川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

文部科学省の方針(小学校から英語の授業)を実施したので、小学生がカタカナ発音で話しています。(3)

保護者の皆さんの中には「小学生のうちに学校で英語発音を教えてくれないのなら家庭で発音を習わせに行かせなければならないのか」と心配する方もいらっしゃると思いますが、その必要はありません。  小学生のうちに発音を習いに行っても、結局、大人の先生の言うとおりの口の形でしゃべる練習をすることになり、自分が耳で聞いたとおりに文章を喋るわけではありません。 

結果は、教える先生がこうだと思っている発音で子供はしゃべることになります。  つまり、発音を教える大人の耳のレベルで聞いた発音になる、ということです。  その先生が子音の日本語化が聞き取れなければ子供も日本語化した子音でしゃべることになる、ということです。

また、文章で発音する時、英語のリズムで文の最初から最後まで、流れるように話せるようにはなりません。  日本語の等間隔のリズムで、単語一つ一つをつないで話すようになります。 

先にも述べたように、文章の発音は自分の耳で聞かないかぎり同じに言えるようにはならないからです。  小学生は、「ある程度の長さを持った文を聞いて同じ発音で言う」ということが私が今まで、聞いた限りでは、できないようです。  (単語が5個くらいの短い文なら、違和感のない発音でしゃべっているのは、聞いたことがあります)

英語圏に連れて行かれた子供のように毎日大量の英語を聞けば、小学生はネイティブ並みの発音になるかもしれませんが、週に1,2回しか聞かない英語でネイティブ発音にはなりません。  外国語学習というのは母国語と違って、聞く量がせいぜい数十回から、多くても数百回です。

一方で、中学1年生は大人の発音の先生より音はよく聞けます。  そして聞いたとおりに発音するのも上手です。  特に英語のリズムで文章を最初から最後まで流れるように発音するのが上手です。 

ですから、中学1年生の良い耳を使って、文章丸ごと聞いたとおり発音する練習をすることにより、ネイティブに近い発音が身に付きます。  中学1年生の良い耳、「自分の耳」を使うことがポイントです。  先生に言われたとおりの口の形でしゃべることを練習している小学生より、ずっとネイティブに近い発音が身に付きます。  発音練習は、「自分の耳で音を聞くこと」が最も重要だからです。  

自分の耳で音を聞けるようになると、ナチュラルスピードの英語もネイティブに近い発音でしゃべることができるようになります。  中学時代に「耳で聞いた通りに文章を発音する」この能力をつけることにより、将来、ナチュラルスピードの英語もネイティブに近い発音で話せるようになります。

ですから、小学生で発音を習いに行かせるより(つまり、他人の言う通り発音させるより)、中学生で、「自分の耳で聞いた通りしゃべる」能力を身に付けさせた方がネイティブに近い発音になります。

「母国語習得」と「外国語習得」は違います。  せいぜい数十回しか聞かない、英語の音を「聞いて同じ音で言う」というのは大変緻密な練習が要ります。  外国語というのは、少し学習が進めば、現在完了や関係代名詞など、文の構造も複雑になりますし、内容も実物より知的世界だけで、理解することが多くなります。  外国語を意味が分かって発音練習をする、となると、それなりに理解力もいります。  

意味も分からず、発音だけ教えても英文を英語のリズムで「流れるように」しゃべることは出来ません。 (発音の先生は、一応意味を説明しているのかもしれませんが、まだ、そういう難しい文の形で表現するということが、十分理解できないのでしょう) 意味を勉強せず、発音だけ習っている小学生の発音する文章を聞いていると、それが子供にとって、「ことば」にはならないのがよくわかります。  ただの音をつないでいるだけです。  そういう意味では、本格的な英語学習が始まる中学生に、きちんと発音を教えた方が、発音習得の効果が高いということです。

理論上、どんなに早期教育が有効なのか、知りませんが、この小学生の発音を聞いてもなお、文部科学省の「小学校から英語の授業」を支持される英語教育の専門家がいらしたら、そういう方はもう一度大学にもどられて、「音声学」の授業を再履修することをお勧めします。

少なくとも、カタカナ発音と英語の発音の区別が自分の耳でできるようになってから「小学校からの英語教育」を論じていただきたいと思います。  カタカナ英語と正しい発音の区別もつかないで、小学校の英語教育を論じるのは無理です。

早期教育は世界のトレンドだ」とおっしゃっても、日本人は欧米と同じやり方では通じる発音は身に付けられません。  この小学生の発音をお聞きになればお分かりになるでしょう。  

ちなみにアメリカにいた時、娘の学校の外国語の授業(スペイン語)は7年生から始まりました。  7年生というのは日本の中学1年生です。  

英語教育の専門家なら、せめて自分の耳で、カタカナ発音と正しい発音の聞き分けが出来るようになってから、「小学校の英語教育」を論じていただきたいと思います。

どんなに欧米の早期教育の資料を集めようと、学者の早期教育の研究を上げようと、自分が英語教育の専門家なら、子供たちのこの発音を聞いた瞬間に、小学校からの英語教育が是か非か、即座にわかるはずです。  英語教育において、カタカナ発音の定着はいかなる場合でも不可です。  こういう発音を「英語だ」と思っているから日本人の英語は通じないのです。  英語教育の専門家なら、それが即座にわかるはずです。

