川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

ニコラス・ケイジ

私は、シカゴ赴任中に、病院の受付で「英語の音質で話すときの口の形」を経験しました。 帰国したとき、発音や音声学の本に、「英語の音質で話す口の形」が書いていないかと、大きな書店を随分回って、探しました。 けれども、唇や舌の位置については、たくさん解説が書いてあっても、口の中の空間の形について、解説してある本を見つけることは出来ませんでした。

おそらく、今から20年前、1990年代の前半に、日本人とアメリカ人の母国語を話す時の口の中の空間が違うことを研究して本を出版した人は居なかったのでしょう。

仕方がないので、本を探すことはあきらめましたが、自分はそのときの口の形で、ずっと発音練習を続けました。

その後、2002年にニュージャ−ジーに再び赴任して、萩原先生とであって、そのときの口の空間が声楽の口の空間と同じだと知ったのでした。

帰国して、日本で発音を教え始めたころ、アメリカに10年以上住んでいる友人が、「上の子の日本語は母国語だけど、下の子はもう英語の方が、母国語に近くなっているかもしれない」と言ったときがありました。

私は自分の娘から「カラオケでうまく歌いたいから、発声練習を教えて」と言われたとき、教えていて、娘の口の奥を見たら、ふつう日本人が、私の最初の本の31ページ左の図のように口の奥を開けるのは大変なのに、娘の舌の付け根は、はじめからあの絵のように下がっていたのでびっくりしました。

それで私はその友人に、「末のお嬢さんの口の奥の形を見る機会があったら、どんな風にあいているか見てくれないかしら?」と頼みました。もちろん母親と言えども、口の奥の形を見ることなど、そうそうありませんので、機会がなくて見てもらえなかったとしても、それはしょうがないと思っていました。

何ヶ月もたってから、彼女とスカイプで話したとき、「OO子が、アハハハ、、、とこの間笑ったのね。その時、口の奥の方が見えたの。 そうしたら、典子が書いた絵(最初の本の31ページに書いてある左側の図と同じ絵を書いて私は彼女に見せていました。)のように、舌の付け根が下がっていたわ。 笑ってるだけなのに、あの絵のように良く開いてたわよ。」と彼女が話してくれました。

やっぱりそうなんだなと私は思いました。 日本人の私たちにはこの絵のように舌の付け根を下げて(軟口蓋を上げているところは見えませんが)口の奥を開けることは大変です。 1,2週間では出来ません。 だから声楽の練習も毎日やります。

それで、ある日の声楽のレッスンのとき、私はこのことを萩原先生に話しました。先生は驚かれて、「すごい発見ね。」とおっしゃいました。 やはり、日本人の声楽科の生徒さんにとって、舌の付け根を下げることが、大変なのを良くご存知だったからでしょう。

すごい発見かどうか分かりませんが、シカゴの病院の受付で、体験した「日本語を話すときとは違う口の空間を作って母国語を話している人がいる」ということを私は再確認しました。

そしてある映画を見たときにもそのことが分かりました。
皆さんはThe Family Man (邦題は「天使がくれた時間」)と言う映画をご覧になったことがありますでしょうか。 その映画の40分30秒のところでニコラス・ケイジが自分の赤ちゃんのオムツを初めて取り替えるシーンがあります。

あまりきれいな場面ではないので、皆さんにお話しするのを迷いましたが、その時、オムツを開けて、赤ちゃんがウンチをしていたのを見て彼が「オオっ」と言うシーンがあります。 そのときの発声の仕方が、口の奥のほうをとても下げて発声している声です。 声だけではなく彼の顔の映像からもそれが分かります。

映画の内容よりも、私はこのときのニコラス・ケイジの発声の仕方と声が、映画が終わってからも、しばらく頭から離れませんでした。 「オオっ」と言ったときの声がおなかから出ているように強かったことも印象に残りました。日本人の男の方が、「オオッ」と驚かれても、あんな発声ではおっしゃいません。「日本人とは違う口の中の空間を作って母国語をしゃべっている人がいる事」をまた再確認しました。

日本人にはこの口の中の空間を作ることはやりにくいですが、小さいころからこうやってしゃべっている人たちには当たり前の口の形なのだと思います。 もし、この映画を見る機会がありましたら、あまりきれいな場面でなくて、申し訳ないですけれど、彼の「オオっ」と言うときの発声にも注意して、見てみてください。 参考になると思います。

* * * 発音練習のヒント * * *
川合メソッドは耳、口、脳を一体として訓練していきます。
何かを学ぶときに自分の頭を使って学ぶということは、日本人にとってはそれほど抵抗がないように私は思います。 むしろ、自分はほとんど考えないで、人の言うとおり発音したり、ただ真似をするだけの方が、「なんでも納得して取り組みたい大人の学習者」にとっては、抵抗があるのではないでしょうか。 「自分で納得した音で発音する」、知的作業に慣れている大人は、本来はその方がずっと安心して発音習得できるのではないかと思います。 



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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)




高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。

現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。

文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。  導入されれば教育現場は大変迷惑します。  中止する必要があります。  なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。

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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。  私はとても困っています。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 

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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。