川合典子 ブログ

英語教育、英語学習、発音習得、帰国子女の言語習得について書いています。

文部科学省 新中学校学習指導要領 英語 「4技能」は全く効果がない。(子供たちが通じる発音でスラスラ話せるようになる学習指導要領の見本付き) 

2022年2月1日 学習指導要領について

私は学習指導要領はあってよいものだと思っています。 ただ、今からここで説明する「4技能」や「英語で授業」のような間違ったことを学習指導要領に書かないでほしいと思います。間違っているとわかったら、速やかに直してほしいと思います。

私が教師だったころ、教師には生徒の教科書の2倍くらいの厚さの教師用の教科書がありました。 それには各レッスンで生徒が何を学ぶことになっているか、レッスンの一つ一つの文で生徒に何を教えなければならないか、が解説してありました。 教師はそれを事前に勉強し、授業で生徒に教えるべきことを全部教えました。  そうすることによって、生徒は一つも漏らすことなく、そのレッスンで学ぶことを学べます。 ベテランの先生に習う生徒も新米の先生に習う生徒も同じように、学ばなければならないことは一つも漏らさず教えてもらえます。 日本中どこの中学校で学んでも、学ぶべきことは全部教えてもらえます。 教師がこれは重要で、これはそれほど重要ではない、と思ったとしても、一応教えるべきことは、どの教師が担当になっても生徒は全部教えてもらえます。

子供たちが学ぶべきことをきちんと全部学べるので、私は学習指導要領があって、教師用の手引書があって、それに基づいて授業をすることは良いことだと思います。  学習指導要領があるから授業で創意工夫が出来ないわけでもありません。 各学年、これだけは学ばなければならない(教師の側からすると「授業でこれだけは教えなければならない」)と決められていることは必要だと思います。

私が言いたいのは、間違ったことを学習指導要領に書かないでほしい、ということです。 「英語で授業」のような不適切な授業の仕方を学習指導要領に書かないでほしい、ということです。  私は学習指導要領そのものに反対しているのではありません。 

* * *




川合メソッド2第2部、英語の音質で話す練習に進まれた方は、気候が寒くなってきましたので、発声器官を傷めないよう、細心の注意を払って練習してください。  喉や鼻腔はとてもデリケートな部分ですので、違和感があったらすぐに練習を中止してください。  風邪気味の時も練習はお休みしてください。

英語の音質で話す練習は、耳の力が重要ですので、風邪で練習できない時は、「この声はどうやって出てきているのか」考えながらよく聞くだけでも、練習になります。

それでは今日の本題に入ります。


2017年3月31日、中学校の次期学習指導要領が公示されました。  英語教育のトップに挙げられているのが、4技能(話すことを二つに分けて「5つの領域」)でした。

私は4技能に分けて、英語の習得を図るのは英語とよく似た言語を母国語とする人たちには有効な方法だと思います。

私は大学時代第二外国語としてフランス語を学びました。  もうほとんど覚えていませんが、動詞を否定するときには ne ~ pas で動詞を挟んで言えばいいということは覚えています。

つまりフランス人は ne ~pas で動詞を挟んで表現した文を英語にするときはnot を使えばいい、という一つの決まりが成り立ちます。  フランス語と英語は主語の次に動詞が来るという語順も似ています。

こういう英語と似ている言語を話す人たちが英語をマスターするときには、「話す」「聞く」「読む」「書く」4技能の各方面から母国語を英語に変換していく練習をすれば、脳のいろいろな部分を使いますから英語表現に慣れる良い練習になると思います。

では、日本人の場合、それが有効か、というと、全く有効ではありません。
これについては2017年1月14日のブログをお読みいただくと理由がお分かりになります。
要点のみ申し上げますと、日本語を英語に変える規則性などないからです。  日本語は英語とは似ても似つかない言語だからです。  

文字も違う。
音も違う。(日本語は子音と母音がくっついて一つの音を作ります)
語順も違う
てにをは(助詞)も使わない。

こういう場合、中学生のような初期の学習者が4技能に分けて練習してもほとんど効果はありません。

こういう場合は、英語の原型をそのまま学習者の頭に入れて行くのが、最も効果的な習得方法です。
英語の原型とは、英語の「典型的な文の形」と「発音」です。  発音には、正しい発音、典型的なリズム、イントネーションが含まれます。

初期の学習者には、この二つをしっかり定着させることが重要です。
この2つは英語の基礎でありながら、私たちには全くなじみのないものだからです。

「文の形」を定着させるには数週間勉強すれば定着するでしょう。

では「発音」はどうか。というと
発音が定着するには2年くらいかかります。  定着するというのはどういうことかというと、「それほど発音を気にしないでしゃべっても正しい発音でしゃべれる状態」にすることです。  発音習得というのは、知識というより筋肉トレーニングという性質が強いですから、定着するまでに時間がかかります。

発音習得のためには、正しい発音、典型的なイントネーション、リズムを文章の形で徹底して子供たちに練習させていく必要があります。  何回も言う必要がありますので、家庭学習(宿題)という形で、継続して練習させることが必要です。

英語学習をスタートしたら「正しい発音以外ではしゃべらない」これを徹底しないと、発音の習得は達成できません。  つまり、発音習得の終わった文しか教室の中では話さないようにします。

最初はあまり使える文がありませんがそれでも文の一部(単語)を入れ替えれば自分なりの表現はできます。  数か月もたてば、使える文は蓄積されていきます。

発音というのはネイティブの先生に授業をしてもらえばネイティブ発音になるというものではありません。  自分で練習しなければ身に付きません。

文部科学省の方針を見ていると、生徒に自分の思ったことや考えたことをまとめて話させるという活動が目立ちますけれど、初期の生徒にこれをやらせていると、正しい発音の定着は出来ません。