8月29日の日本経済新聞朝刊の17面に「大機小機」というコラムがあります。 「そして日本人がいなくなった」という題で書いてあり、最後の部分に次のように書いてありました。  引用させていただきます。

今夏開かれた米コロンビア大学の研修講座で、参加した東大生のプレゼンテーションに「何を言っているのか解らなかった」との厳しい見方があった。  日本の一流大学の学力向上に今日から取り組まなければならない。

私はこれを読んだ時、そのアメリカ人には、文字通り、「その東大生の英語発音が理解できなかった」のではないかと思いました。  なぜなら日本人が英語を話すと、「何を言っているのかわからない」とアメリカ人がいうのは、よくあることだからです。

日本の経済界の人や科学者が、記者会見やインタビューでしゃべっていると、英語でしゃべっているのに、テレビには英語字幕が出てくるのを私は何度も見ました。  アメリカにある日本の施設の記念行事に日本から来た人が英語でスピーチしたら、終わったときにアメリカ人が「日本語と英語はよく似ているんですね」と言ったことも聞きました。

また私自身も、最初の本を出した翌年、インターネットに載っていたフォニックスを習っている小学生の英語をアメリカ生活が長い萩原理恵先生に聞いてもらったことがありました。そうしたら先生は「ごめんなさい。  私、この子がなんて言ってるのか全然わからないの」と言われました。  私自身が非常にわかりにくい発音だと思ったので、先生に聞いてもらったのですが、やっぱりそういわれてしまいました。フォニックスを習っているお子さんは一つ一つの音の発音の仕方は先生の言ったとおりに発音しているのかもしれませんが、文を最初から最後まで聞いて、聞いたとおりに発音する、という練習はあまりしないのでしょうか。 長い文で全体を聞いたとおりに発音するのは無理なのかもしれないですね。

こういうことは、その人に失礼になりますので、聞いても、他の人には言えないことです。(だから日本人は知らないと思います。)  けれども、日本人の英語は日本の外に出たら(日本人の英語を聞いたことのない人には)、通じない場合が多いです。  通じたとしても、非常にわかりにくいと思うようです。  

今、小学生が授業でしゃべっている発音をそのままにしておくと、こういう通じない発音をする子供たちが日本中にあふれてきます。 

日本に来たアメリカ人は一生懸命、日本人の英語を理解しようとしてくれますし、日本人の英語に慣れて来ることもあって、わかってくれますけれど、日本人の英語を聞いたことのない人には日本人の英語は通じない場合が多いです。  通じても非常にわかりにくいと思うようです。 
 
理由はいくつかあるでしょうが、「子音が聞こえないこと」が一番大きいと思います。  子音の大部分が聞こえなかったら何を言っているのかわかりません。  

日本人は日本語の子音の言い方が世界共通の子音の言い方だと思っていますが、そうではありません。(詳しくは「帰国子女に見る世界に通用する英語力の作り方」に書いてあります)

日本人の英語を通じるようにするためには、子音が聞きにくくなる理由をきちんと理屈で説明して、生徒自身が意識的に長い子音を自覚して、発音できるようにしなければ解決できないことです。 
 
小学生に何もわからないまま、ただ英語をしゃべらせていては、解決できない問題なのです。   

「とにかく子供に英語をしゃべらせていれば、正しい発音になる」というのは、アメリカやイギリスにいる子供の話です。  毎日洪水のような大量の英語を聞いている子供たちの話です。  まったく英語を聞くことのない日本で、こういう英語教育をやっているから、日本人の英語は、いつまでたっても、日本の外では、通じない発音になってしまうのです。  「子供が英語を学べばネイティブ発音になる」という思い込みは臨界期仮説を誤解して、年齢の部分しか見ていません。  インプットの量の問題を忘れています。

* * *

日本の教育をつかさどる文部科学省が、「小学生、中学生、高校生がみんなカタカナ発音になる英語教育の方針」を現場の先生方の反対を押し切って、実施してよいのでしょうか。  

小学3年生から英語の授業をする、ということは小学3年生から「カタカナ発音の定着をはかる」ということですね。  

小学校で習得したカタカナ発音を、中学、高校の「英語の授業を英語で行って」、さらに強化、定着させるわけですね。  こうして日本の外に出たら通じないカタカナ発音が、延々と日本人に受け継がれていくわけです。

文部科学省の方針は、実施前から失敗することがわかります。  
カタカナ発音の小学校の英語教育は、すでに失敗しています。
この子供たちの発音を聞いてもなお小学校からの英語教育を推進したい英語教育の専門家がいらしたら、どうぞ、もう一度大学に戻られて、音声学の授業を再履修なさってください。 ONEの「ン」の発音と日本語の「ワンワン」の「ン」の発音の違いも区別できないで、英語教育を論じるのは無理です。 特に、日本人の英語を通じるようにする英語教育を論じるのは無理です。

(明日は、短く補足をします。)

* * *




====================================


高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

====================================


英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)




高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。

現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。

文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。  導入されれば教育現場は大変迷惑します。  中止する必要があります。  なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。

* * *

何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 

* * *

* * * 


クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。