川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

お子さんの英語についてのお問い合わせのとき

ブログをお休みさせていただいていますが、ご質問者の方から丁寧なお礼のメールを頂戴いたしましたので、一言書かせていただこうと思いました。

私は、自分の意志で英語を勉強している方から、英語学習についてご質問を受けますと、英語力を上げるために、その方に今最も必要だと思われる内容でアドバイスをいたしますが、お子さんの英語力の維持に関して、ご質問をいただいた時は、最も英語力を上げる方法をお答えする前に考えることがあります。

それはそのお子さんの今の日常が意味のあるものであるように、ということです。  そのお子さんの人生が実り多いものになるように、ということです。  (私のこういう考え方の根底には、私には「幼児期の子供は母国語を学びながら「言語とは何か」を同時に学んでいるという認識があるからです。  そして「言語とは何か」を学びながら、文化や生活、感情や愛情など、たくさんのこと、その後の人生の基底になることをこの時期に母国語を習得しながら学んでいるという認識があるからです。  詳しくは2011年10月17日のブログの一番最後、「幼児英語教育について」に書きました。)   

2011年10月17日のブログにも書いたように、シカゴに小学校低学年までいた十数人のお子さんのお母さんたちと子供が大学に入学した年にお会いしました。  みなさん優秀なお子さんでしたから、希望の大学に行かれて良い大学生活を送っていらっしゃるようでしたが、みんな普通の日本の大学生になっていました。     

長い時間の経過を通して、多くの知り合いの、帰国子女の成長を見てくると、小学校低学年をアメリカで過ごして英語がペラペラになって帰国しても、大人までの人生を見ると、それがそんなに重要視することではなかった、ということがわかります。  小学校で使うような英語は中学高校に行けばみんなわかるようになります。  発音だって、中学生の時に自分の耳を使って習得すれば、かなり良い発音が身に付きます。  

学校で習う年齢でやっても十分できることを遊ぶ時間を返上して、小学生でやっても、そんなに意味はないと、何人もの帰国子女を見てくるとわかります。  

親は、「日本に帰って来ても英語を維持したい」と思います。  でも、子供は英語を維持する必要性を感じていませんね。  ここは、言語も文化も日本だからです。  

親は英語を維持すれば、「この先」(「今」でなくて、「この先」です)子供の人生は有利になると思います。  けれども、子供は「今」自分のいる社会で、しなければならないことを全力でやって、その対価として受け取るものがあるのです。  それは大人には見えないものかもしれませんけれど、子供にとっては自分を肯定的に確立するとても大事なものです。  渡米直後から2年間くらい、それができない世界で、やって行かなければならなかった自分の子供たちを見ていたので、私は、そういうことがとても大事だと思うのです。 そういう日常の体験が知らず知らずのうちに積み重なって、「自分はこの社会の価値ある存在だ」という(無意識ではあるけれど)自分を奥底で支えてくれる大事な基盤が子供の中に作られると私は思っています。 それが出来ない子供がどれほど苦しいか、私は目の前で見てきました。  

もし、子供が興味を持っているそういうことを犠牲にしても、英語をさせるのでしたら、私はそれは勧められないと思うのです。  アメリカから帰って来てここで英語を一生懸命やらせても、それで、子供が社会から対価として受け取るものは何もありません。  もし、英語に興味がなかったらそれは苦痛以外の何物でもありませんね。

子供は自分が「生き生きと出来る場所」、「生き生きと出来ること」、そういうものを本能的に感じとる能力を持っていると思います。  それが感じられないことを、長期間やらなければならないように仕向けると、自分が何によって生き生きするのか(それをするのが好き、面白い、興味がある、と感じることです)、自分でもわからなくなってしまうのではないか、と私は思います。

数年前、ある大学で、英語学習の世界では有名なゲストの方々のお話を伺う機会がありました。  お話は興味深いものでしたが、私が一番印象に残ったのは司会をされた大学の先生の言葉でした。  「今の学生さんは、ほめられるから英語をする。  という方がとても多いです。  だから、先生テストやって。  という学生さんもいます。」ということでした。  自分の進路や職業は「ほめられるから」ではなく、「自分がそれが好きだから」選ぶ方が、本人にとって、幸せではないか、と思いました。

また、そのほうが、本人が内に持っている力も発揮されます。  自分の好きなことだと、誰も考え付かないようなアイデアが浮かんできたり、普段の何倍も力を発揮する子もいます。一人一人の子がそうやって、自分の持っているものを外に表してくると、社会全体にとっても、大きな価値になります。  「ほめられるから、それをする」というのであれば、「ほめられなければ、それをする気にはならない」ということですね。  それは、「ほめてくれる人に依存している人生」です。  自分の進路や職業は「ほめられるから」ではなく、「自分がそれが好きだから」選ぶほうが、本人にとって幸せです。

そして、自分が、何が好きかは、小さい頃から、自分のやりたいことを一生懸命やることによって、わかるようになる、と私は思います。  「興味ないけど、やっておいた方が将来、有利だから」そういう理由で、何でもやっていると、本人も何をしている時が楽しいのか、わからなくなってしまうのではないかと思います。  それは、人的資源、という観点からみても、社会にとって、大きな損失だと思います。    

小学校でアメリカから帰国して、大人になっても大人の言葉で流暢に英語をしゃべっている人がいたとしたら、それは本人の努力によるものだと思います。 

英語が好きな子は親が何もしなくてもそういう風に自分の道を選択していきます。  私も親ですから、子供によいことをやらせたいという気持ちはわかります。  でも自分の意志で学ぶ中学生になってからでも発音は十分身に付けられますし、発音以外の分野であれば、自分の意志で学ぶ中学、高校、大学で努力して十分伸びます。

それを知っていると、「子供の英語力を上げたい」という親御さんの気持ちに必ずしも添えないお答えになってしまうことがあって、私も心苦しい時があります。  きっとお子さんが高校生くらいになられた時、私の言ったことを理解していただけるのではないかと、思っています。

低学年の帰国子女はそれでなくても、ある意味で、小さい頃を「不自然な」環境で育ってきました。  帰国してからも、英語ばかりにこだわって、「不自然な」環境にならないよう、私は注意してきました。  なぜなら、「当たり前にあるはずのものがない」という環境の影響は子供のどこに出るかわからない、という経験をしてきたからです。(これについては2011年10月17日のブログの最後にある「幼児英語教育について」に書きました。)  せっかく「当たり前にあるはずのものがある」環境、つまり日本に戻ってきたのですから、そこで、今まで広げられなかったもう一つの翼を、大きく伸ばしてあげたらいいのではないかと思います。 

「自己の発見」それはもう、子供の時から始まっている、と私は思います。 成績や損得に関係ない小さい頃、子供が「楽しい」と思えることに没頭することによって、それは育つと思います。  大人になっても「ほめられたいからそれをする」では、誰もほめてくれなければ、それをする気にもならないということですね。  それでは、ほめてくれる人に依存している人生と同じですね。  

「誰もほめてくれなくても、自分がやりたいからそれをする」そういうほうが、いいと思います。  子供も伸びます。  そして、そういう感覚をもつ土台ができるのが、小さい頃の過ごし方だと思います。  その子が何をやっている時、楽しそうか、生き生きしているか、見てあげてください。  そしてそういうことをする時間を犠牲にして、英語を習わせるなら、それは、勧められないと、私は思います。

今回のご質問者の方は、そういうことも理解してくださって、私はとてもうれしいと思いました。  



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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)


高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。

現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。

文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。  導入されれば教育現場は大変迷惑します。  中止する必要があります。  なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。

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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。  私はとても困っています。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 

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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。