なぜかというと、自己流で発音しているほうが楽だからです。  これに慣れてしまうともう正しい発音で、いつも話すなどということは面倒くさくてできなくなります。  「正確な発音ということに関して例外を作らない」というブログを読んでいただくとわかりますが、楽なことでOKが出るなら、正しい発音の習得など、だれもやらなくなります。 (「自分の思ったことや考えたこと」を表現する英文には、「音声見本」はありませんから、発音、イントネーション、リズムはすべて自己流になります。)
それでは発音練習だけやっていたら、他のスキルは習得できないか、というと、そういうことはありません。

中学時代にどうやって発音練習をするかについては2015年4月17日のブログに書きました。  要点のみ書きますと、

1.最初に基本の発音を習得する

2.学習の終わったレッスンの英文を使って練習をする
つまり、語の意味、文の構造、文の意味など、そのレッスンの学習事項がすべて理解できている英文を使う

3.ネイティブの音声をよく聞き、そのレッスンでの新出単語の発音練習をする。  そのあと、文全体を出来る限り同じ発音でスラスラ話せるように練習する
  (この時、数十回は、文を言うことになります。)

4.発音練習が終わったら文全体を書けるように練習する

このようになります。 (この練習方法は私の本「英語発音、日本人でもここまでできます。」に書いてあります練習方法とほぼ同じです。  私が中学時代に実際に行っていた川合メソッドの原型です。 このように練習すると発音はこちらのようになります。 HP「通じない日本人の発音」より引用) 川合メソッドでは耳の力を上げていくことを重視して、発音を習得します。  著書には、発声練習も併せて入れてありますが、中学生、高校生は変声期にあたりますので、発声練習はやらないでください。  この本の36ページにも「変声期の人は発声練習はやらないでください」と明記されています。)

こういう練習をすると、

「話す」については正しい発音で話すことが出来るようになります。

「聞く」については正しい音を耳が認識できますので、聞き取りの能力は向上します。

「読む」については文章を丸ごと何回も言いますので、読めるようになります。

「書く」については文章が暗記できていますし、書く練習もしていますので、書くことが出来るようになります。

中学生が学ぶ英語は「基本の英語」の範囲に限定されています。  習う英文の数もそれほど多くはありません。  こういう基本的なことを身に着ける時期には、4技能などと範囲を広げず、習得しなければならない基本(英語の原型)に絞って、徹底的に練習させて、その定着を図ります。  

そうすると、中学生は、教科書にあるすべての英文を正しい発音でスラスラ言えるようになります。  
聞けるようになります。  
読めるようになります。  
書けるようになります。 

つまり、話すことも、聞くことも、読むことも、書くことも、数十回発音練習する間に全部出来るようになります。  それだけ繰り返して言う練習をするので、英語の基礎(文の形や発音、語彙、文法事項など)すべてが子供たちに定着します。  しかも、発音を中心に練習しますので、「日本人の英語は通じにくい」という最も重要な問題も解決することが出来ます。

生徒のスピーキング能力を評価する場合には、学校の授業が終わって、家庭学習で、音声モデルと同じように発音する練習をしてきた文章を使って、授業で、スピーキングをします。生徒を二人一組にして、英問英答をさせたり、教師が生徒に英語で質問して答えさせたりして評価します。  この時気を付けることは、なるべく生徒が教科書で発音練習した文で答えられるような英問英答にすることです。  中学一年生だったら、生徒が発音練習した文の中の一つの単語を変えれば答えられるような英問英答にします。(例えば 「I like music.」という文が教科書にあったら、music の部分だけほかの単語に変えれば答えられるような英問英答にします。)   せっかく生徒が発音練習してきたのですから、「スラスラしゃべれる」という成功体験をここでさせることが重要です。  

こうして生徒たちは、中学卒業のレベルで完璧な英語コミュニケーション能力を身に着けます。  (私はこうやって中学時代英語を勉強しましたが、もう一人、こうやって練習した中学生の例が2012年8月23日のブログに書いてあります。 高校で帰国子女と間違えられた彼女の中学時代の練習方法が書いてあります。)

英語の基礎を学ぶときは、たくさんのことを生徒にやらせればよいというものではありません。  基本だけを徹底的に身に着けさせるほうが、はるかによく定着します。

これに関連して言えば、各発音のやり方も、中学生がいつでも基本の発音のやり方を思い出せるように、簡潔にひとことで言えるようにして教えておくことが重要です。  そうしないと文章の発音練習の時、すぐに使えませんから。

2017年3月31日に公示された新学習指導要領には

「聞いたり読んだりすることを通して意味を理解できるように指導すべき事項と、話したり書いたりして表現できるように指導すべき事項とがあることに留意すること」と書いてありますが、初期の生徒に4技能に分けて、目標設定して教えるのは非常に効率が悪く無駄が多いです。 基礎の定着も不十分になります。

下の図にあるように発音練習した文で、すべてのことが出来るようすれば、非常に効率が良くなります。 

こちらのブログをご覧いただくとお分かりのように、どんなに優秀な人でも発音が通じないと、何を言っているのかわからないと言われてしまうのです。  それでは、もともと英語ができないことと同じになってしまいます。

文部科学省は発音の問題は小学校の時からネイティブの先生に授業をしてもらいIT機器を使わせれば小学生はネイティブ発音になると思っているかもしれません。  しかし、私が今まで聞いてきた小学生の発音は、単純な文はネイティブに近い発音で言えても、複雑な文、例えば、条件節があったり、関係代名詞があったりする長い文をしゃべると、ネイティブのような発音でしゃべる子はいませんでした。  小学生は、現在の中学一年生で学ぶくらいの文はネイティブに近い発音で言えても、それ以降に習う複雑な文は、ネイティブに近い発音で言うのは無理なようです。  しかし、中学生で、聞いた通り発音するという練習をしている子は、長い文もネイティブのような発音で話していました。  ですから中学2,3年で習う文も中学生に発音練習させることが必要だと思います。  

中学一年生は耳が良いそうです。  中学校に教育実習に行った帰国子女の大学生から、「中学一年生はすっごく耳がいい」と聞きました。  彼らのこの能力を発音習得の分野で上手に活用すれば、日本人の英語が通じないという問題は解決します。

