川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

文部科学省の方針(小学校から英語の授業)を実施したので、小学生がカタカナ発音で話しています。(1)

Youtubeに小学校の英語の授業の様子が載っています。  どうぞご覧下さい。  出来れば、ヘッドフォンをつけて子供たちの発音をお聞きください。  

これらの授業の中で子供たちが話している発音は、英語の発音ではありません。 カタカナ発音です。  

ネイティブの先生と授業をやっているのに、なぜ子供たちの発音がカタカナ発音なのかというと、週に1時間だけ英語の授業をしても、発音はネイティブのようにはならないからです。

それでは発音のどこが違うのか、説明いたします。

例えば英語で数字の1のことを One と言います。  この発音を教える時は、最初がWの発音ですので唇を小さく丸めて息を送り「ウ」と発音します。  それから「ア」の母音に移り、最後のNを発音します。  Nの発音は舌の先を上の歯茎に付けて息を送り「ン」と発音します。

小さい子が犬のことを「ワンワン」と言いますね。  この「ワンワン」という時の「ン」は、舌の先が上の歯茎についていません。  こういう発音の仕方ですと英語のNの発音には聞こえません。  舌先を上の歯茎にしっかりつけて「ン」と発音するよう指導します。 (詳しくは、著書「続・英語発音、日本人でもここまでできます。」153ページ、付属CDトラック8で説明していますので、そちらを参照してください。)

Youtube の小学校の授業で子供たちが話している英語にはこういう英語の子音の音がほとんどありません。  THのように英語の発音に聞こえる音もありましたが、ほとんどの音が日本語のカタカナで代用された発音です。  「小さい」という意味のLittle という単語の発音は「リトル」ではありません。  最後の「L」の次に「ウ」という母音を入れないで、「L」の発音で終わりますので、日本語の「ル」のように聞こえることはありません。   

また、母音についても、例えば、Card と Curd の発音は日本人にはどちらもカードと聞こえますが、英語ではこの2つの単語の中にある「アー」の音は区別して発音しなければなりません。  母音が違うと意味が違ってくるからです。  子供たちの発音には母音の区別もありません。

つまりこれは、英語の発音ではなく、日本語のカタカナで代用したカタカナ発音だということです。

「そんな細かい音の違いはどうでもいいじゃないか」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、日本人にとって「そんな細かいこと」でも、英語を話す人にとっては、通じるか通じないかを左右する重要な問題となるのです。

こちらのブログに出てくるコロンビア大学の研修講座で発表した東大生が「何を言っているのかわからなかった」と批評されたのは発音が通じなかったからだと思います。  この発音のまま大人になったら、この子たちもそういわれるでしょう。          

どれくらい微細な音でも聞こえないと相手が「わかりにくい」と感じるかは2015年2月1日のブログを読んでいただくとわかります。  私の発音の生徒さんのWの音が日本語化したために、ネイティブに「わかりにくい」と言われた例です。  これほど微細な違いでも、「通じる、通じない」に影響するのです。

日本語の感覚で、「そんな細かい違いはどうだっていいじゃないか」と言っていると、通じる発音は習得できないのです。  大人になると相手に失礼ですから「あなたの英語は通じません」とは、ネイティブは言いませんし、留学した場合はクラスメートの英語がどうだこうだということは「言ってはいけないこと」と、アメリカ人は小さい時から教えられていますからそんなことは言いません。  その結果、日本人は自分の発音が聞きにくいと気づかないのです。

ですから、子音、母音とも、きちんと発音指導することが重要です。  今までの、日本人の発音が通じないのも「そういう細かい音の違いはどうでもいい」という発音練習をしてきたからでしょう。  日本語の発音を英語に持ち込んで発音練習をしてきたのです。  


ここまでお読みになった皆さんの中には、「子供のころ英語を習えば、ネイティブと同じ発音になるのではないですか?」と疑問を持つ方がいるかもしれません。  これは臨界期仮説を誤解しているからです。  詳しくは「帰国子女に見る世界に通用する英語力の作り方」という本の第2章に書きましたが、要点だけ申し上げますとこういうことです。

子供が、朝、8時に学校に行って3時に帰るまで、ずっと英語で授業を受けるような環境、どこにいても、周りで英語が話されている環境にいて、1年、2年と過ごした場合は、ネイティブ並みの発音になる場合が多い、ということです。  けれども研究結果を見ると100%ではありません。  私が見た資料では7割弱、5割弱の子供がそうなったということでした。

子供が、日常生活で、まったく英語を聞かない環境(日本)で、週に1時間英語の授業をしても、ネイティブと同じ発音にはならない、ということです。  6月1日のブログアメリカに連れて行った小学校5年生の娘でも、簡単なことを話すには1年、授業で話すようなきちんとした長い文章を話すには2年かかりました、と申し上げました。 

