川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

大学教育を英語で行うこと(2) 英語で4年間授業を受けても英語で思考するレベルはネイティブの大学生と同じにはならない。

私は6月1日のブログで発音は2年でネイティブと同じになった、と書きました。  それでは頭の中の思考活動は、何年で、英語で思考するネイティブと同じになるか?  というと、4年たっても同じにはなりません。

私の息子は4年間アメリカで学校教育を受けました。  4年目に指導してくださったライティングの先生が「太郎は高校で使う語彙を知っているから中学で習う単語を知っているかと思うと、時々知らないことがあるので、驚くことがあります」と言われました。


息子は高校になってからアメリカに来ましたからそれ以前の学年の授業は英語で受けていません。  ですからネイティブの子供が幼児、小学校、中学校で学ぶことを英語で学んでいませんので、こういうことが起こります。  娘が中学校の地理やサイエンスの授業で暗記していた用語の中には、高校生の息子が知らないものもたくさんあるでしょう。  考える時にその言語で、十分な語彙を持っていないということは足かせになります。

思考活動についても4年間では母国語と同じにはなりません。
アメリカに4年いたA子ちゃん(その時高校生でした)のお母さんがこういう話をしてくれました。

ディベートをするとき、A子はアメリカ人の子たちと同じことはまだできない、と言っていました。  アメリカ人の子は他人の意見を聞きながら同時にそれに対する自分の反論を考えられるそうです。  でも、A子は、聞くときには聞くことだけに集中しないとしっかり理解できないし、自分の意見をまとめる時には、そのことに集中しないと、論理的にまとめられない、と言っていました」

つまりまだ、A子ちゃんにとって英語がネイティブの子供たちと同じようになじんだ言語になっていないということです。

A子ちゃんは、小学校6年生を終了してアメリカに来ました。  私の息子は中学3年の時、アメリカに来ました。  二人とも大学生よりずっと若い年齢で英語圏に来ています。

そして、友人との付き合いや、買い物などの社会生活も英語で行いテレビも英語で見て、授業中、先生の質問に答えるネイティブの子供たちも毎日、見てきました。  そうやって、4年間過ごしても、英語はネイティブの子供と同じに使えるレベルには達していなかったわけです。  

全員日本人のクラスで、学校の外に出たらまったく英語を聞くことがない日本で、4年間、大学で英語で授業を受けても、ネイティブと同じレベルで英語で思考するようにはならない、ということです。  

まったく英語の話されていない国で、4年間、英語で授業をしても、英語での思考はネイティブのレベルにはならないのです。

もともと小学校、中学校、高校の授業を英語で受けていない大学生が、ネイティブと同じに英語で考えられるわけがないでしょう。

国際競争力を高めようと大学の授業を英語ですることを文部科学省は奨励しているようですが、こういう状態で、英語で、授業をしても、大学生が、アメリカ人の大学生と同じレベルで大学の学問を修められないでしょう。  (図1)を見ていただければ、どなたでも、それは納得できると思います。  こんなにインプットの量が少ない、不十分な言語で、高度な学問の習得は出来ないのです。

(図1)

=====アメリカの大学生===日本の大学生=====
文化      English       日本語
歴史      English       日本語
家庭生活    English       日本語
社会生活    English       日本語
幼稚園     English       日本語
小学校教育   English       日本語
中学校教育   English       日本語
高校教育    English       日本語
===========================
大学教育    English       English



英語で授業をすれば、その日から、英語で母国語のように考えられるわけではないのです。 長い時間をかけてその言語で行ってきた生活や学習や経験が蓄積されて、言語は身につき、適切に使えるようになります。  コンピュータゲームの言語設定のように「英語」に設定すればその日から自動的にネイティブと同じレベルで英語が使えるわけではないのです。  

そういう意味では母国語というのは、(図1)の左のカラムにあるすべて(文化、歴史、家庭生活、社会生活、幼児教育、小学校教育、中学校教育、高校教育)を行って来たのですから、すごい力を持っているわけです。  母国語が使えなくなって、初めて母国語のすごさはわかります。  

母国語では自由に思考ができます。  自分の思っていることは何でも言えます。  母国語が通じないところに連れて行かれた子供たちは、例えて言えば、翼をもがれた鳥のようです。  英語が母国語の子供は、英語で、自由に思考し、話せるのに、日本語が母国語の子供は英語では何もわからないし、何もしゃべれません。  (これについては、2015年7月7日のブログの中ほどにある***空っぽ英語頭から出てくるものは何もない***をお読みください。)

語彙も不十分、思考も不十分、これで、アメリカの大学生と同じレベルの学問の水準が維持できるか。  できませんね。  立場を変えて考えてみればわかります。

例えば仮に、アメリカで「中学から週に5回日本語の授業をして、大学生になったら、日本語で授業をする」と決めたとします。  そうしたら、アメリカ人の大学生は日本語で、大学レベルの学問の水準が維持できますか?  

フランスで仮に、「中学の時から週5回、中国語の授業をして、大学生になったら、中国語で授業をすることになった」とします。  フランス人の大学生は、中国語で、大学レベルの学問ができますか?

それと同じことです。

(続く)

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「言語と思考」の関係についてはいろいろな説がありますが、私はこちらのブログに書きましたような考え方に基づいて、「大学教育を英語で行うこと」のブログを書きました。 「思考が先で、言語はその思考にまとわされるだけ」という考え方では、「言語で思考の伝達」はできません。  言葉を聞いて、思考を構築できるからこそ、「伝える」「伝えられる」という双方向の伝達が可能になります。

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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)



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何度もお願いしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 


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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。