小学校で発音を教えればネイティブ発音になると信じている人が多いですが、そのためには母国語の半分ぐらいの量の英語のインプットがないと子供でもネイティブ発音にはなりません。(これについては「帰国子女に見る世界に通用する英語力の作り方」第2章をご覧ください。)  特に複雑で、長い文は無理のようです。 条件節があったり、関係代名詞があったりする文は、内容の理解が伴うことも必要だからでしょう。

もう一つ私が、小学校の英語教育を考えていないのは、グローバルな世界で活躍する子供たちを育てるには、小学校でするのは英語教育ではないと思っているからです。

こちらのブログに、グローバルな世界で活躍する子供を育てるには小学校では、「大勢の人の前でも物おじしないで、話すことのできる訓練をすることが必要だ」と書きました。

もう一つグローバルな世界で活躍する子供たちを育てる教育で私が皆さんにお話ししようと思っているのは、こちらのブログに書いた教育です。

「答えが一つしかない問題」ではない問題を考えていく能力です。  これは具体的には中学校や高校で始まるのですが、その基礎となる練習は小学校高学年から始める必要があります。  これについては、今は原稿を書くまとまった時間が取れないので、ブログには書けませんが、小学校の高学年からするのは、英語ではなくこちらの訓練だと私は思っています。 (「答えが一つしかない問題」ではない問題を考えていく能力を育てる教育については、2018年1月18日のブロググローバル化に対応した学校教育 中学、高校の場合(2)」に書きました。小学校で必要な訓練についても書いてあります。)

つまり、グローバルな世界で活躍する子供たちが小学校で学ぶのは英語ではなく、「思考の訓練」と「行動(大勢の人の前でも物おじしないで、自分の意見が言える)の訓練」だと私は思っています。

小学生の英語というのは、自動的に大人の英語にはならないのです。  (これについては2011年10月17日のブログをご覧ください。)  成長するに従い年齢相応の英語を習得する努力を本人がしていかなければならないのです。  ですから小学校で帰国した帰国子女は大人になったら、英語はあまり話せない、という人も多いのです。  小学校から英語を始めても、中学校のレベルで、またそこで勉強しなければならないわけです。  それでしたら中学校から始めても同じだと私は思っています。 

それに中学3年間、上に書いたような発音練習を主体にした練習をしていただくと、生徒たちは中学卒業時には、中学時代に習った全部の英文を正しい発音でしゃべれるようになります。  つまり、中学3年間で、15歳レベルの英語で完璧な英語コミュニケーション能力を生徒たちは身につけるということです。  

(上に書きました発音習得の方法は日本人の発音の先生方には、「生徒が自分で発音を聞いて直すなどできるわけがない」と全く理解されませんでしたが、2018年11月、私があるアメリカ人の先生に「自分の耳を使って発音を習得する川合メソッド」について説明したら、その先生は大きくうなづいて、「あなたのメソッドは発音をインターナライズするのですね」と理解してくださいました。  Internalize というのは「内面化する」「採り入れて自己のものとする」という意味です。  そのアメリカ人の先生は、川合メソッドがまさに耳を使って発音を自分の体に取り込み、自分の発音としてしゃべれるようにする方法だと理解してくださったのです。  日本の発音の先生方は生徒に発音は直せないといいましたが、ポイントはそういうことでは無く、「自分で発音を聞き比べて直していくことを繰り返す過程で、発音が生徒の体でインターナライズされていく」ということなのです。  このアメリカ人の先生は、この川合メソッドの神髄を理解してくださいました。  私はとてもうれしいと思いました。  ただ、川合メソッドの神髄を最初に理解してくださったのが、日本人の先生ではなくアメリカ人の先生だった、ということに少し驚きました。 日本人の奥様と結婚して、何十年と英語を教えながら日本人の英語を聞いてきた方だからこそ、お分かりになったのでしょうね。 この方は、私でさえ、子音がよく聞こえなくて何を言っているのかわからない日本人の英語を理解していらしたので、驚くことがありました。日本人の発音の特徴をよくご存じでした。)        

こうすれば中学生は3年間で、15歳のレベルの完璧な英語コミュニケーション能力を身につけます。3年で身につくものを小・中学校で7年もかけることはないと思います。

いずれにしろ、中学校で4技能に分けて学習させるのは、非常に無駄が多いです。  無駄が多いということ以上に、最初の教え方として、不適切です。  初めて習う言語を4つの分野に分けて訓練することなど、範囲が分散して、基礎の定着が不十分になります。  原型となる一つの文で、「話す、聞く、読む、書く」すべてできるようにすることが、初期の学習者にはずっと効果的です。 


文部科学省の方針には、いつも根本的な間違いがあります。  それは、最初から、生徒に英語を「しゃべらせよう」「しゃべらせよう」としか考えていない点です。  しゃべらせるためには何を訓練しなければいけないか、という点が全く抜けているのです。  発音習得の実際を全く知らないのです。

文部科学省の方針の中には「日常生活の中で興味や関心を持ったことを話させる」など、発音の定着を待たないで、自分の言いたいことを話させる活動ばかり出てきます。  

これを実際に中学生にやらせてみてください。  そうすれば、しゃべっている発音がめちゃくちゃだと分かるはずです。

ヨーロッパの人々は子音を単独で発音できますから、発音練習をそれほどしなくても英語は通じる場合が多いです。  しかし、日本人が通じる発音を習得するには、子音を単独で発音する練習をはじめ、リズムやイントネーションなど、最低限練習しなければならない練習があります。  日本語は、子音と母音が常にくっついて発音される言語ですから、それを母国語とする日本人は、子音を単独で発音する練習をしなければ、通じる発音で話せるようにはなりません。 

そう言うことを文部科学省はちっともご存じないようです。  子供に英語をしゃべらせれば、自然にネイティブ発音が身につくという幻想を持っているように見えます。  発音習得というのは日本人にとっては大変なことです。  英語と日本語は全く異質な言語ですから、中学2,3年で習う複雑な文も正しい発音で言えるようにしていくのは地道な練習がいるのです。  毎日毎日の練習がいるのです。

