川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

日本語の子音の言い方にすり替わる例

8月1日のブログで、日本人は会話をするときに単語の最初の子音が、日本語の子音の言い方にすり替わるから、ネイティブにわかりづらい発音になると書きました。

私がよく聞く「すり替わった発音」について、例を上げます。 (単語は読みやすいように、最初を大文字にしてあります)

F ― Fight を発音するとき
Fの発音をするために上の前歯を下唇の上に当てる。しかしここで、ほとんど息は出さないで、前歯が下唇から離れて「アイ」の母音を言おうとするときに音を出す。  その結果、Fの音はほとんど聞こえない。
たいていの方は、単語だけで練習しているときはちゃんとFが聞こえるように発音できます。  でも文章でしゃべりはじめると上のように慣れ親しんだ母国語の言い方が出てきます。
発音の本で解説されているFの口の形は一応しているわけですから本人は正しいFの口の形はできていると思っていますが、実際には正しいFの口の形の時には息を送っていないので、音は出ていないわけです。

正しい口の形から次の音に移動するときに音が出ているわけです。  ですからFの音は一瞬しか聞こえません。

R ― Ran (Runの過去形) を発音するとき
舌を丸めてRの発音をしようとする。  けれども舌が丸まっている時にはほとんど息を送らない。  丸まった舌が次の「ア」の母音を言うためにだんだん平らになり始めた時に息を送って、音を出す。  その結果、Rのポジションの時にはほとんど息を送らないのでRの音が聞こえない。

本人は発音の本に解説されているように舌を丸めているから自分は正しい発音をしていると思っていますが、正しいRの口の形をしている時にはほとんど音は出ていないで、丸めた舌を開いてくるときに音を出している。  その結果Rの音はほとんど聞こえない。

M ― Mystery を発音するとき
上下の唇を合わせて、Mの発音をしようとする。  しかし、ここではほとんど息を送らないで、「イ」の母音を言うために上下の唇が離れる時に息を送って音を出す。 その結果、Mの音は非常に短くなる。

N ― 舌先が歯茎に着いているときに息を送って音を出すのが、発音の本に解説されているNの正しい発音です。  けれども文章でしゃべるときには、舌先が歯茎に着いている時には息を送らず、舌が歯茎から離れて次の音に移行する時に息を送って音を出し始めますので、Nの音がよく聞こえません。  音声学の本で学んだ「舌先を歯茎に着けて発音する」は実際には行われないで、舌が歯茎から離れるときに発音しています。  一生懸命、発音の仕方を学んでも、しゃべるときに違うことをしていると通じません。

Lも同じです。  舌先が歯茎に着いているときには息を送らないで、舌先が歯茎から離れて、次の音に行く時に音を出し始めます。  その結果、Lの音は非常に短くなり聞こえにくくなります。  音声学の本で学んだ、「舌先を歯茎に着けて発音する」は実際には行われていません。  2013年5月13日のブログ Lの発音http://d.hatena.ne.jp/creato-k/20130513も参考にしてください。


どの子音も音声学の本で学んだ正しい発音の仕方で発音していると、本人は思っていますが、実際は、正しい口の形をしているときはほとんど音を出さずに、正しい口の形から次の音に移行するときに初めて音が聞こえるような発音の仕方になっています。  本人も気づかないほど微妙に日本語の発音の仕方にすり替えて子音を発音しています。  その結果子音がネイティブの言葉のセンサーで認識しづらいほど短くなってしまいます。

以上は、単語だけで発音練習しているときはほとんど現れないで、会話で英語を話し始めると現れて来ます。  会話では話す内容のことで頭がいっぱいになり、発音に注意していられなくなります。  そうすると、長年慣れ親しんだ母国語の発音の仕方が、本人も気づかないほど自然に出てきてしまうわけですね。

日本語の子音の言い方にすり替わらないように練習する場合、この中で、比較的やりやすいのはFの発音だと思います。  最初から全部の子音に気をつけるのは大変ですので、まず、Fの言い方を、「持続する音」で発音できるよう会話の文章の中で練習してください。  単語だけで、いくらFが聞こえるように言えても、日本語の子音の言い方にすり替わるのは、文章でしゃべる時ですので、文章で、長さを持ったFが言えるように練習してください。

