川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

Sの発音

生徒さんは、私のレッスンを受けるとき、次のレッスンで学ぶ英文を自分で練習し、モデルの発音と比べて自分で直します。そしてその生徒さんが一番よくできたと思う録音をレッスンの前に私に送ってもらいます。(MP3でメールに添付して送ってもらいます。カセットテープの人もいます。)

私はその録音を聞いて、発音の違うところに(スクリプトに)印をつけます。発音の違うところは聴いた瞬間にわかります。「時間をかけて検討する」などと言うことは一度もしたことはありません。

そしてレッスンの時には「OOさんの発音した文章のstudents のS、sports のSが短いです。またsports のSの発音は次の音とのあいだに切れ目が少しあります。OOさんの録音を今からかけますので、その部分に注意して聞いてください。」と言って、生徒さんに自分の録音を聞いてもらいます。そのあと、「私が同じ文章を英語で言いますから、student の S、sports の S に気をつけて聞いてください。」と言って私の発音を聞いてもらいます。 

「違いがわかりましたか?」と聞くと、生徒さんは、「確かに短いですね。」と納得されます。私は発音習得において、この瞬間は大変重要だと思っています。何が違っているか、具体的な差異を生徒さんが自覚する瞬間だからです。

自分の発音を聞くことなく先生に何回「あなたのSは弱いです。もっと強く発音してください。」といわれても、どう違うのか、本人は具体的にわかっていないので、直せないでしょう。(しかも、日本人は「強く」と言われると破裂音のように瞬間的に音を強く出すようにSを発音してしまいます。そうすると次の音に滑らかにつながりません)

「今、自分の発音はこう聞こえる。モデルの発音はこう聞こえる。OOが違って聞こえるから、そこを直そう。そうやって練習して録音して聞いてみたら、モデルと同じに聞こえるようになった。」

「発音を習得する」というのはこのプロセスを自分の耳で聞きながらすることです。「今、違って聞こえている所がどう聞こえるようになれば正しい発音になったと言えるのか。」それを自分で知っていて、目標との差をなくして行くプロセスです。

現時点での自分の発音を聞いて知っていないと、何を直したらいいのかわかりませんね。どんないいアドバイスも発音する人が自分の発音を聞いていないと、役に立てられないわけです。

自分で自分の発音を聞いてみましょう。それが発音を習得する第一歩です。

萩原先生によると声帯は体の中にあるので、自分で聞く自分の声は、他人が聞く自分の声とは違うそうです。ですから、自分の英語を録音して、聞いてください。


文章で発音練習をするときは、途中で息を弱めないで発音する練習をしてください。日本語をしゃべるときとは違う、英語の文章をしゃべるときの息の使い方を練習してください。単語を1つ言ったあと、息を弱めず、引き続き同じ強さの息を保って、次の単語の最初の子音を言ってください。

特に単語の最初がSで、次に別の子音が続くもの(たとえば student や  sportsのような単語)が入っている文章は気をつけて練習してください。

最初はSの前で「こんなにここで息を押さえておくの?」 と驚くかもしれませんが、それが相手に聞こえる子音を言うときの息の使い方です。切れ目のない息の使い方です。日本語とはまったく違いますね。

録音して何度もモデルと同じにいえるように練習すると、違和感なくそうやって一定した息が使えるようになってきます。そうすると、ほかの文章を音読しても、単語の最初の子音が、半分の強さにならないで言うことができます。

座って強い息を使うときは姿勢を正しておなかで上半身を支えるとやりやすいです。発声練習も続けてください。子音が聞こえないと、いくらネイティブっぽい声で話しても通じませんので、よく練習してください。

もし、自分の周りに英語をしゃべる日本人の方がいたら(もしそういう人がいなければインターネット上で聞ける日本人の発音でもいいです)、その人のしゃべる英語の単語の最初の子音が、ちゃんと聞こえるかどうか、聞いてみてください。(耳の訓練にもなります。)

母国語が同じ人は共通の傾向がありますから、それを聞くことによって、自分の発音を直す参考になります。気をつけて聞いていると皆さんにも日本人は単語の最初の子音が弱いことがわかるようになります。ただ、あまりたくさん、日本人の英語を聞かないで下さい。普段の練習で発音を判断するときの基準が甘くなってきますので。

最後になりましたが、
私が見ている英文の資料にはSの発音の場所はalveolarと言うところに分類されています。ジーニアス英和大辞典を見るとalveolarの意味の2番目のところに

{音声}歯茎音の<子音が/ t, d, n, l, s / のように舌先を上歯茎につけるか、接近させて発音される>と書いてあります。

Sは歯茎音です。ですから歯並びに関係なくきれいに発音できます。発音の仕方は次のとおりです。

まず、舌を上の歯茎に近づけます。初めての方の場合は、上の歯茎に舌をつけてしまってかまいません。最初はその方がやりやすいです。

上の歯茎に舌をつけたら、舌の一番先端の部分だけを少し、歯茎から離します。(先端の両側の舌は歯茎につけておいてください。)そうすると離した部分に、すき間ができますね。 そのすき間の中に、強く息を送り込みます。

すき間の両側の舌は、歯茎に押し付けるようにつけていると、勢いよく、息を送ることができます。

あるいは舌を上の歯茎に着けて、舌の先端の部分に向けて勢いよく息を送り込みます。 そうすると舌の先端の部分が歯茎から少し離れてその狭い隙間を勢いよく息が通ります。 そうすると持続した鋭いS の音が出せます。 舌の先端の両側の部分は強く歯茎に押し付けておいてください。

図を見たい方は

http://soundsofspeech.uiowa.edu/english/english.html
アイオワ大学のサイトです)

上のサイトに行って、

(1)「fricative」をクリックしてください。

(2)/ S / をクリックしてください。

(3)一番下のstep-by-step description をクリックしてください。
出てきた図が発音するときの図です。
Step-by-step description の隣の animation with sound を
クリックすると音と共に図を見られます。

参考になさってください。

2月1日より川合典子オフィシャルサイトで、私のDVDの一部が見られるようになりました。口の周りの筋肉の動きを取り込むようなつもりで、見ながら一緒に口を動かしてみてください。 皆さんと同じ日本人の顔の動きは自分の顔の動きとして取り込みやすいと思います。DVDの中の短い英語の歌も載せてあります。

「S」が単語に入ったときの発音の仕方については、2月2日のブログ「Sが単語に入ったときの発音の仕方」をお読みください。




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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)





高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。

現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。

文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。  導入されれば教育現場は大変迷惑します。  中止する必要があります。  なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。

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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。 私は、とても困っています。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 

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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。