川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

英語の早期教育が有効だと錯覚させる2つの誤解(その1)

今日から3回に分けて「英語の早期教育が効果がある」という誤解について説明して行きたいと思います。

英語の早期教育が効果があると思っている人は2つの点で、大きな誤解をしています。

誤解1 臨界期仮説に対する誤解
誤解2 ヨーロッパの英語教育に対する誤解  

誤解1  臨界期仮説に対する誤解

臨界期仮説が唱えられた研究では、子供のころに母国語並みの大量の英語のインプットがあった場合を取り上げています。 

英語を習得するとき、アメリカやカナダにいる子供のように、母国語並みの大量のインプットがあった場合とない場合の違いを考えてみれば、日本での早期教育が発音習得には全く効果がないことがはっきりわかります。 日本では、母国語並みの大量の英語のインプットがないからです。

私の息子はシカゴで3歳から7歳まで、学校(幼稚園)で大量のネイティブの発音を聞いていました。  だから息子は聞いた音と同じ発音で、話し始めたのです。  

日本で、小学3年生から英語の授業をしても、週に数回英語を聞くだけでは発音はまったく子供の体に蓄積されません。  いくら子供は耳が良いと言っても英語の発音が耳の中に大量に蓄積されていなければ、ネイティブと同じ発音で話し始めることはありません。  子供でもある期間にわたり、大量の英語を聞かなければネイティブと同じ発音になることはありません。 2012年12月14日のブログ「駐在員のお父さん、無理なことを子供に言わないで。」を読んでいただけば、ある期間大量に英語を聞かなければ子供でもネイティブ並みの発音で話せないことがわかります。

「子供が学べば無条件にネイティブ発音になる」という思い込みをまず、捨てる必要があります。  どのくらいのインプットがあったのか、冷静に考える必要があります。
無条件に「子供=ネイティブ発音」と思い込むことは幻想です。  これがどんなに魅力的でも、英語教育を考える場合は、この幻想から抜け出す必要があります。 この幻想に浸って、「子供の時期に教えれば無条件にネイティブ発音になる」と指導者が盲目的に信じた場合、インプットの問題(つまり自分の耳で発音を聞くことの大切さ)など、英語教育に本当に必要な要素が見えなくなってしまいます。

アメリカやカナダで、日常的に大量の英語を聞いている子供と、日本で、週に数回しか英語を聞かない子供が、同じ発音を習得できると考えること自体、大変な間違いです。  前提条件の違いをしっかり認識しましょう。  体の中に蓄積されていない音はいくら耳の良い子供でも同じには言えないのです。

実際、日本で英語を習っている小学生の発音を聞くと、私は、「子供というのは大量に英語を聞いた場合はそっくりに文章を発音しますが、少ししか聞かない場合は、かたくなに、英語の文章のリズムが体に入るのを拒んでいるのではないか」と思うほど、子供は英語のリズムでしゃべることができないものなのだ、と感じます。 子供は確かに耳はいいと思いますが、文章のように音が長くつながった場合、大量の英語を聞かないと、把握しきれないのではないかと思います。

私がシカゴにいた時は息子の友達がよく家に遊びに来ました。  また、ニュージャージーにいた時は、娘がバスケットボールチームに入っていたので、試合のたびに会場でたくさんの子供の英語を聞きました。

私がいつも感心したのは、子供が話す英語の文章のリズムが非常に生き生きとしていることでした。  日本で英語を習っている小学生のリズムは、等間隔で切れる、日本語のリズムです。  強弱のリズムで流れるようにしゃべるネイティブの子供とは全然違います。  子供は耳はよいかもしれませんが、大量に聞かない場合は、文章のように長くつながった発音は、音もリズムも把握できないのではないか、と思うほど、日本語のリズムにしっかり置き換わった英語で話しています。  

子供の立場になって考えてみると、英語を大量に聞いていませんから文章の発音を真似しようにも、耳の中に文章の発音がないのでしょう。 その結果、子供は真似すべき音がないので、一つ一つの音を先生に教えてもらった口の形で言うことだけに一生懸命なのでしょう。  

結局、外国語の文章は「“外から”教えたように発音させる」ことをしても、文章全体をネイティブとそっくりに言えるようにはならないのです。  自分の耳で聞いて、自分の体の中に蓄積された音を「“内から”聞こえたように発音する」練習をして初めて、ネイティブと同じ発音で文章をしゃべれるようになるのです。

(来週に続きます。)


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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)



高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。

現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。

文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。  導入されれば教育現場は大変迷惑します。  中止する必要があります。  なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。

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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。  私はとても困っています。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 

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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。