今日のブログをお読みになる前に、もしまだ2011年10月17日のブログに書いてあります*幼児英語教育*と*言語と文化*をお読みになっていない方がいらっしゃいましたら、まず、そちらをお読みになってから、今日のブログをお読みください。
子供にとっての言語、母国語の役割がわからないとこれからお話しすることはわかりにくいと思います。
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今日は、「20XX年4月1日、日本のすべての大学で、すべての授業が英語で行われるようになった」と仮定して、お話をしたいと思います。 そうしたら、私たちの子供たちにどういうことが起こってくるかについてお話ししたいと思います。
私は2015年6月1日のブログで中学校の英語の授業を英語で行うことは、親の赴任などでアメリカに連れて行かれた子供たちと同じことを日本の中学生にさせようとすることだ、と書きました。 大学教育を英語で行うというのは、今度は、日本の大学生にアメリカの大学生と同じことをさせようということですね。
それでは大学1年生になるまでに、アメリカの大学生と日本の大学生が英語をどう使って来たか両者で比べてみましょう。
アメリカ人は生まれてから家庭の中で家族と英語で話します。 買い物に行ったとき、友だちと話す時などの社会生活でも英語を話します。 娯楽に見るテレビも英語です。 彼らの文化は英語で作り上げられ、歴史も英語で積み上げられてきています。
生活体験はすべて英語で体の中に蓄積されていきます。
教育についていうと、小学校教育は英語で行われ、中学校教育も英語で行われ、高校教育も英語で行われ、学習体験はすべて英語で体の中に蓄積されていきます。 これを図にするとこうなります。
(図1)
====アメリカの大学生==日本の大学生=====
文化 English 日本語
歴史 English 日本語
家庭生活 English 日本語
社会生活 English 日本語
幼稚園 English 日本語
小学校教育 English 日本語
中学校教育 English 日本語
高校教育 English 日本語
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大学教育 English English
それぞれの段階で使われる言語を図に書くと上のようになります。
2011年10月17日のブログにある *幼児英語教育* と *言語と文化* をお読みいただいた方には、すでにお分かりと思いますが、子供の学習体験、生活体験がすべて言語や五感によって子供の体に蓄積されていきますから、言語のレベルと思考のレベルは密接に関係しています。
小さい頃は少ない語彙で簡単なことしか言えなくても、小学校、中学校、高校とだんだん高度な教育を受けてくると、複雑なことも考えられるようになってきます。
大学教育、つまり二重線の下になって、初めてEnglish(英語)が登場する日本の大学生が、英語で授業を受けたら、アメリカの大学生と同じレベルで、理解したり、考えたりすることは出来ない。ということは、上の図を見れば、どなたもお分かりになると思います。 子供というのは(大人も同じですけれど)、生活で一度も使ったことのない言語で何を教えられても頭に入りませんし、定着もしません。
年齢相応の思考レベルで考えることは、昨日まで、使っていなかった言語ではできません。 ここでもまた英語のインプットの量の違いが忘れられています。
私は2015年6月1日のブログで「中学生に週5回英語で授業をやっても中学生がネイティブ発音になることはない」と申し上げました。 「1日7時間英語で授業を受けて、2年間」というインプットの量にそれでははるかに及ばないからだと理由を申し上げました。 (英語で授業をした場合の内容の理解、という点について申し上げれば、一日7時間英語で授業を受けて、家に帰ってきて、授業内容を子供が理解できる日本語で全部教えて2年たたないと、英語で考えるようにはなりません。 この全文和訳で理解する家庭学習は高校生なら最初の年は一日7時間程度、小学校5、6年なら、一日4時間程度で2年かかります。)
文部科学省は大学の授業を英語で行うことを奨励しているようですが、12年間日本語で授業を受けてきた子供たちに大学になった途端、英語で授業を受けさせても、ネイティブと同じように英語で、理解することも思考することも出来ません。 ネイティブは12年間、英語で学校教育を受けてきたからそれが出来るのです。 (生活で使ってきた年月を入れれば18年です)
私たちが日本語で、何でも自由に表現できるのはこの表にあるように家庭生活、社会生活、学校教育をずっと日本語で受けてきたからです。
私は、昨年9月に大学で教えていらっしゃる方とお話をしましたが、その方が、「大学生に英語で話させると、本当に簡単なことしか言えない」とおっしゃっていました。 それは、
英語が日本のどこにも話されていない言語だということ。
英語を使って、授業を受けたり、学習をした経験がない。
(「英語を」学ぶことと「英語で」学ぶことはまったく違います。)
という事実を見れば当然でしょう。
昨日まで、社会でも学校でも家庭でもまったく使っていなかった言語で、今日から母国語と同じに考えなさいと言っても、できません。 実際に生活や勉強で使って来なかった言語というのはそういうものです。
ですから、私たちの子供達(日本の大学生)にとって、英語は実体を持った言語にはならない、ということです。 2011年10月17日のブログにも書いた通り、言葉の後ろに文化も情報も経験も何も持っていない言語だということです。
またそういうなじみのない言語で、学習しても、体の中に学習内容が深く入って行かないことは2015年4月13日のブログに書いた通りです。
(3月15日に続く)
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「言語と思考」の関係についてはいろいろな説がありますが、私はこちらのブログに書きましたような考え方に基づいて、「大学教育を英語で行うこと」のブログを書きました。 「思考が先で、言語はその思考にまとわされるだけ」という考え方では、「言語で思考の伝達」はできません。 言葉を聞いて、思考を構築できるからこそ、「伝える」「伝えられる」という双方向の伝達が可能になります。
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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。
高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)
高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。 しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています) これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。 学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。
これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)
皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。 (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。
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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。 日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)
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何度もお願いをしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。
「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。 他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。
私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。
「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。 他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。 ベストセラーの著者という名声ですか。 それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。 この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか? もう英語教育とは関係ないことですか。
私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。 日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。 ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。 私の仕事の妨害をしないでください。
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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。