私自身は、この中で一番難しかったのはRでした。  舌をまるめてRの口の形をするのは簡単です。  でも、それでRの音を通じるように話せるわけではありません。  次々音を言わなければならない文章の中で、なめらかにRの口の形をし、そこで、途切れずに十分な強さの息を送ってRの音が相手に聞こえるように話すのはとても難しかったです。  それが出来るようになるために私がRがたくさん入っている文章を3ヶ月くらいずっと音読練習していたことはすでに2012年11月1日のブログRの発音http://d.hatena.ne.jp/creato-k/20121101)に書いたとおりです。 だから皆さんがRの発音で苦労されるのはよくわかります。  Rの口の形だけ作って単語だけの発音練習をするのと、文章でなめらかに話しながら、Rの音が明確に相手に聞こえるようにしゃべるのとでは、難しさがまったく違います。 


基本の音一つの口の形が出来たからといって(単語の発音が言えたからといって)、通じるようにしゃべれるわけではありません。  口の形ができるようになった段階ではまだ、発音練習の準備体操の段階にいるようなものです。  本番の発音練習は「文章をしゃべった時に通じるようにしゃべる」ということです。  特に、日本人が通じる発音を身につけようと思ったら、「母国語の子音の言い方にすり替わった発音にならないでしゃべる練習」は不可欠です。 

文章ならばなんでもいいのではなく、普通にしゃべる会話の文章で行なってください。  会話の時、日本語式の子音の言い方にすり変わっていきますので、普通にしゃべる会話文で、子音がすり替わらないように初級の時から意識して練習をしてください。  

初級の時から長さを保って子音を言えるように気をつけて来た人は、上級になって会話の内容に気を取られて、発音に注意できなくなっても、よく聞こえる子音で話すことが出来るようになります。

演説の言い方は全部の音を強くはっきり発音しますので、普通のしゃべり方とは違います。  ほとんどすべての単語が強くはっきり言われますので、子音がすり替わることも、それほどありません。  ですから、子音が日本語式にすり替わらないようにする練習にはなりません。

文章での練習といっても、シャドウイグでは、ナチュラルスピードの場合、単語の最初の子音はほとんど日本語の子音の言い方にすり替わっていますので、通じるための発音練習にはなりません。

ですから7月21日に書きました(「発音の下手な日本人」から「発音の上手な日本人」へhttp://d.hatena.ne.jp/creato-k/20130721)発音の下手な日本人から抜けだして、発音の上手な日本人になりたかったら、

単語だけの練習
演説の練習
シャドウイング

この3つの練習から抜けだしてください。  といったことは子音がすり替わらないようにする練習をするときにも当てはまります。

私が生徒さんを発音指導するときの最終目標は、「話す内容で頭がいっぱいで、発音に注意を払えない時でも、日本語の子音にすり替わらないで言えるように(つまり、無意識に発音しても、正しい発音でしゃべれるように)なっていただくこと」です。

初級の最初から、単語の最初の子音を英語の言い方で言えるように(母国語の言い方にすり替わらないように)会話文で意識して発音練習して行くのがこの目標を達成するための適切な練習方法だと考えています。  ただ、川合メソッドのやり方は自分の発音を録音するなどの手間がかかります。  また、お手本の発音と自分の発音を比べて聞くという集中力のいる練習が含まれていますので、仕事や学業で、日本人の英語を聞いたことのない人にもネイティブ並みの発音で通じる必要性の有る方、初級であっても将来そういう発音で話したいという強い希望をお持ちの方しか練習が続けられないと思います。  旅行で英語を話す、友だちと楽しく話す、という方は、そこまでの練習は必要ないと思いますし、練習を続けられないと思います。  2500円という本の値段は決して安くはありませんので、ご購入前にお知らせしたいと思います。




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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)




高校英語教育を文部科学省の誤解に基づいた方針から守るため、以下のご案内を書かせていただきます。

現在文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」の目玉として掲げているCAN-DO方式は、ヨーロッパの人々にはできますが、日本語を母国語とする人にはできない方式です。

文部科学省は「CAN-DO方式が日本人には不可能な方式である」と気づいておりません。  導入されれば教育現場は大変迷惑します。  中止する必要があります。  なぜCAN-DO方式が不可能なのかはこちらのブログをお読みください。

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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。  私はとても困っています。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 

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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。