この学習指導要領を作成した文部科学省の方々の中には、正しい手順で発音習得をした経験のある人は一人もいないと思います。  もしいらしたら、正しい発音の定着を待たずに、勝手に生徒にしゃべらせるプランなど、出してくるはずはないと思います。

もし文部科学省に学習指導要領作成についてアドバイスした英語教育の専門家がいらしたなら、その方もまともに発音習得をしたことはない方でしょう。  自分が発音習得をきちんと行っていたら、発音の定着までに2年かかることや、それまでに、勝手に言いたいことを英語でしゃべらせたら、正しい発音が定着しない、ということは、知っているはずだからです。

正しい発音を習得したことのない人に、中学生が通じる英語で話せるようになる学習指導要領は書けません。  それは泳げない人が水泳の練習計画を立てるようなものだからです。

それに私にはもう一つ、文部科学省が、真剣に子供たちの英語力を上げようとして、この学習指導要領を書いたのではない、と分かったことがありました。
この学習指導要領には

生徒が英語に触れる機会を充実するとともに、授業を実際のコミュニケーションの場面とするため、授業は英語で行うことを基本とする。  その際、生徒の理解の程度に応じた英語を用いるようにすること。

という記述がありました。

これは、本当に「英語で授業」をする気で入れた文章ではありませんね。  私が2015年6月1日のブログを書いた後、文部科学省の方々は、どなたも「英語で授業」などとはおっしゃらなくなりました。

ではなぜこの文章を入れたのかといえば、数年前、あれだけ華々しく打ち上げた「英語で授業」が、新しい学習指導要領に記載されていなかったら、多くの人から、

「英語で授業はなぜ入っていないのですか?」と聞かれるでしょう。  その時に、
「英語で授業は、英語学校FORWARDの石渡誠氏英語で考える詐欺指導法に騙されて、決めたものだ。  だから、新しい学習指導要領では削除した。」といえば、「英語で授業」を決めた文部科学省の誰かがその責任を取らなければならなくなりますね。 つまり、文部官僚の誰かが責任を取るのを避けるために、今回も学習指導要領に「授業は英語で行う」と記載したのでしょう。そもそも効果の検証もしないで、なぜ、一英語学校(石渡誠の英語学校)の提唱する指導法を全国の学校で実施すると決定したのですか? (この後2019年、私は英語教育に関する有識者会議の委員になっている大学教授松本茂氏と吉田研作氏が「英語で授業をしない」と高校の先生方を批判する新聞記事を読み、「英語で授業」は石渡氏の主張であると同時に松本茂氏と吉田研作氏が推進したことだと知りました。こちらが松本茂教授が英語で授業をしない高校の先生方を批判する朝日新聞の記事です。   こちらが2019年11月18日の朝日新聞デジタルで吉田研作氏が「半数の高校では英語で授業が行われていない」と批判した記事です)

私は、先週、知り合いからこういう話を聞きました。 ほかの省庁で、経験したことだそうですけど。

「明らかに入れるのは間違っていることを公文書に入れているので、”なぜ削除しないのですか?”と聞いたら、”これを削除すると誰々が、責任を取らなければならなくなるから、削除しません”と官僚が言うのを聞いて、あきれました。」という話でした。

この学習指導要領もこれと全く同じですね。  文科省は中学生の英語コミュニケーション能力を上げることより、自分たちの仲間が責任を取らなくて済むように考えて、書き上げた学習指導要領がこれですね。


高校の先生方が、こういう理由を知ったら、怒るのは当然です。  先生方はあれほど「英語で授業」に反対されていたのですから。  文部科学省の誰かを守るために、生徒の理解を不十分にする「英語で授業」など生徒がやらされていると知ったら、怒るのは当然です。

文部科学省は改めなければいけないことでも、それを「やめる」といえば、自分たちの仲間が責任を取らなければならなくなるから、やめないのですね。  たとえ、日本中の中学生が犠牲になろうと、日本中の高校生が犠牲になろうと、自分たちの仲間を守るのですね。

こういう文部科学省には「真剣に生徒が英語コミュニケーション能力を身に着けられる学習指導要領を書く」という意志も能力もありません。

「どうしたら、自分たちの仲間が責任を取らなくて済むか」それを最優先して、作った学習指導要領がこれですね。


  

この下の部分は後から加筆しました。
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(上にリンクを付けた石渡誠氏の2015年5月7日の「日本の将来を担って」というブログには最初は「安河内哲也先生(文部科学省の英語教育に関する有識者会議の委員)は英語で授業を広めるために尽力されている」という趣旨の文章がありましたが、今日(2021年6月3日)みましたら、削除されていました。 なぜ私がそれを覚えているか、というと私は石渡氏のこのブログを読んだ後、子供たちに間違った指導法をさせることを広めようとする教師がいることに非常に怒りを感じたことを覚えているからです。 怒りであまりよく眠れない日々が続いた後、石渡氏のこのブログを読んだおよそ一週間後私は夜中に洗面所で倒れて頭を打ちました。(しばらく気を失っていました) それについてはこちらのブログにも書いてあります。 ですから、このブログに安河内氏お一人の写真入りで「安河内先生は英語で授業を広めるために尽力している」という趣旨の文章があったことをよく覚えています。でも、今日見たら、その部分は削除されていました。石渡氏は時々私がリンクを付けたブログのURLを変えて、そのブログが出てこないようにしたり、今回のように文章を削除したりします。石渡誠氏は「英語で考える指導法」という松本亨氏の勘違いから生まれた方法を何十年も提唱して英語学校を経営して授業料を取っています。 車を売って授業料を払う生徒もいるそうです。(石渡氏ご自身がブログに書いていました) もう、「英語で考える指導法」は間違っていると石渡氏もわかっているのに(だからブログに書いてあった安河内氏の部分を削除したのでしょう)撤回も謝罪もせず、知らんぷりして教えています。そして私が指摘したことについてはひそかに自分のブログのリンクを切ったり、不都合なブログの部分を削除したりしています。 「英語で考える指導法」は間違っているとこれほど明らかにされたのに、(わずか10行で間違いだと証明しました)いまだに間違いを認めず知らんぷりして教えているのは非常に悪質だと思います。教師なら「間違い」と明らかになった時点で生徒に訂正するのが当然です。「間違いを生徒に押し通す」という点において、石渡誠は最も悪質な教師だと思います。   自分の学校の生徒だけでなく、こういうネット上の動画で見る学習者もいますし、本で読む学習者もいますから間違いだとわかった時点で、公に(つまり誰でもわかる形で)訂正するべきだと思います。)
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私は、読者の皆さんに申し上げたいです。

