津田塾大学に在籍していたとき、英語の教師になる学生は音声学が必修でした。 何人もの先輩から、「音声学は落とす学生が多いから気をつけなさいね」と言われていたので、私は先生のお話を聞き落とさないよう、講義の間中、注意深く聞いていました。 私のクラスを教えてくださったのは上田稔先生でした。
ある日、Rの発音の説明が終わったとき、先生は次のようなお話をされました。
英語のRの発音の仕方は分かった。 それでは日本語のR(つまりラリルレロを言うときの子音)はどういう発音なのだろうと先生は思われたそうです。 それで知り合いのアメリカ人(たぶん音声学のお話を今までした事のある方でしょう)に自分の日本語を聞いてもらったそうです。 何と言う言葉を話されたのかは覚えていませんが、とにかく日本語のラ行の音が入っている言葉をアメリカ人に聞いてもらったそうです
そうしたら、そのアメリカ人から「あなたは今、舌でtap(軽くたたく)しました」と言われたそうです。 上田先生ご自身、日本語のラ行の音を発音したらアメリカ人に「舌でtapした」と言われたのがとても意外だ、と思われたようでした。
Tapと言うのは、軽くたたくことですね。 私は自分の名前が「のりこ」ですから、ラ行の「り」が入りますので、このことは非常に興味深いお話でした。
家に帰ってきてから何度も「のりこ」「のりこ」と言ってみました。 そして確かに舌で口蓋をtap、たたくように発音しているなあと思いました。
それから何年か経って、私は発音を教えるようになりました。 そして日本人のLも、アメリカ人のLも注意深くたくさん聞くようになりました。 しばらくして、「日本人のLは短いなあ」と思うようになりました。 そして日本語の子音のようにLを発音してみると、舌は一応歯茎につきますがそこではほとんど音を出さず、舌が離れるときに音が出ているということに気づきました。 このとき音声学の授業で上田先生がおっしゃったことを思い出しました。
「日本語のラ行の子音がtap(軽くたたく)するように言われているのなら、その言い方が、英語のLを発音するときも影響を与えているのではないか」と私は考えるようになりました。
Lの発音で歯茎をたたくように言ったら、舌先が歯茎についているときには、ほとんど音が出ていないことになります。 ですからLの発音を教えるときは、日本語のように舌が歯茎から離れるときに音を出すのではなく舌先が歯茎に着いているときに音を出すように教えなければいけないと思いました。
ですから生徒さんに「Wall Street」(新しい映画ではなく1987年のCharlie Sheen, Michael Douglasが出演しているほうのWall Streetです。)と言う映画の48分53秒のところで、ゲッコウの奥さんが「Larry」と言うときのLが、舌が歯茎にからまるように長く発音されているのを聞いていただいたりしました。 このことはすでに皆さんにお話しました。 (2冊目の本の152ページに書いてあります)
そんなにゆっくり言っていないときは、舌を歯茎に強く押しつけてLを発音しています。 「Two Weeks Notice」 と言う映画の最初の部分で主演のサンドラ・ブロックが何度もlandmark と言うところがあります。 彼女が最後にlandmarkと言ったとき(3分12秒のところ)の発音が、歯茎にしっかり舌を押し着けてLを発音しているのが分かります。 (もしお聞きになる場合は、ボリュームを小さくして、聞いてください。 この場面は工事のおじさんと彼女の怒鳴り合いですから、普通のボリュームで聞くと耳が痛くなります。)
強く発音されるLはしっかり舌先を歯茎につけて発音してください。 そうすると、日本語の子音のように短くならず、よく聞こえます。
これに関連して、東京の地下鉄の車内アナウンスでthe Marunouchi Line, the Hanzomon Line という時の L の発音の仕方について解説したブログがあります。こちらも合わせて、ご覧ください。
2017年7月11日「私が3つのことを繰り返し書く理由」というブログの最後のほうの「発音練習について」という項目に書いてあります。
本格的に練習したい場合は、私のホームページの「通じない日本人の発音」というページをご覧ください。
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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。
高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)
高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。 しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています) これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。 学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。
これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)
皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。 (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。
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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。 日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)
高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。
現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。
文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。 導入されれば教育現場は大変迷惑します。 中止する必要があります。 なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。
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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。
「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。 他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。
私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。
「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。 他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。 ベストセラーの著者という名声ですか。 それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。 この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか? もう英語教育とは関係ないことですか。 私はとても困っています。
私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。 日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。 ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。 私の仕事の妨害をしないでください。
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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。