川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

高校時代は「日本語頭」から「英語頭」に切り替える練習をします

(高校時代のスピーキング指導についてはこのブログの中ほど、青字の部分に書いてあります。
英語と日本語の語順はまったく違います。  日本語から類推しても、英文はわかりません。  英語は母国語との類似性を使って教えられないのです。  そういう場合は、日本語とは全然違う英語の文章の構造を生徒が理解できるまでよく説明します。  説明は高校生が唯一理解できる言語、日本語で行います。 彼らが最もよくわかる日本語で、英文の構造を丁寧に説明します。

高校時代は、中学での簡単な文からスタートして、大学受験に出題されるような大人の文章までを読めるようにしていくわけですから、扱う文章も難しくなります。  これを正しく構文をとって読めるようにするのは大変ですが、細部まで、一つ一つ確実に意味が分かるように日本語で説明していきます。

語順の違う英語を彼らがよく知っている日本語に照らし合わせて説明するわけですから、後ろから矢印を引いて、修飾の関係を示したり、( )でくくったりすることもあります。  それはよく理解させるためには必要なことです。  そうすることによって生徒は、日本語と英語の語順はどう違うのか、正確に理解できます。

高校の授業を英語だけで、やって行くと、フィーリング読みする生徒が多くなります。  フィーリング読みというのは、「どれが主語に対応する動詞か、関係代名詞が何を修飾しているか、そういう文法的なことは何もわからないけれど、なんとなくこういう意味ではないかな、と思う」そういう読み方です。  (詳しくは2012年6月21日のブログ「英語はフィーリングで読まないで」をお読みください)  これを高校時代にやってしまうと、英語力はそこでおしまいになります。

2013年5月19日のブログ「高校生の皆さんへ」をご覧ください。  これは私が実際にお教えした方の例です。  高校時代、構文をとって読むことを習わなかった彼女の英文の読み方はフィーリング読みでした。  大人になって構文を勉強しても、実際に新聞の文章を読み始めると、なかなか構文に気づくことができませんでした。

複雑な文章を読み始めるスタートの時から、どんなに面倒でも、構文をきちんと押さえて読む努力をしないと、英文の構造をとらえるセンサーは働かなくなる、ということです。  ですから文の構造は生徒がきちんと理解できる日本語で教えます。  「英語で授業をやっても彼らはわかっている」などと思っていると、どんどん難しくなる英文に、フィーリング読みでは歯が立たなくなります。

「母国語で正しく英文の構造を理解する」  ここまでが高校の英語学習パート1です。  ここで終わりにすると、今までの訳読式授業と同じです。 

次にパート2に入ります。  パート2ではパート1で、細部まで、完璧に理解した文章を、今度は、語順の通り、前から音読して、意味をとる練習をします。  つまり、その英語を書いたネイティブが考えたのと同じ語順で英文を理解する練習をするということです。

ここで、生徒たちは、日本語の枠組みで理解した英文を英語本来の語順で理解できるようにします。  日本語の枠組みから出て、新しく英語の枠組みで理解する練習に入るわけです。  これは生徒にとって、新しいスキルを身に付けることになります。

新しいスキルを身に付ける時、自分が熟知している教材で行うととてもよく身に付きます。

娘が腕を手術した時(2014年4月24日のブログに書きました)、リハビリをしてくださった鍼灸師さんは、私の昔からの友人ですが、とても点字を読むのが速い人でした。  大人になってから目が不自由になられたのですが、とても点字を読むのが速いので、「どうやって練習したのですか」とお聞きしたことがありました。  そうしたら、「よくわかっている文章を何度も点字で読んで、わかるようにしていったんだよ」と教えてくれました。  彼は文学が好きで夏目漱石の「草枕」は暗記するくらい読んでいたので、点字の「草枕」を何度も読んで練習したそうです。

自分がよくわかっているものを題材に、新しいスキルを身に付ける訓練をすると、とてもよくできるようになるということです。

「英語で考える」という指導法の提唱者も7年間日本語訳を使って勉強した後、英語のまま理解する練習をするのに、最初に日本語訳を使って学んだReader1から始めた、と書いていました(「英語で考える本」松本亨 英友社 67ページ)。  やはり、内容のよくわかった教材で、新しい方法を練習したので、やりやすかったのだと思います。  