正しい英語教育をすれば、皆さんのお子さんは、中学卒業時に、中学生で習うすべての英文を正しい発音でしゃべることが出来るようになります。  小・中学校で7年もかけなくても、中学3年間、正しい英語教育をすれば、皆さんのお子さんは、中学卒業のレベルで、完璧な英語コミュニケーション能力を身に着けることが出来ます。  しかも一度、正しい発音を習得すれば一生、学び直す必要はありません。

日本人は、中学3年間、正しい英語教育をすれば、世界のどこでも通じる英語でしゃべることが出来ます。
英語教育の第一歩を「英語の原型の定着」に集中すればそれはできるのです。

それを妨げているのが、文部科学省です。
文部科学省が、「正しい英語教育を行う方針」を作る意志も能力もないから、日本人はいつまでたっても通じない英語で話すことを余儀なくされているのです。

日本人の英語が通じないのは、文部科学省のせいです。

こんな学習指導要領を使っている限り、日本人はまた10年は、通じる英語で話せません 

中学、高校、大学、という英語学習の全体の流れの中で、中学時代は基礎力の確立期にあたります。

4技能に目標を広げないで、「これさえ身につければよい」という範囲を明確に生徒に示し(それが教科書ですね)、その教科書の文で、話す(正しい発音で話す)、聞く、読む、書く、すべての習得をさせるのが、生徒にとっては最も勉強の仕方が分かりやすく効果が高いです。  

「それだけか」と文部科学省の方々は、思うかもしれませんが、それだけをするのだって、大変なんですよ。 私は、正しい発音で、中学2,3年で習う文章が言えるようになるのに、2年かかりました。  こちらのブログに出てきた中学生も正しい発音で文章が言えるようになるのに2年弱かかった、と言っていました。  ですから、日本人にとって、複雑な文まで正しい発音でしゃべれるようにするのは、大変なことなのです。  

そのことに集中して、毎日練習しても、すぐにできるようになることではないのです。  文部科学省の方々はきちんと発音習得をしたことがないから、日本人にとって一番大変な発音習得をいつも視野に入れない学習指導要領を書いているのです。  それで、「生徒に話させろ」「話させろ」と学習指導要領に書くのです。  だから子供たちは自己流の発音で話すしかないのです。  けれども文部科学省の方々は、自己流の発音と正しい発音の区別もできないのですよね。  だから、生徒は英語をしゃべっている、と錯覚するわけです。

この指導要領は2021年から実施だそうですけれど、これで、子供たちの通じる発音で話す英語力向上は絶望的です。




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高校入試で子供たちが親の収入によって差別されない為に以下のお知らせを書かせていただきます。

高校入試のスピーキングテストについて(大学入試のスピーキングテストについても同様です)

高校入試のスピーキングテストは本来文部科学省が学校教育で正しい発音を生徒に教えてから行うべきものです。  しかし、文部科学省が教科書にCDもつけず、正しい発音の仕方も学校で教えないまま、高校入試でスピーキングテストを実施する動きが都立高校などで始まっています。 (大学入試でもスピーキングテストが行われようとしています)  これは、スピーキングスキルの習得を塾や予備校、会話学校に丸投げするものです。  学校で教えていないスキルを入試でテストすることはあり得ません。

これでは経済的に余裕のない、塾や会話学校にいけない家庭の子供は誰にも正しい発音を教えてもらえず、練習するCD(音声モデル)も与えられないまま、高校入試でスピーキングテストをされることになり、明らかに親の収入による進路の差別が始まります。(詳しくは2018年3月8日のブログ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」をお読みください。)

皆さんの身近に教育関係者がいらっしゃいましたら、ぜひ「高校入試のスピーキングテストは子供を親の収入で差別するもの」であることをお伝えください。  (大学入試のスピーキングテストについても同じことです)  
15歳で親の収入のために進路を差別されるのでは子供たちがあまりにもかわいそうです。

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以下の文章は毎回掲載している内容です。

7月30日以降、私は、いつもブログに書いている3つのことの2番目、「英語で考える」を提唱した松本亨氏の主張について」という項目の最初のほうに文章を付け加えました。 

それをお読みになると私がこの4年間、全く名前を出すことのなかった石渡誠氏の名前をなぜ書くようになったのか、その理由がお分かりになります。

英語で考える指導法の提唱者、石渡誠氏は、その方法が有効であるならば、日本語訳を使わず、アラビア語アラビア語で学んで、アラビア語が堪能になるかどうかご自身でやってみて、その結果を公開してください。  「英語を英語で教えるということが、中高でも広まってきて、良いことです」(2017年7月30日のブログ)などとおっしゃるのは、それを自分で証明してからにしてください。
  
自分で、その証明ができないなら、「英語で考える指導法」は、本当は実在しない「英語で考える詐欺指導法」であり、「英語を英語で理解する指導法」は、本当は実在しない「英語を英語で理解する詐欺指導法」ということです。この詐欺指導法を提唱する石渡誠氏は、自分が日本中の高校生、中学生(「英語で授業」は決定されましたが、まだ実施はされていません)にどれほどひどいことをしてきたか、真剣に自覚されたほうがいいと思います。 

教師としての良心があるなら、自分の商売を拡大する前に、今もなお石渡氏の「英語で考える詐欺指導法」の犠牲になっている日本中の高校生、中学生にすることがあるでしょう。

