川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

大学教育を英語で行うこと(4)言語、学習内容、理解、の関係

言語と学ぶ「事柄」の関係を表すと次のようになります。

母国語で新しいことを学ぶとき、言語が使い慣れているものですので、学ぶ事柄がよくわからない未知のことでも、よく理解できます。

言語  事柄  理解
○   ×   ○

その事柄が説明される言語があまりできなくても、その事柄に精通している場合は、ある程度の理解はできます。  若い頃、私が、理化学の分野で仕事をしていた時、研究者の方々は英語があまり出来なくても、新製品のデモンストレーションなどは理解していらっしゃいました。

もっと卑近な例を挙げれば、夫がアメリカにいた時、夫はアメリカンフットボールについてはルールも知らなかったので、実況中継を聞いてもよくわからなかったそうです。  けれども、学生時代アメリカンフットボールをしていた人がいて、その人は英語はあまりできない人だったけれど、アメリカンフットボールの実況中継は、理解していたそうです。  

言語  事柄  理解
×   ○   ○

となります。

ところが、使う言語もよくわからない。  習う事柄はまったく知らない。  つまり言語×、事柄×、となると、この場合は、どう頑張っても、理解はOにはならないのです。  つまり、

言語  事柄  理解
×   ×   ×

これが、息子にとっての化学の授業だったわけです。

大学になって初めて学ぶ分野を昨日まで使っていなかった言語(英語)で説明されても理解できない。  ということです。 それを理解させるために私は全文和訳して、日本語で息子に説明して行ったわけです。  つまり息子は英語と日本語両方で、毎日授業を受けていたようなものだったのです。  正確に言えば、私が日本語で説明をして、それを表す英語を覚えていった、ということなのです。  学ぶ過程において、母国語は排除できなかったのです。 (つまり、この場合「英語を英語で理解する」は、言語×、事柄×、理解×、となり、実際には不可能なことだ、ということです) 

そういう勉強の仕方では、勉強が英語と日本語ダブル(2倍)になって大変じゃないかという人がいるかも知れません。  確かに全教科英語で授業が行われた場合、私の息子は最初は7時間から8時間、家庭学習をしました。  大学生も、大変かもしれませんね。  ただそうやって日本語と英語で4年間学習しても英語で思考する深さはアメリカ人(生まれた時から英語で考えてきた人)と同じレベルにはなりません。  これについては3月15日のブログでお話しした通りです。(A子ちゃんと息子の例)  

また、どんなに一生懸命、日本語に訳して、学んでも、まだ英語が自分の体になじんだ言語ではないので、最初の頃に勉強したことは、頭に深くは残りません。(この実例については2015年4月13日のブログをごらんください。)  

「あの頃やったことは何にも覚えていない」と息子は言いました。  その言語に慣れるまでの間、授業が理解できないので、「学習の空白期間」が生まれます。  「学習の空白期間」というのは、アメリカで、カウンセラーをしている人々が使っている用語です。  外国からアメリカに来た子供たちを教えるESLの関係者は、この「学習の空白期間」をいかに短くするか、に努力しています。

日本の大学生にも、長い、短いの個人差はあるでしょうが、この「学習の空白期間」が生まれるでしょう。  つまり、4年間フルに英語で同じ深さで勉強はできないということです。


大学で4年間英語で授業をしても、思考のレベルが、英語でネイティブと同じにならないのなら、「大学教育を英語でする」などということを目標にする必要はないと思います。  学問の質が落ちます。

それより、日本語で、高い学問の質を維持したほうがいいと思います。  その上で、学んだことや考えたこと、研究の結果を「英語で表現する方法」を訓練した方がいいと思います。

つまり、英語と学問を合体させないで、学問は母国語で行い、「伝えるための英語を訓練する」と目標を変えた方がよいと思います。

少なくともこれによって、大学生の学問のレベル、思考のレベルは維持できます。

これを具体的にどう実現するかはこのシリーズの最終日に述べます。

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「言語と思考」の関係についてはいろいろな説がありますが、私はこちらのブログに書きましたような考え方に基づいて、「大学教育を英語で行うこと」のブログを書きました。 「思考が先で、言語はその思考にまとわされるだけ」という考え方では、「言語で思考の伝達」はできません。  言葉を聞いて、思考を構築できるからこそ、「伝える」「伝えられる」という双方向の伝達が可能になります。

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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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英語教育については、下のブログも併せてご参照ください。  日付をクリックすると移動できます。
2017年10月12日
文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き)


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何度もお願いしているのですが、アマゾンのページで私の本のランキングを下げて妨害をしている人がやめてくれないので、(詳細はこちらです)しばらく以下の文章を掲載させていただくことにしました。

「本を出版する人は、他の著者の妨害をしない。  他の著者を妨害する人は自分の本も出版できない。」
出版社におかれましては、このことを出版の際、著者に理解していただいてください。

私のランキングを妨害している人は、たぶん、現実を受け入れられないのでしょう。
アマゾンの順位を1ペ―ジ目から2ページ目に下げられ、数日でまた2ページ目から3ページ目に下げられて、私は、この方の激しい妨害に驚いています。 

「学習者に正しい発音を習得してほしい」というのが自分の目標でしたら、他人を妨害する必要はありませんね。  他人を妨害してまで、何を手に入れたいのでしょうか。  ベストセラーの著者という名声ですか。  それなら、もうアマゾンで、ご自身の本はベストセラーに認定されているのですから、それで十分でしょう。  この上何が欲しくて私を妨害するのでしょうか?  もう英語教育とは関係ないことですか。  

私は、こちらに書いてある3つのことをするのが、目的です。  日本人が子音の日本語化を知っているか、いないかで、通じる英語で話せるか話せないかが、決まります。  ですから、このことを読者の皆さんに理解していただくのは、とても大事なことなのです。  私の仕事の妨害をしないでください。 


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クマさん、ウサギさん、ブタさん、それぞれが持っている旗に書かれたことの理由は、2017年7月30日のブログをご覧になるとわかります。