ですから、高校生が、英語の語順のまま理解するスキルを身に付けるのは、学習が終わって、意味、構造ともによくわかるようになった英文を音読しておこなっていきます。  これがパート2の練習です。  従来の訳読式授業で、やめないで、ここまでおこなってください。 学校では時間の関係で数回しか音読できないと思いますが、あとは家庭学習で何回も音読してください。 高校時代の私は授業で学習が終わったレッスンを何回も家で音読していました。 日本語の枠組みで理解した英語が、だんだん英語本来の語順で理解できるようになります。 この段階(家庭学習で何回も音読する)まで学習したレッスンなら、終了後、小さなグループに分けて、「このレッスンで読んだことについての感想」などを言わせてみてもほとんどの生徒が英語で言うことが出来ます。 よく、対立する意見でディスカッションさせる方法が高校生の授業で言われますが、私はあまりそれには賛成できません。 発音がまた乱れるからです。 学んで、練習して、文章がほぼ頭に入り、口で言うことも上手になったものを使ってしゃべらせるほうが正しい発音の定着には効果があります。 ディスカッションで出てきた新しい視点に基づいて自分で新たに文章を考えてしゃべるとどうしても発音は乱れてきますし、スピーキングはたどたどしくなります。  それよりは、自分が練習した文に近いもので、しゃべらせる機会を与えたほうが生徒は「スラスラしゃべれる」という体験をしやすくなります。 また、レッスンの内容について、二人一組で、生徒が英語で質問し、相手が英語で答えるような練習もこの段階でしたら、スラスラ英語でしゃべれます。 スピーキングも練習の後は「スラスラしゃべれる」という「成功体験」を生徒に味わわせた方が効果的です。  スピーキングを評価する場合はこの活動の際、教師が評価をするようにします。 そのレッスンの内容を発音練習した生徒が自分の意見を言ったり、二人一組で英問英答をしたりする活動を見ながら教師が評価をします。 高校3年間この評価を行えば、決して偏った評価にはなりません。  スピーキングは、実際に口を動かす活動ですので、練習した生徒としない生徒の差はよく表れます。   

「語順の通り読む」具体的な読み方については、著書「続・英語発音、日本人でもここまでできます。」93ページ、「語順の通りに読む」という項目に詳しく解説してあります。  
この音読練習をすると、英語理解のスピードが速くなります。  語順の通り、英文を処理していきますから、文を戻ることがないのです。  (「続・英語発音、日本人でもここまで出来ます。」は発音の本なのですが、この語順の通り、英文を読む具体的な解説が英語処理のスピードを上げるため、大学入試で役に立つのか、高校英語の参考書のところにおいてある書店さんもあります。  この読み方を身に付けると、英文処理のスピードが圧倒的に速くなりますので、入試では非常に有利になるからでしょう。 これについては2015年9月28日のブログも参考になさってください。)

また音読することにより、リスニングの能力がとても上がります。  聞こえてきた順番に英文が理解できるようになるのですから、当然でしょう。  音読がリスニングの能力を上げることはこれまで本にもブログにも何回も書いてきたとおりです。  高校生はここで、日本語頭から英語頭への切り替えを行います。  これが英語力の基礎になります。音読の際、発音は中学で習得していますので、問題はありまん。

高校生は中学校で習った、簡単な日常会話のような文章はすらすら言えます。  ですが、高校で習うような長く、複雑な文を言おうとすると、まだ、たどたどしくなります。  ですから学習が終わった英文を音読して、そういうレベルアップした文章もすらすら言えるようにしていきます。

長い文章、難しい単語の入った文章も、語順の通り、意味を理解しながらすらすら読むことによって、発音のレベルも上がって行きます。 高校時代も常に正しい発音を維持しながら、英語をスピードを上げて音読できるようにして行きます。  速く音読できるということは、頭の英語処理のスピードが速くなる、ということで、いいことなんですが、くれぐれも、正しい発音を維持する、ということは忘れないようにしてください。  速度を上げると、単語ごとに短く音を切る癖が出てくる場合がありますので、滑らかにつなげることも忘れないようにしてください。  高校の難しい文章を読むようになっても、音声の練習からは、離れません。 

「中学時代に正しい発音を身に付け」、「高校時代に語順の通り理解しながら、すらすら音読できる」ようになると、リスニングに関しては、学校で行われるテストで難しいと感じるものは、ほとんどありません。  ただ、高校時代は、語彙を増やすことも必要です。  中学時代までは教科書の勉強で十分なのですが、高校時代は、教科書以外の英文も自主的に勉強して、いろいろな英文に当たり、語彙を増やす努力もしてください。   

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もし発音を習得していない高校生は、夏休みや冬休みなど、時間のある時に基本の発音と易しい文章の発音を習得してください。  私は「英語発音、日本人でもここまでできます」という本の中で、基本の音の発音練習を1か月行うよう練習を組んでいますが高校生の場合は口の筋肉がまだ柔らかいので、一通り、基本の発音を勉強したら、すぐにやさしい文の発音練習(中学1年生レベルの文)に入って結構です。  その後は、文の中に出てきた単語で基本の発音を復習しながら文章の発音練習を行ってください。  「発音練習」というのは、聞いた通りの音で発音する練習をすることです。  自分の耳で音を聞かず、先生に言われた通りの口の形をしてしゃべることではありません。  言われた通りの口の形をしてしゃべる練習をしていると、ナチュラルスピードの英文をネイティブに近い発音で言うことは出来ません。  「聞いた通りに発音する」この、耳と口のつながりを作って行くことが発音練習です。  そうすると、ナチュラルスピードの英文をネイティブに近い発音で言うことが出来るようになります。  自分の耳でよく発音を聞いてください。
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この後大学生の段階で、大量の読書に入ります。  その時、構文が取れないままフィーリング読みで大量の読書をしても、「意味を成す英文を頭の中に構築する能力」は育ちません。  構文がわかって、読むから、自分のいいたいことを「意味を成す英文に構築する能力」が育つのです。