石渡氏の2015年5月7日のブログを読むと、文部科学省にこの「英語で考える詐欺指導法」を持ち込んだのが石渡氏であることが分かります。  私たち国民は、この「英語で考える詐欺指導法」がどうやって文部科学省に持ち込まれたのか、知る権利(国民の知る権利)がありますので、このことを書き添えました。

私は、その数か月後、頭の打撲が治ったころ、インターネットで検索して、石渡氏のブログに書かれていたこの会合についていくつかのブログを読みました。  そこには、「この会合には英語界の重鎮中の重鎮の方々が集まっている」とか「英語教育界の大御所の方ばかり」とか書かれてありました。(「2015年5月5日 ついに変わる! 英語教育改革の全貌」で検索すると現在でもいくつか出てきます。)

石渡氏の5月7日のブログを読んだ私は、「どんなに立派な肩書をお持ちの英語教育の専門家の主張であっても、私の経験に照らし合わせてその主張が間違っていたら、私は一歩も引いてはならない」と決意しました。  そうしないと、日本中の子供たちが、「英語で考える詐欺指導法」の犠牲になってしまう」と思いました。

それで、2015年6月1日のブログを書きました。  どれほど、中学の英語の授業を英語ですることを阻止したかったかといえば、頭を打って、容体が急変した時は、知人にこのブログのアップを頼むほど、私は、それを阻止したいと思いました。(その時のことはこちらのブログに書いてあります)

石渡誠氏は、日本中の子供たちに誤った指導法をさせて、教師として、良心が痛むことはないのでしょうか。  今日も一生懸命、学校で勉強しているたくさんの子供たちのことを考えたことはないのでしょうか。

* * *

私は随分長い間、自分の本のランキングを妨害されていますが、おそらく、やっている人は、私が英語教育の分野からいなくなるまで、妨害を続けるのでしょう。

ただ、私は、英語教育の分野からいなくなるわけではないようです。

こちらのブログに書いた外国人の方が、1999年11月にこのことの後、どういう結末になるのか、私に教えてくれました。  少なくとも、私は妨害されて、英語教育の分野からいなくなる、とは言われませんでした。

18年前、その結末を聞かされていたので、私は、「英語耳」の松澤喜好氏に盗作されようと、妨害されようと、日本人が誰も聞けない音について本を書いていようと、今日まで、頑張って来ることが出来ました。  どんな立派な肩書を持つ英語教育の専門家の言うことも自分の経験から見て、間違っていたら、一歩も引かない、という決意ができたのも、文部科学省の方針に正面から反対したのも、50年間信じられていた松本亨さんの主張を否定したのも、この後、どういう結末が訪れるのか、あの時、その人から聞いていたからでした。  

なぜ、その人が、私にそんな先のことを教えてくれたのか、その時は分かりませんでしたけれど、今は、わかる気がします。

たぶん、その方は、2008年以降、私がどれほど苦しい思いをするかご存じだったのだと思います。 2008年以降、私が「英語耳」の松澤喜好氏と、KADOKAWA/アスキーメディアワークスのためにどれほど泣くことになるか、ご存じだったのだと思います。(詳細はこちらです。)  その時にくじけないように、その苦しさの先にある結末を教えてくれたのだと今は、思っています。

もう私の本のランキングを下げるなどという行為はおやめください。


KADOKAWA/アスキーメディアワークス(塚田正晃社長)は、隠ぺい工作までして、著者が自分のホームページで盗作を豪語するような悪質な出版はやめてください。(詳細はこちらです。) 

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私の2冊目の本「続・英語発音、日本人でもここまでできます。」(緑色の本)を購入された方で、CDトラック6,13,18,19にある生徒さんと私の子音の長さの比較がよくわからない方は下のブログを参考にしてください。

2016年7月3日のブログ  子音を長く言う「川合メソッド2」「L」の練習 4週間後 (長いSの例)
2016年9月1日のブログ  RとFの練習 1か月後 マライア・キャリー (長いLの例)
2015年2月1日のブログ  「続・英語発音、日本人でもここまでできます。」付属CDトラック6 例文 Where's my bag? 川合典子には生徒のWの発音はどう聞こえたか。

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ここから先は、毎回掲載している3つのことです。「なぜ毎回3つのことを掲載するのか」その理由については、こちらのブログをご覧ください。 

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英語教育について

文部科学省の英語教育の方針は、効果がありません。

1)現在、高校生が行っている「英語で授業」は効果がありません。  (理由はこちら
2)「CAN-DOリスト形式」は効果がありません。 (理由はこちら
3)「4技能」は効果がありません。  (理由はこちらこちら
4)現在、小学校の英語教育で子供たちが話しているのは、英語の発音ではありません。 (理由はこちら
5)大学教育を英語で行うと日本の学問は壊滅的な打撃を受けます。 (理由はこちら
以上の理由により、文部科学省の方針は効果がありません。

「発音」、「語順」、「英語で考える」、それぞれを習得する方法は2015年10月19日のブログ「川合式英語学習法」をご覧ください。

これは全部私自身がやってきたことです。  こうすれば、生徒たちは必ず通じる英語で話すようになります。
英語で考える指導法を提唱する人たちのように、「自分は日本語訳を使ったけれど、生徒たちは使うな」というような、誰も実際にはやっていないような指導方法ではありません。  私は全部自分でやっています。


「英語で考える」を提唱した松本亨氏の主張について

松本亨氏の「英語で考えるためには日本語訳を使ってはいけない」という主張は2006年、私の子供たちが全文和訳でバイリンガルになった事実によって否定されました。 

「英語で考える指導法」は詐欺である可能性が高いです。

松本亨さんの書いた「英語で考える本」「英語で考えるには そのヒケツと練習」という本に書いてある練習をしても英語で考えるようにはなりません。(理由は、2月4日のブログ「英語の思考活動」、3月1日のブログ「先生の宿題のプリント「英語で考える」ってどういうこと?」を参照してください)

英語で考える指導法を掲げる英語学校FORWARDの指導者、石渡誠さんは、「この方法を26年教えてきた」と書いていますが、26年間も効果のない方法を教えてきたというのは驚きですね。