発音というのは、日本の赤ちゃんを見てもわかるとおり、まず、周りの人の発音をたくさん自分の耳で聞いて体の中に音を蓄積させていかないと、聞いた発音と同じ発音では話せません。  

週に1時間英語を聞く程度では、子供の体の中に英語の音の蓄積は出来ません。  そこで、子供は、自分の体の中にすでに持っている音、つまり、「日本語の音」で代用したカタカナ発音で話し始めることになるのです。  Youtubeで見る授業で生徒が話している発音は、ほとんど、そういうカタカナ発音です。  洪水のような英語のインプットがない日本では当然のことです。  

私は6月1日のブログで、文部科学省の方針を実施すると、中学生、高校生がカタカナ発音で話し始める、と申し上げました。  すでに文部科学省の方針が実施された小学校では児童がカタカナ発音で話している、という事実がここで明らかになりました。   

これは文部科学省が、「英語を“母国語”とする子供を教える方法を、英語を“外国語”として学ぶ子供に行っている」という間違いを犯しているからです。

まったく英語のインプットのない日本で、アメリカと同じことを週に数時間だけ子供にやらせても、ネイティブ発音にはならないのです。  子供が英語を聞く量(インプットの量)が全然違うからです。  つまり、文部科学省は日本とアメリカを混同しているということです。

日常生活でまったく英語を聞くことのない環境で発音を習得するには、きちんと発音の基本を教えなければ、子供たちは正しい発音を習得しません。  そして、そのための指導方法、練習方法があります。  2015年4月17日のブログに書きましたので、ご覧ください。   


学習者が、日常、英語を聞く環境にないところでの発音指導は、基本的な発音をまず、しっかり教えます。  その後、手当り次第に、いろいろなことを話させてしまうと、せっかく覚えた発音が定着しません。  そこで、まず、典型的な文に絞って、徹底的にお手本と同じように言えるまで練習していきます。  こうすると、正しい発音が定着します。  

この時、生徒に「自分の耳で聞いた通りに発音する」という方法によって、耳と口の能力を両方とも鍛えることが重要です。  文章の発音は先生が「こうしなさい」というとおりに発音しても、同じには言えないからです。  文章の発音は自分の耳で聞いた時、初めて同じに言えるようになります。

その結果、ネイティブに近い発音が習得できます。 

小学校で英語の授業をしてカタカナ発音を定着させるくらいなら、中学生にきちんと発音の基礎から教えた方が正しい発音が定着します。  中学生に、子音の日本語化などは理屈で、きちんと説明した上で、基本の発音を習得させて、家庭学習で正しい発音の定着を図った方が効果的です。  中学生なら家庭学習も一人でします。   

文部科学省は、英語におけるコミュニケーション能力の向上を目指して、改革を行ってきたはずです。  コミュニケーションにおいて最も重要なことは「通じること」です。 英語教育改革をして、小学生も、中学生も、高校生も、カタカナ発音になるのなら、英語におけるコミュニケーション能力はまったく身に着かない、ということです。  

この子たちが大人になると、日本はみんなが通じないカタカナ発音で話している国になります。  日本人同士は、そのカタカナ発音で通じるかも知れませんが、文部科学省が目指す「国際社会でやっていけるコミュニケーション能力」にはなりません。

ディベートやプレゼンテーションの練習をしても、発音が通じなかったら相手に何も伝わりません。  まず、日本の外でも通じる発音を習得させることが重要です。

「小学生に週1時間英語の授業をすればネイティブ発音になる」とか「中学校の英語の授業を英語ですれば中学生がネイティブ発音で話し始める」とか文部科学省は、あまりにも、現実離れした思い込みで、英語教育を考えています。  発音指導や、 実際の発音習得の過程をまったくご存じないように見えます。  上記のいずれも、生徒に身に着くのはカタカナ発音だけです。   

正しい発音指導と適切な練習のやり方で、中学校で習う英文をすべてネイティブに近い発音で、流れるように言うようにしてやることも出来るのです。  つまり、中学英語のレベルで完璧な英語コミュニケーション能力をつけてやることも指導の仕方を選べば可能なのです。

誰でも、小学校から英語を教えるメリットは発音だと思うと思います。  ところが実際には、「日常聞いていない」「日本語とは全然違う」発音は、週に1時間授業をしたくらいでは、とても子供達には身に着きませんでした。  子供たちのこの発音がそれを示しています。  子供たちの発音は、英語の発音ではなくカタカナ発音です。

私はこのことで、小学校の先生方に文句を言うつもりはありません。  小学校の先生方は大学で英語教育を学ばれたわけではありませんので、指導法がわからないのは当然でしょう。  むしろ、専門外のことをさせられて、とても負担に感じていらっしゃると思います。

明日に続きます。

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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)


高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。

現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。

文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。  導入されれば教育現場は大変迷惑します。  中止する必要があります。  なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。

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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 

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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。