高校生は正しく構文をとって読めるようにすることが最も大事な課題です。  それを英語の語順の通り読んで、正しく意味がわかるようにしていくことが、大事です。  ここで、日本語頭から、英語頭に移行します。

私は日本人が英語を身に付ける時、非常に難しいのが、「発音」と「英語の語順でしゃべること」だと言いました。  発音は中学時代に身に付け、語順の基礎は高校時代に練習していきます。  

「日本語を話している時は文法など気にしていない、英文法など自然に身に付ければいい」という方がいます。  けれども、生まれてから高校生になるまで、日本語と同じ量の英語を聞いて、話してきた高校生はいませんので、文法はきちんと教えなければなりません。  日本には、文法を学ばなくても英語でしゃべれるようになるほどの大量の英語のインプットはありません。

中学校で英語で授業をすれば、生徒は正しい発音で話し始める、
高校で英語で授業をすれば、生徒は高校レベルの文章を正しい発音で話し始める

こういうことは現実にはありません。  発音も文の構造(文法)もきちんと生徒に教え、練習させなければ身に付きません。  日本には、発音も文法も自然に身に付くほどの大量の英語のインプットはありません。

私は文部科学省の方々は「生徒の発音習得にどのくらいの期間がかかるのか」「語順の通り理解する練習にどのくらいの期間がかかるのか」ということをまったくご存じないのではないか、という気がいたします。

英語指導の実際をまったくご存じない方々が、日本の中学、高校の英語教育の方針を決めるということは、恐ろしいことだと思います。  日本中の中学生や高校生がカタカナ発音でしゃべり始めるからです。    

高校で習う英文は構造も語彙も難しいですから、カタカナ発音の上に、たどたどしさが加わります。  そうするともう、日本の外では通じません。


新国立競技場はプランを変更することができますが、英語教育は、その方針の下で、中学、高校時代を過ごしてしまった子供たちは、「その方針では間違っていた」と分かったときには、もうその時代には戻れないのです。

文部科学省は、文字通り取り返しのつかない過ちを犯しているのです。  高校の授業を英語で行う方針はすでに始まっていますが、即刻、やめるべきでしょう。  複雑な英文の構造を理解することは、日本人にとって、とても難しいことなのです。  よくわかるように日本語で説明し英語の語順の通り意味をとる練習をしなければ、身に付けることは出来ません。  

「英語で考える」という方法を提唱した人でさえ、7年間は、日本語訳を使って学んでいたのです。(「英語で考える本」松本亨 英友社 67ページ)  学習開始4年目で、「英語で授業」は、フィーリング読みの生徒を増やすだけです。  もう一度2013年5月19日のブログ「高校生の皆さんへ」をお読みください。  きちんと文の構造を教えてもらわなかった高校生が、その後、どれほど苦労するか、よくお分かりになると思います。

その時期に教えなければ、後からでは身に付かないものがあるのです。  それが、高校生の時期に身に付ける英文の構造を理解しながら、語順の通り読む能力です。

文部科学省は生徒にもっと英語をしゃべらせたいのでしょうが、通じる英語をしゃべらせるためには、そのために必要なことを一つ一つ確実に、生徒に身に付けさせていかなければなりません。  発音も、文の構造も、身に付けるには一定期間の練習が要ります。  中学生、高校生が10年以上、毎日使っている日本語とはまったく異質の発音と語順で話せるようにするのです。  これは大変なことなのです。  必要なことはきちんと教え、練習させる、現実的な解決を図っていただきたいと思います。

私の発音の生徒さんの中に、大学の英語の先生がいました。  私がフィーリング読みの話をしたら、「今の学生は、構文が取れない人が多いですよ」とおっしゃっていました。  今でさえ多いフィーリング読みの生徒をこれ以上増やさないためにも高校の授業を英語で行うことは、今すぐにやめていただきたいと思います。  生徒にとって、その時期にやらなければならないことをしっかり教え、練習させてください。  そうしないと、取り返しのつかないことになります。  生徒がかわいそうです。

その指導法に欠陥があると知らないで採用したならまだしも、「これこれこういう害がある」と具体的に指摘を受けたにもかかわらず、何の検討も、対応もとらないということは、「問題を知りながら放置した」ということですので、罪は一層重いと思います。  高校の英語の授業を英語で行うことは、なるべく早く、9月の新学期から中止するべきでしょう。  高校生にとって高校時代は今、過ぎてしまえば、2度と返ってこないのです。  高校時代に学ばなければならないことをしっかり学ばせてあげてください。

中学時代にネイティブに近い発音を身に付け、
高校時代にネイティブが考えているのと同じ語順で読んで、正確に意味が取れる力を身に付ける。
こうして、生徒達の英語力は完成に近づいていきます。

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日本で「英語を英語で理解する」という指導法を初心者に行うことの無意味さについては2015年12月5日のブログセミの抜け殻」も合わせて参考にしてください。

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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)




高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。

現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式はヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。

文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。  導入されれば教育現場は大変迷惑します。  中止する必要があります。  なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。

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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 

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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。