なお、「英語で考えるには −そのヒケツと練習−」という赤い本(石渡誠氏がこちらで勧めています)は、私の2017年11月30日のブログ掲載後、絶版になりました。  アマゾンの価格の表示の仕方が「¥XXXより」というのは、現在出版中の本にはない表示の仕方です。   

私は、この件について、松本亨さん(著作を含めて)以外の固有名詞を入れることをずっと避けてきました。  けれども、石渡誠さんの2017年7月30日ブログの冒頭の

日本の英語教育界もようやく変革の時が!英語を英語で教えるということが、中高でも広まってきています。良いことですが、

という部分を読んで、明記することにしました。  日本中の高校生を犠牲にしておいて、まだこういうことを言っていることに怒りを覚えました。  文部科学省でさえ、もう、中学校の英語の授業を英語で行うとは、言わなくなったのに、と思いました。  

石渡誠さんは、26年間も授業料を取って、「効果のない方法」を「効果がある」と偽って教えてきて、謝罪も損害賠償もしないのですか?  そうやって、「何を言っても何の責任も取らなくていい」と思っているから、いまだに「英語を英語で教えるのが良い」などとおっしゃるのでしょう。  

でしたら、ご自身がアラビア語アラビア語で学んで、アラビア語が堪能になるかどうか示してください。  それが出来ないのであれば、「英語を英語で理解する指導法」が間違っていたと認めてください。  そういうけじめをつけないからいつまでも「英語を英語で理解する」などという指導法を主張し続けるのでしょう。

日本中の高校生が迷惑していますので、自分もできない指導法を提唱するのはやめてください。

自分の商売のために子供たちを犠牲にするのは、もうやめてください。

Je suis Charlie. と母国語で言うフランス人が I am Charlie.という言語を学ぶとき、母国語の意味を参考にしていないはずはないでしょう。  日本人は誤った指導法を50年も信じて、大きく後れを取りました。


私は、英語で考える指導法の提唱者が、「Freedomを日本語に訳すとニュアンスが分からなくなるから英語のまま言わせる」とブログに書いているのを読みました。  でもそれでは何も教えていないのと同じです。

生徒から、アメリカ人にとって自由というのはそんなに大事なものなのですか?と質問されたら、アメリカ史がご専門の先生なら、「建国の歴史を勉強してみるとその理由が分かってきますよ」とお答えになるでしょうし、時事英語がご専門の先生なら、ニュースの中から、アメリカが個人の自由を制限する国に対して、非常に厳しい外交政策をとり、しかも大多数の国民がそれを支持しているというニュースを選んで、生徒と一緒に勉強していくでしょう。

Freedomを日本語に訳さずFreedom. Freedom と生徒に言わせる、などというのは何も教えていないのと同じことです。

それは、次のような例を想像してみるとよくわかります。

もし、アメリカで、日本語を学んでいる生徒が「日本の武士道とはなんですか?」と教師に質問した時、「日本人にとって武士道が、どういうものなのか知りたかったら、武士道を英語に訳さず、日本語のままブシドウ、ブシドウといいなさい」 などと指導する教師は一人もいないでしょう。   

仮に先生が「これが、日本語を日本語で理解する指導法だ」「日本語で考える指導法だ」などと言っても、生徒はばかばかしくてする気にもならないでしょう。  保護者からは「まじめに教えろ」と言われるでしょう。 

これが英語で考える指導法の正体です。

教える方は何も教えていない。
学ぶ方は何も学んでいない。
これが英語で考える指導法の正体です。

だから私はこの方法は詐欺だと言ったのです。(こちらのブログ

以前、この「英語のままFreedomと言わせる」と言っていた学校のブログで、車を売って受講料を払って学んでいるという生徒の例が紹介されていました。  それほどの高額の授業料をとって、「だますつもりはなかった」「知らなかった」では済まないです。  
詐欺は犯罪です。

詐欺は、刑法で刑罰が定められている犯罪です。

また、そのブログで、英語で考える指導法をする人々が、生徒の英和辞典を取り上げたり、生徒に英和辞典を窓から捨てさせたりする、ということも読みました。  中には最後まで生徒に英和辞典を返さなかったこともあったそうです。

「帰国子女に見る世界に通用する英語力の作り方」を読んでいただくとわかりますが、英語のわからない生徒にとって、英和辞典は命綱です。  英和辞典があるから、英語の意味が分かるようになります。  これを取り上げるなど、間違った指導法を盲信する指導者の誤りです。  英和辞典を取り上げれば生徒の英語力が上がるなどということは絶対にありません。

この詐欺商法を、中学や高校に持ち込んだのが文部科学省の「中学、高校の英語の授業を英語で行う方針」です。
だから、私は、「学校で詐欺を行わないでください」と申し上げたのです。
税金を詐欺に使わないでください、と申し上げたのです。
高校英語教育はいまだに詐欺ですね。
学校で詐欺教育をするために、車一台売るどころではない、莫大な税金が使われています。

早くやめてください。
高校時代は、高校時代にやらなければならない訓練があるのです。
複雑な英語を読み始めるときにどうしてもやらなければならない訓練があるのです。
この時を逸すると、取り返しがつかないのです。  高校生がかわいそうですから、「学校で詐欺」はやめてください。

発音練習について

学生時代、私はアメリカのセルフヘルプの本を読むのが好きでした。  当時、そういう本は翻訳しか入手できませんでした。  その中にこんな話が書いてありました。

チャーリーさんが自動車の調子が悪くなり、修理工場に持ち込みました。  修理が終わって取りに行ったとき、調子が悪かった原因を尋ねると「OOのネジが一つ壊れて、不具合が生じていたので、新しいネジに変えました」と説明を受けました。

請求書を見てみると、とても高い金額でしたので、チャーリーさんは、「ネジ一つ取り換えただけなのに、これでは金額が高すぎます」と文句を言いました。  そうしたら、修理をした人が、「最初は、何が原因となって不具合が生じているのかわかりませんでした。  それで、私は自動車の内部を全部調べました。  そしてOOのネジが壊れていることを発見したのです。  自動車内部をすべて調べるのに何時間もかかりました。  請求書はその労働の代金を含んでいるのです」と言いました。  チャーリーさんもその説明で納得しました。

