を維持する努力はしませんでした。  正確に言うと維持しようとしたけれど、それが無駄な努力だとわかったので、やめました。  その辺りの事情については2011年10月17日のブログ「帰国子女の英語 ― 帰国後の英語維持について」に詳しく書きましたので、興味のある方はご覧ください。  (今年、2014年の9月に、このブログの中ほどに、*参考*として、帰国後、中学3年生だった娘が高校受験まで、どのような学習で、英語力を維持したのかを書き加えました。)

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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)





高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。

現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。

文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。  導入されれば教育現場は大変迷惑します。  中止する必要があります。  なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。

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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。  私はとても困っています。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 

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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。