川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

扇子(せんす)を見ると、思うこと

先回のブログで、私は発音を習得するのは生徒さん自身なので、生徒さんの中にある発音習得に必要な能力を向上させることが、私の指導の目的だと書きました。

発音を習得するためには、

1.まず、目的とする音が聞けること

2.同じように発音したつもりでも、違っているところがあった場合、どこが違うか気づくこと

3.直すにはどうしたらよいか考えて、考えたとおりに発音すること

こういう能力を生徒さんの中に育てなければならないと思います。

この能力全体を、発達させることによって、生徒さんは発音を自分で習得していくことが出来ます。

初級の遅いスピードなら、遅いスピードなりに。 練習を重ねて上級になったら、速いスピードなりに。  自分で音を聞いて、同じようにいう能力を発達させていきます。

1.2.3.を自分でするのは面倒かもしれませんが、練習の初期は、自分の持っているいろいろな能力を使うことが非常に大事だと私は考えます。

私は新しい生徒さんがみえると、「この生徒さんの能力を初期から全開して訓練していきましょう」と思うのです。
どういうことかと言いますと、

私は自分の長い経験から、今のことだけ考えて教えているわけではありません。  これから5年10年、この生徒さんが英語を使っていくときのことを考えています。

突然ですが、皆さん、扇子を思い浮かべてください。 扇子は一箇所、要(かなめ)のところでとめられていて、そこを中心として開いて使いますね。 


扇子はちょっと開くだけだと要(かなめ)の部分から離れた先のほうでも、あまり面積は広がりませんね。  でも、大きく開くと、扇子の面積は要の部分から離れれば、離れるほど大きく広がっていますね。  私は、扇子のこの面積が、いろいろな器官を訓練した生徒さんがやがて能力を発揮する範囲のような気がするのです。  


練習の初期に、ほとんど自分の器官を使わないで、発音習得をおこなうことは、扇子をちょっとしか開かないのと同じだと思います。  

自分のいろいろな器官をたくさん使って、発音習得していくことは、扇子の中心角をはじめから大きく開くことと同じようだと思います。  練習をスタートさせたばかりのころ、つまり、要の近くの部分では中心角を大きくとっても、それほど面積はありませんが、要から離れていくと扇子の面積はとても大きくなっていきます。  それが私には、初期からたくさんの器官を訓練して年月がたった時、向上した自分の能力を広い範囲に発揮できるようになった生徒さんの能力の広がりと同じように感じられるのです。

最初から少しの器官しか使わないで、練習していると、5年、10年たっても、発達する能力はほんの少しです。  けれども初期から、聞くこと、考えること、比べること、直すこと、考えたように口を動かすことなど、いろいろな力を訓練していくと、5年、10年、たつうちには、その訓練したいくつもの能力が向上して、いろいろなことが行えるようになります。

例えば、いつも自分の発音とモデルの発音を比べる練習をしていると、違いを認識することに鋭くなった耳は、地下鉄の駅などで、ネイティブ同士が話している横を通っただけでも、聞いた英語から、口の形のヒントを得たり、共鳴の場所のヒントを得たりします。 私が病院の受付で英語の口の形に変わって行ったのも、こういう練習の延長線上で起こったことでした。

練習でつちかった聞く力、考える力はもちろん、注意深さや洞察力、観察力、いろいろな能力が向上して、多方面で使えるようになります。  

ですから私は新しい生徒さんがみえると「この方の扇子も最初からなるべく大きく広げておきましょう」と思うわけです。  そうやって練習の最初から生徒さんの持ついろいろな器官を訓練して可能性を広げてあげたいと思うのです。  それには実際にさまざまな能力を使いながら練習していくのが一番いいと思っています。

いろいろな能力を使い「自分が直さなかったら、誰も直してくれる人はいない」と言うくらいの集中力を持って、音の習得にかかわる能力を鍛えていくと、その生徒さんの能力はとても向上していきます。

「少ない時間と努力で、発音を習得したい」とは、誰しも思うことですが、私は発音の教師ですから、皆さんがせっかく持っている能力を出来るだけたくさん伸ばして行きたいと思うのです。  特に学習の初期に「出来ることの範囲」を広げておくことは、その後の英語力を左右する大事な要素だと思っています。 

何をするにも、「人から教えてもらって、短時間で簡単に出来る」それは魅力的ですけれど、学習の初期に「今までしたことがないほど集中して音を聞いた」、「一生懸命考えて同じ音を出した」、こういう経験をすることは、自分の能力を開発する上で非常に重要だと思うのです。 

練習を始めて8ヶ月たつころ、学習している人の耳の力や、考える力は、学習を始めたころとは全然違います。   少しずつ高度な能力を持つようになります。  そうやって、完成度の高い発音を習得していただきたいと思います。



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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)




高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。

現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。

文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。  導入されれば教育現場は大変迷惑します。  中止する必要があります。  なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。

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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。  私はとても困っています。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 

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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。