この話は、どこを直せばよいかわかっているものを直すのは、簡単ですが、どこが悪いかわからないものを直すのは大変だ、ということを例えた話でした。

私は中学時代に英語のきれいな発音に魅了されて発音練習を始めました。  中学生でしたから一生懸命練習すればお手本のアメリカ人と同じ発音になると信じていました。  一年半くらいはちっともうまくなりませんでしたが、その日の練習が終わると、自分が今日練習した分だけお手本の発音に近づけたと思えて、とても、心が満たされていたのを覚えています。  一年半くらいは目に見えてうまくなってはいませんでしたが、毎日練習が終わって、テープレコーダーの手あかを白いハンカチできれいにふき取ってしまうときは、とても気持ちが充実していたのを今でも覚えています。

だから発音練習は大変だ、とかつらいとか思ったことはありませんでした。(決してうまくはなかったのに、です)

最初の本「英語発音、日本人でもここまでできます。」(赤い本)の原稿を書いていた時、私は編集してくれた人に次のような心配をお話ししたことがありました。

「読者の皆さんに、私は何の苦労もなく、発音を習得した、と思われると困るのですが、、、」
そうしたら、編集をしてくださった方からこういわれました。

「川合先生の本を読んで、川合先生が何の苦労もなく発音を習得した、と思う人はいません。  そんなことを心配するより、むしろ、こんなサイボーグみたいな練習をしなければ発音はうまくならないのか、と思われることをご心配なさった方がよろしいんじゃありません?」

編集をしてくださった方は、スタンフォードでの留学経験もありますので、英語がとても上手な方でした。  こういうユーモアのセンスもお持ちでした。

私は苦笑しながら「はい。。。。」と言って、すぐひき下がりました。

確かに文全体をお手本と比べて違いを探すにはサイボーグみたいな能力がないとだめだ、と思ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。  (先日夫がチャンネルを回していたら、ターミネーター3でシュワルツネガーさんが人の着ている洋服を見て、一瞬で、それが自分に合うかどうかをピピピピ。。。と判断する場面がありました。  サイボーグと言うとそういうイメージが浮かんできますね。)  

けれども、発音を直すときは、最初は、気づいたところから直していけばいいので、本当はそういうことはないのですが、人によってはそんなことはとてもできないと思ってしまう人もいるかもしれません。

しかし、その2年後、私は、「続・英語発音、日本人でもここまでできます。」(緑の本)を出版しました。  そしてその本に、どこを比べて何を直したらよいか書きました。  漠然と、文全体を比べたら違いは分からないかもしれませんが、「この音のこの違い(例えば、長さ)を聞いて下さい」とピンポイントで言われれば、誰でもそれは聞けます。

先ほどの自動車修理工場の例でいえば、どこに原因があるのか車の内部全体を調べるのはとても時間がかかって大変ですが、「ここのネジを変えてください」と言われれば誰でも出来るのと同じことです。  具体的に言われたことはやりやすいです。

「続・英語発音、日本人でもここまでできます」にはどこを聞いて何を直せばよいのか、書いてあります。  そのポイントは日本語のくせから来るものがほとんどです。  それは日本人に共通する発音の問題点ですから、そこを聞いて直していただけば通じやすい発音になっていきます。

「ここのネジを取り替えてください」というのと同じように、努力すればだれでもできることです。  サイボーグのような能力はいりません。

読者の方から、「続・英語発音、日本人でもここまでできます。」は、「英語発音、日本人でもここまでできます。」付属のDVDで発音練習するときの参考書のように使っています」というメールをいただいたことがありますが、この2冊は一緒に活用してください。  

「なぜそういう練習をするのか」その原理もわかりますし、理解が深まると、相乗効果となって皆さんの発音がとても上達します。  発音は、口の練習だけではうまくなりません。  上手な人の発音って何か違いますでしょう?  体になじんでその音がでてきていますでしょう?  耳はもちろん、たくさんの感覚を使って習得すると上手になります。  (これについては、2018年3月8日のブログの冒頭の部分も参考になさってください。)

表面的な練習だけやっていると表に現れないことが、その原理や仕組みを深く掘り下げて理解していると、口の動きに現れてきます。 

お手本の発音を聞いたとき、「どうやって発音しているのか手に取るようにわかる」この状態になるわけです。  この深く掘り下げる役目ををするのが、「続・英語発音、日本人でもここまでできます。」に書いてあることです。  

「上手な人の発音が何か違う」と感じるのは、口の動きの後ろにある、さまざまな感覚の関連性を意識して、練習しているからです。  「自分の体をどうするとあの音が出てくるか、体が知っている」この状態になっているからです。  表に現れたものだけ練習する場合、長く練習しても、あまり変化はありませんが、深く掘り下げて、練習していると、だんだん、音を捕まえる能力も向上しますので、長い間には、口の動きだけ練習してきた人とは随分違う発音が出来上がります。  発音練習の基本姿勢のブログに出てくる生徒さんみたいにですね。  「英語発音」と「続・英語発音」の本は一緒に活用してください。



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私のDVDで発音練習をするときは、耳に注意を集中して音を聞いて下さい。
最初はテキストを見ながら練習していただいて結構ですが、文字に気を取られていると、実際の音よりも自分がこうだと思っている音のまま発音していることが多くあります。

私はDVDの単語の発音の練習のところで、Life や Leg のLの音をほんの一瞬ですが、日本語化しない「長さのあるL」で発音しています。  そういう音をできるだけよく聞いて、同じように言ってください。

Fight や Fin の Fの音も長さをもって発音しています。  Way や Wet の W の音も長さを保持して発音しています。  それを耳でよく聞いて同じように言ってください。

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ブタさんが持っている旗については、こちらの「きのこの山とたけのこの里」というブログの後半を読むと、私がどうやって、子音の長さが聞けるようになったのか、書いてあります。