川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

化学のノート

息子は中学時代、筆記体の書き方を習わなかったようでした。  教科書を見ても載っていなかったので、「必ず教える項目」には入っていなかったのかもしれませんね。  ですから息子は筆記体で書かれた文字は、アメリカに行ったばかりの頃は読めませんでした。

でも、化学の先生の板書は筆記体でした。  先生の言っていることもわかりませんし、筆記体も読めないので、息子はくるくる回る筆記体の文字を形だけ写してノートに書いて帰って来ました。  あの頃、近視でメガネをかけなければいけなかったのですが、嫌がってかけていませんでしたので、息子の写してくる筆記体は、先生が、書いたものとは細かい所で随分形の違うものが多かったですね。(さすがに1ヶ月で、メガネを作りに行くと自分から言いだしました。)

自分が何を書いているかわからないで文字の形だけを写してきた人のノートというのは大変わかりにくいです。

例えばこんな感じでした。
 
最初はthe periodic table という元素の周期表の勉強から始まりました。 日本でも習う一番左の欄が水素、リチウム、ナトリウム、カリウム。。。。と上から並んでいる表ですね。

ノートには

右向き矢印(――>)の次に Lの最後の横棒がにょろにょろ伸びている文字が書いてあって、その次にPolxxxty(xはなんだかわからない文字)と書いてある。 多分これはPolarity だと思いました。

右向き矢印ですから「何かの結果がこうなるということかな?」  「それとも、右に行くと極性が変化するということなのかな?」  多分、極性というのは大きくなったり小さくなったりするのだろうから、この最後がにょろにょろ伸びたLみたいな単語はLess のことかなあ。。。という具合に、息子の書いた英語を「解読」して行きました。  「近視だからLessの筆記体のss の所がにょろにょろ〜〜にしか見えなかったのかもしれない」と考えました。

息子のノートはほとんどこういう文字ばかりだったので解読するのにとても時間がかかりました。

化学は週3時間あり、2時間続きの日の化学のノートは10ページぐらいありましたから、それを解読していると、あっという間に2,3時間たってしまいました。  その間、横に座っている息子と娘には違う科目の勉強をできるところまでひとりでやらせて、時々聞いてくるわからないところに答えながら私はずっと、ノートを解読しました。 

ノートの解読が終わってから教科書を日本語に訳して説明し、ノートに書いてあることも、解読した内容で息子に説明しました。  この時非常に役に立ったのが、アルクから出ていた「英和 化学学習基本用語辞典 海外子女・留学生必携」という本でした。  生物や数学もこのシリーズが役に立ちました。

私は教科書を訳すときは、とにかく文法的に正しく訳すことを心がけました。  一度だけ、日本語に訳しても私自身には何を言っているのか良くわからないことがありました。  この時は、原子の構造を勉強していました。

私が教科書の日本語訳を聞かせると息子は「ああ、そうか、そうか、だから先生はこうやって数を数えたんだ」と言って、右手を前に出し、左手を横に伸ばして直角を作り、今度は左手を前に伸ばし右手を右に伸ばして直角を作りながら、言いました。  授業で先生のなさったことを自分でやって、納得しているように見えました。  電子の数でも数えていたのでしょうか?

私は、日本語に訳しても、自分ではよくわかりませんでしたので、「太郎はこの訳文で言っていることがわかるの?」と聞いたら、「うん、わかったよ」と言いました。

私がわからなくても息子がわかればそれでいいと思いましたので、それ以上その文は読みませんでした。  この時も、文法にのっとって訳すことはとても大事だと思いました。

化学のある日は、夕食の用意に時間を使っていられませんので、子供が帰ってくる前にある程度まで、調理をしておきました。 学校から帰ってきてから、真夜中まで、ほとんどずっと宿題をやっていました。  一度、もう食卓でご飯を食べていたら終わらないと思ったときは、帰ってきた夫に冷凍のピザをオーブンに入れて焼いてもらって、それをつまみながら、宿題を続けたこともありました。  お父さんもつかれて帰ってくるのにすまないと思いました。  

こういう状態で4ヶ月くらいたった時、「いつまでもお母さんが手伝っていたら自分の勉強にならないから、もう自分でやりなさい」と息子に言いました。  息子は納得しましたが、「化学だけは難しくてわからないから手伝って」と言われたので、化学は一年間一緒に勉強しました。   

娘は全く英語がわかりませんでしたので、2年間一緒に勉強しました。  だから学校で何を学んでいるかよくわかりました。  勉強が十分できていない生徒の保護者は学期末に5人くらいの各教科の先生と一度に面接をします。  ある先生が、保護者の中には「先生5人に保護者1人(つまり5対1の面談)は不公平だ」と、いう人も居ると教えてくれました。 

私もその面接をしましたが、各教科の先生からアドバイスがあるごとにサイエンスの先生には「それはocean floor の章についてですね。」とか数学の先生には「それはヤンキーズマリナーズ(自分の好きな球団を2つ選んでいい事になっていました)の平均打率を求めて、数学が、実力の比較にどのように役立つかをまとめるプロジェクトの問題ですね。」とか、私がその都度、確認をするので、先生方もちょっと驚かれた様子が感じられました。  5年生にもなれば、全部保護者が一緒に宿題をする生徒は普通はいないからでしょう。

いつもテストが0点ばかりではかわいそうだったので、地理のテストは
latitude 緯度
equator 赤道
などと、テスト範囲の用語を英語と日本語でペアーにしてテープに吹き込んで、「これを一週間聞いてみてね。 そうしたら来週のテストは少しはできるからね。」などといって、娘に覚えさせたりしました。  それを吹き込みながら、なんだか口の形が英語と日本語で違うので、やりにくいなあと思ったのを覚えています。

子どもたちの勉強の手伝いは、その日勉強したすべての教科を毎日毎日、限られた時間で理解させなければならなかったので、大変でしたが、こうして、二人の子供が、ゼロからバイリンガルになるまでの変化を、横でずっと観察できたことは、英語をマスターする道筋を知る上で、とても役にたちました。  

私自身も日本でずっと英語を勉強して来ましたから、「日本の学習者にはない勉強の仕方だ」と思ったことは特に強いインパクトを持って心のなかに残っています。  今はそれを日本で勉強する人たちのために、役に立てていただこうと、こうして、その時わかったことをブログでお伝えしています。 




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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)




高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。

現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。

文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。  導入されれば教育現場は大変迷惑します。  中止する必要があります。  なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。

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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。  私はとても困っています。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 

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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。