川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

プレゼンテーションの練習

前回(12月8日)は、アメリカではプレゼンテーションの練習が幼稚園の時から始まり、その練習は小学校の各教科の中で引き続き行われる、とお話ししました。  

実際に、小学校の各教科ではプレゼンテーション(大変、初歩的な形ではありますが)を何回も行い、良いプレゼンテーションとはどういうものなのかを子供たちは少しずつ、自分の体で、学んでいきます。  具体的に小学校でどのように初歩のプレゼンテーションの指導が行われるのか、今日はそれをお話しします。

娘が6年生の時、数学で、「割合」を習いました。  その時に次のようなプロジェクトが先生から出されました。 (プロジェクトはアメリカの学校ではよく出されます。)

― 好きな野球チームを2つ選ぶ
― それぞれのチームの各選手の打率を調べる
― それぞれのチームの平均打率を求める
― 2つのチームの平均打率を比べる
― どちらが攻撃力のあるチームだと思うか
― その理由は何か。
― 数学は物事を調べる時にどのように役に立つか。

生徒はこの課題を一週間くらいかけて行い、結果をわかりやすいように大きな画用紙数枚にまとめてクラスの前で発表します。  みんなの注意をひきつける為に、好きなチームのユニフォームを着て発表したり、キャップをかぶって発表してもよいと言われました。  まとめた画用紙には好きな野球チームのマークなどを入れてみんなの注意をひきつけやすいようにきれいにまとめます。

先生は事前に、「どういう基準で発表を採点するか」を一覧表にして生徒に配ります。  先生が採点するのは次のような点です

― 声が教室の後ろの人まで聞こえるか。
― みんなの目を見て話しているか。
― 説明がわかりやすいか。
― 図がわかりやすいか。

他にも、みんなの興味を引き付ける工夫がされているか、などの項目があったと思いますが、主なものは以上のような点でした。  それぞれA,B,C.D,Eの5段階で評価がつけられます。

この評価のポイントがとりもなおさず、「よいプレゼンテーションとはどういうプレゼンテーションなのか」を表しています。  生徒はそれを見ながら家で発表の練習をします。  このプレゼンテーションは全員が行います。  よくできる数人の子だけが行うのではなく、全員が行います。  アメリカに来てまだ1年数か月の娘も行いました。  まだ、英語がよくしゃべれませんでしたから、家で、何回も練習しました。

娘は当日、犬のぬいぐるみを持って登校しました。  そのぬいぐるみは、普通のぬいぐるみの大きさでしたが、中に手を入れると、指人形のように、人差し指で頭を、親指と中指で、左右の手を動かせるようになっていました。  

娘が言うには「まだ、英語がよくしゃべれないから、みんなに注目されると緊張して話せなくなってしまう。  犬を動かして、犬がしゃべっているように発表すれば、みんなが見るのは犬ちゃんの方で、由紀子の方は見ないから安心して発表が出来る。」ということでした。  

テレビのレポーターよろしく、「ユニフォームやキャップだけでなくマイクを持って、発表してもよい」と先生はおっしゃっていたので、ぬいぐるみもOKだったようです。  クラス全員、25人が同じような内容でプレゼンテーションをするので、いろいろ生徒が工夫してくれば聞いている方も飽きなくて良いのでしょう。  

クラス全員、25人がプレゼンテーションをしますので、時間もかなりかかります。  けれども、授業の進度よりも、「クラス全員、一人一人が相手に分かりやすいように自分が調べてわかったことや自分の意見を述べる」という体験をすることが重要だと学校では考えられているのだと思います。  それが、コミュニケーションの基本だからでしょう。  これを各学年でしっかり身に付けることが学習の目標なのだと思います。

こうして、幼稚園のshow-and-tell から始まったプレゼンテーションの練習は、国語だけでなく、各教科の授業の中で行われていきます。  私がほかに覚えている娘のプレゼンテーションは、歴史の授業で古代エジプトを学んだ時、娘が古代エジプトで人々が楽しんでいたゲームを調べて、クラスのみんなに説明したことでした。  これもプロジェクトの一つです。 (プロジェクトは先ほどの数学のようにみんなが同じ課題ですることもありますし、一人一人違った課題を選ぶこともあります。)  娘は、実際にゲームに使われたボードと駒を再現して作り、クラスのみんなにゲームをやってもらいました。  

このように子供たちは良いプレゼンテーションとはどういうものなのかを各授業の実践で身に付けていきます。  プレゼンテーションはその後も中学校、高校の各学年で行われていきます。  息子は高校の授業でやっていました。

子供たちの初歩のプレゼンテーションは、母国語で、自分の意見を相手に理解してもらえるようにわかりやすく話す練習です。  話す内容の構成なども相手に分かりやすいように自分で考えます。  つまり、相手によく理解できるように話すというコミュニケーションの基本を彼らは母国語で学んでいるわけです。   

こうして、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、と授業でプレゼンテーションを誰もが経験しますので、アメリカ人は、大人になっても自分の意見を相手に述べることには、慣れています。  ですから、そういうことをほとんど経験しないで、大人になる日本人に比べて、プレゼンテーションが上手にできるのは当然だと思います。  こういうことは練習をすれば、誰でも上手になりますね。

ここまでプレゼンテーションについて述べてきました。  次は文部科学省の目標にあった「ディベート」について、アメリカ人がどのように学んでいくのかを述べたいと思います。  娘と息子の学校の様子を見る限り、いきなりディベートの練習から入るのではなく、まず、論理的に自分の意見の正しさを相手に伝える練習から入っているようです。  その辺のところを次回は述べていきたいと思います。  これは、少し長くなりますので、年末年始で、中断されないよう、新年から始めたいと思います。

来週は2014年を振り返って書きたいと思っています。

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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)




高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。

現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。

文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。  導入されれば教育現場は大変迷惑します。  中止する必要があります。  なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。

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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。  私はとても困っています。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 

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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。